私の母は、最近流行の書籍や雑誌を購入するのは良いものの、ほとんど読まないで、その存在を忘れる。
本棚には、「コレクション」としてならまだしも、もはや「風景」として本類が、漫然と立ち並んでいる。
「ねえ、この本、読んで良い?」
「あれ~~?そんな本、買ってたっけ?いいよ、別に。読まないから。」
(読まないなら、何故買ったのだ、母よ。)
実家に帰った際、母親が「折り紙でつくる飾り花」という本を所持しているのを知った。
「この本、楽しそう。折り紙するんだ~、意外。」
「いや、たぶん、しないけど、作れたら良いな~と思って。でも、苦手なんだよね~、こういうの。」
(苦手なら、何故買ったのだ、母よ。)
母親の発言で、もはや固形物でしかなくなったその本がもったいなく思え、約1000円ぶんの情報量を、存分に血肉にしようと、私は考えた。
「じゃあ、借りて良い?私、作るから。」
「作ること」が好きな私は、折り紙を折るうちに、折っている時の瞑想感にやみつきになった。
手がオートマッチックに動くようになり、目が覚めた時には、箱いっぱいになるほどの花々が出来上がっていた。
オレンジ系のガーベラ。 ピンク系のガーベラ。
たんぽぽ。 チューリップ。
ピンクのバラ。 ダリア。
菖蒲の花。 紫陽花。
母の日にプレゼントした、カーネーション。
4月のカレンダーの周りに飾った、桜の花びら。
タタタターーーーーン♪♪ (RPG風)
こうして、私は「町の主婦 自称、趣味は買い物」より授かった、アイテム「折り紙で作る飾り花」と引き替えに、技能「折り紙で花を作る」を手に入れた。
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