夏休み、実家で花火をすることになった。
ほろ酔いで良い気分になりながら、父きみじは、庭で噴水のようにスパークする置き花火に着火。
バチバチバチ!!!
ジュワ~~!!!!!!
予想外にも、炎の噴水は宙を舞い上がり、二階のベランダに届く勢いであった。
もし布団でも干していようものなら、焦がしてしまいかねない。
「ちょっとすごすぎるね、置き花火は。」
「まあな~。」
ガタガタン!!!
隣人が雨戸を閉める音が聞こえてきた。
「あれ、山之内さんかな。」
「たぶん、プレッシャーかけてきているな~。」
「え・・・、本当それ?じゃあ、花火するのやめる?近所迷惑だったのかも!」
「いや、やめてたまるか!プレッシャーかけるなら、もっとやってやるぅ!!」
「ちょっと・・・!何熱くなってるの。」
父きみじの心の花火に、なにかが着火したようだ。
じいじは昔から、人に絡まれれば絡まれるほど、燃えやすい、着火体質である。
その後、手持ち花火などを楽しんでいたら、別の隣人がタバコを吸いに、玄関先に出てきた。
「きれいですね~。」
全ての隣人が、我々の花火を監視しているかのように感じてしまう。
実家の隣近所で、一体誰が本当のプレッシャーをかけているんだ・・・!
くそっ分からない。
なんだか、推理小説の一員のようになってきた。
◇
いよいよ残りはもう1つあった置き花火とパラシュート花火だけになった。
「さすがにこの2つは、もうやめといたら・・・?」
「いやだ、わし、やる!!」
とりあえず、まだましかな、と思える置き花火に着火。
バチバチバチ!!!
ジュワ~!!!!!!!
もうどうなっても知らんぞ。
私は内心ひやひやしながら、近所を見回した。
「よ~し、最後のフィナーレは、このパラシュート花火な!」
「これは、さすがに、まずくない?最後パァン!!!って火薬が爆発するんだよ!!」
「知っているよ、そんなこと。だからやるんだ。むしろわし、これを一番楽しみにしてたんだ!!」
どんだけ子どもっぽい、お騒がせバカ親父なんだ!!
父きみじがパラシュート花火に着火する・・・
シュッ!!
ヒュ~~~~~!!!!!
パァン!!!!
パラシュートは銃声のような音と共に、弧を描くように舞い上がり、実家の屋根の向こうへ飛んでいった。
まずい!!!
突然の銃声に、山之内さんがキッチンの窓から、こちらを覗いている。
「わはは!いろんな人がわしの花火を見に来たぞ!楽しかったな~。」
父きみじの愚行は、周りの者の心に火花を静かにちらつかせるのであった。
爆発しないことを祈るばかりである。
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