惜別 | So lucky,my love〜3.6.5EXOに妄想小説ブログ〜

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ルーミン、フンタオ、クリレイ、カイド、チャンベク小説扱ってます♪一緒に妄想楽しみましょう(^o^)♪






惜別というのは人生でいったい何度経験するのか。

始まった関係に終わりの終止符。

別れの残酷さは何度味わってもほろ苦さが口内を包むんだね。

まるで煙草の煙の様。空気に揺れる悪質な白い煙はあてもなく彷徨いながら消えていき、独特な香りを残して人の感覚を刺激する。
あなたの存在は例えるなら煙草の煙。

掴みきれない幻を見ているようだ。

  


※惜別※




「ここでいいか?」 
「うん。いいよ。」

久しぶりに乗る車の助手席は慣れなくて何だかそわそわして仕方がない。

助手席の周りには飲み残しのミネラルウォーター。
ルームミラーに吊るされたお守りに、前には袋詰めされた中国の飴が適当に置かれている。

ウーファンの私物はどれも新鮮に思えてつい意識を奪われる。


夜中の2時。
男二人。


向かった先は誰一人いない海岸。

車を停めエンジンを切り、微かにラジオから音楽だけが流れる車内。

辺りは真っ暗で遠くの方からはチカチカと神々しい光を放つ工場一帯の明かりがぼんやりと海の上に浮かんでいるかのように映っている。




「お前には直接話したかった」


無言のままだった僕たちの間にウーファンの声が落ちる。


「僕も君から直接聞きたかった」


覚悟していたこの時を。

誰よりもあなたを想ってしまっているから。
気づかないうちに引き返せない場所に自らの足で向かってしまっていたから。


「覚悟はしてる。何も恐れてはいないよ。」


聞かせてあなたの心の奥底にあるものを。
全部聞くから。 


張り詰めた空気から伝わるウーファンの緊張に深く息を吸う。


「捨てられないものが、ある。
叶えたいものが、

どうしてもそれを掴みに行きたい。

自分の持っているもの全てを失くしてでも、掴みに行きたいんだ。」


持っているもの全て。

その言葉の指す意味がちくりと胸の傷に針を刺すようにじわじわと傷めてくる。


神様、このまま時を止めて。

そんな事を想ってしまう僕はどれほど滑稽な生き物なんだろう。


「あまりにも、リスクが大きいね。」
「あぁ。前に進むしか道はない。
きっと何も残らないから。」
 

ゆっくりと言葉を紡いでいく姿から、今までにないほどウーファンが感じている恐れが、ひしひしと僕にも伝わってくる。


「こんな風でしか生きれない俺にこうやって、何も言わずに側にいてくれるお前の存在に俺は本当に救われた。」


またそんなずるいことを。
全てを決断した後でそんな素直な言葉をかけるなんて。



「お前の優しさは本当に暖かい。」
「そんな」
「最後までこんな俺ですまない。」


「…」

「お前にはそれを伝えかった。」



すまない。


その言葉に込められた計り知れない思いに喉の奥がきゅぅっと締まる。


「お前には一生謝っても謝り足りない。」


本当に。


「全くだよ。
君の決めた道は険しい。」


「本当に、そう思う。」
「僕たちの人生ってなんだろうね。」

「同じ様に進む事が一番難しい。何でこうも難しいんだ。変わらないと思っていたのに。」

「手を離すのも掴み続けるのも、
同じくらい、難しいんだね。」


変わらない日常を求めても仕方がない。

分かっている。
言葉では理解出来るのに…

何故、心はこんなにも哀しく、
言うことを聞いてくれないの。


「君は僕のことを優しいと言うけど、それは違うよ。」


今回のことはあまりにも大きすぎる。
ウーファンの目に映った優しい僕がどうしても腑に落ちないんだ。


「言葉にしないだけだよ。」


その言葉にウーファンの体が僅かにぴくりと反応した気がした。


「僕が君に愛してると言った日を覚えてる?」
「あぁ。」

浴槽に響いた僕の心の叫びと、
大きく揺れたウーファンの瞳が走馬灯のように蘇る。


「あの時は体だけの関係で言葉がなくて、僕はそれがとても辛かった。
一日の中で誰よりも君の近くにいるはずなのに、あと一歩踏み入ることが出来ないことがもどかしくて辛かったんだ。」

お互い目を合わさず、言葉を続ける。

「君に愛してると言ったあの時、僕は自分のこれからの事なんて全く頭になかった。
欲しくてたまらなくて、僕をとりまくしがらみなんて、どーでもいいとさえ思っていた。

僕は代償を喜んで受け入れる只の異端者だよ。
前から思っていたけど、
きっと君は僕を美化してる。」

「お前を異端者だと言ったら俺はどうなる。全ての元凶は俺だ。
愛してると言わせたのも、その手を掴み引きずり込んだのも俺だ。

お前の心を盗んで色んなものを奪っておいて結局お前のもとさろうとしている。こんなにも醜い、俺は…。」

「勘違いしないで。
僕は自らの足で今ここにいる。
君に取り込まれたとか、引きずり込まれたなんて思ってない。僕が君を愛してしまったそれだけだよ。
君の人生も僕の人生も一緒じゃない。
手を離すのは君の意思でしょ。

だったら僕に囚われないで。」


それが君の人生だから。
君の人生ごと僕は愛しているから。


また長い沈黙が2人の間を流れる。

こうやって時間の流れを肌身で感じるのもウーファンとは最後かもしれないんだね。



「イーシン。顔を見せてくれ。」

その声に顔を上げるとすぐ側に真っ直ぐに僕を見つめるウーファンの顔があった。

僕を見つめるその瞳は慈愛に満ちていて、じんわりと瞳が涙で濡れそうになる。

これが僕達を繋ぐ思いである事をこれからも願わずにはいられない。

これから別々の人生を歩み、長い道のりの中でもっと辛いことが僕達を待ち受けているだろう。
でもその度にきっと僕はこの瞳を思い出す。


「イーシン、」


ウーファンが優しく僕の頬を包み、
顔を撫でる。
僕もそれに応えるように目を細め、
変わらずウーファンの暖かい瞳を見つめる。


「お前に出逢えたことが俺の唯一の奇跡だ。」


僕も、君に愛されたことが唯一の奇跡だよ。

これ以上ないほどの想いをウーファンと通わせる日が来るなんて思ってもいなかった。

なんて素晴らしいことだろう。



「イーシン、後もう一つ。
これは俺の想いだ。独り言だと思って聞いてくれ。」


吸いこまれそうなほどのウーファンの強い眼差しに、ごくりと息を飲む。


「わかったよ。」
 


「これからも、俺はお前を愛し続けるだろう。
例え何ヶ月も、何年も会えない日が続いても

俺はお前と一緒に居た日々を忘れない。

お前の幸せを世界の何処かで祈っている。

必ず。」



気付けば頬に一筋涙がつたっていた。


ウーファン、僕はね
その言葉を待っていたんだ


あぁ

何て優しい言葉
何て愛しいんだろう

溢れる想いを止めることが出来ない



「…っ、うーふぁん、
僕はきっと、その言葉を…っいっしょうっ、いっしょう、…忘れない…っ」


気付けばウーファンの瞳からも頬をつたう涙が。

その濡れた頬に自分の手を添えて、指でその涙を拭う。


「わすれないからっ…」 



「ありがとう。イーシン。
お前のその言葉だけで俺は生きていけそうだ。」



どちらからともなく交わるキスはお互いの涙が混ざり、溢れる想いが絡み合う。



君なら

僕なら


大丈夫



惜別の情を噛み締めて踏み出そう
君と僕の道がいつか交じりあうことを信じて




fin.

クリスの一件から今更ですが。
一応My ladyと繋がってます。