先日、仕事をしている時、外から聞こえてきた。
男の子が泣き叫ぶ声と、
大人の男の人が怒鳴る声。
それと、
人を何度も何度も叩く音。
わたしだって、そうやって娘を叱る時がある。
何度もは叩かないし、本気で力いっぱい叩いたことはないけど。
でもわたしも親だから、感情的になって怒ることは解る。
何度も何度も叩かれる音がする。
男の子は泣き叫びながら、なにか言ってる。
だけど、大人の男の人は、ずっと怒鳴ってる。
わたしは、息が苦しくなって、涙がこぼれそうになった。
仕事中に泣いたらいけない。
でも苦しくて苦しくて、思い切って外に出てみた。
わたしの姿を見たらやめるかなと思って。
タイミングが重なったのか、親子の姿はなく、外はしーんと静まりかえっていた。
家の中でもまた、続きをされているのか。
それともただ、叱っていただけなのか。
高校生の時、地元の町営プールで監視員のアルバイトをしていた。
毎日来る小学生低学年の女の子がいた。
生意気で、言うこと全く聞かない子だから、アルバイトの高校生はみんなその子を嫌っていた。
わたしは子供が好きだったから、無視されても何度も話しかけた。
ある日、「お弁当食べようっと♪」と言って、お弁当箱を目の前で開けて食べ始めた。
白飯の上に、コロッケ1枚のっているだけだった。
ビックリして色々聞いたけど、うまいうまいって手づかみで完食した。
その日の夜、家の近くの狭い道ですれ違った車に、その子が乗っていた。
すぐ近くの家の前で止まった。
女の子は、プールで見せるような活発な印象は全くなく、おとなしかった。
なんだよ!親の前ではおとなしいのかよ!と思った。
数か月後の冬、とても寒い夜、販売のバイトが終わり、歩いて帰っていたら、
あっお母さんきたわよ!と二人のおばちゃんが、わたしを見ながら、小さな男の子に言った。
外灯もまばらの道で真っ暗だったから、顔なんて見えないはずなのに、おばちゃん二人はその子の背中を押して、家に入っていった。
後ろを振り返っても、人はわたししかいなくて、えっ?えっ?と戸惑いながらその子に話し掛けた。
どうやら迷子らしい。
さっきのおばちゃん酷い!こんな小さな子を寒い中よく放置できるもんだ!!と怒りつつ、家を一緒に探すことにした。
今思えば、あのくらいの子が家や道を知るわけないのに、わたしは夜道をその子が言うまま彷徨った。
結構な時間が経って、わたしはお母さんに事情を説明し、だから遅くなるとメールした。
すると、一緒に探すから車でそこまで行くと言われた。
真っ暗な夜道をグルグル回っていたら、外で立ち話している女性がいた。
お母さんが車を降りて聞きこみに行く。
わたしが男の子と出会った場所からは、結構離れていたから、きっとその子のことなんて知らないだろうと思ったけど、
なんと、その女性が母親だった。
男の子は、勝手に車から抜け出したのだろう。
母親は、少し頭を下げるだけで、驚きもせず、男の子に話しかけるでもなく、また立ち話を始めた。
車の中には、よくプールに来ていた女の子も乗っていた。
わたしはそれから、よく迷子の子を保護する。
大号泣している子供の周りを、大人は大抵素通りして行く。
何度か一緒にママを探したけど、母親からお礼を言われることは少ない。
どこに行ってたのー?と子供に冷静に聞く母親。
その眼中にわたしは入っていない。
泣いている子供を抱っこしてスーっとその場を去る母親。
そこにもわたしの存在はない。
道の真ん中で、車に飛び出していく所を捕まえたんだけどな。
ニヤニヤしている男性が近づいて行っている所を保護したんだけどな。
ありがとうと言われたのは、1度しかない。
今度迷子を見ても、放っておこうと思った。
まあ、出来なかったけどね。
一人暮らしをしている時、隣の家からヒステリックに怒る女性の声がした。
部屋の窓を開けると、隣の家の窓に影がうつっていて、なにか長いものを上から下に叩きつけていた。
その当時付き合っていた彼氏と、なんだろうあれ?ほうき?はたき?と、身を乗り出して見ていた。
たまに、子供の泣き声がした。
何歳の子供が住んでいたのか知らないけど、そんな小さい子供じゃないことだけわかっていた。
お母さんやめてーって、かすかに聞こえる。
なにを叩いているのかわからない。
痛いよーってかすかに聞こえて、虐待じゃない?って彼氏と目を合わせた。
もううろ覚えだけど、どこに通報したら助けてくれるのか、携帯で必死になって調べた記憶がある。
児童相談所って名前が思い浮かばなくて、なんだっけなんだっけばかり言っていた。
そうこうしているうちに、タンスが倒れるのが、影と音でわかった。
そのあとは、静かになった。
結局どこに通報するべきかわからなくて、警察に電話をして、児童相談所の番号を聞いた。
その番号に電話したら、なんだか遠くの地域のなにかの相談所みたいなところに繋がって、そこでまた最寄りのなにかの電話番号を教えられた。
その時にはもうすっかり隣は静まり返っていたし、自分も落ち着いてしまって、電話はしなかった。
次同じような事があったら電話しようと、電話帳に登録したけど、出番はなかった。
妊娠中、当時住んでいたアパート(上記とは別)の向かいのマンションから怒鳴り声がした。
向かいと言っても離れていたから、そーっと窓を開けて見てみると、小さな子供を玄関の前で怒鳴っているのが見えた。
ずっと怒鳴ってる。
なんだか聞き覚えのある口調。
その口調も、声も、わたしのおかあさんと似ているんだとわかった瞬間、過呼吸になった。
昼間、毎日のように玄関の前で怒鳴っている。
妊娠中、この子が生まれてきたら、自分もおかあさんのように自分がなるんじゃないかと、ずっと不安だった。
不安しかなくて、喜びなど無い妊娠期間だったから、その怒鳴り声がとどめのように感じた。
聞こえてくるたび過呼吸になった。
わたしもああなるのかな?
あんなふうになるのはいやだよ!泣いてばっかりで、過呼吸になってごめんね!
って、お腹の中の娘に、毎日何度も謝った。
虐待のニュースを見ると、心が痛んで、泣けてくる。
なぜ、近所の人は助けなかったのか?
なぜ、無理やりにでも引き離さなかったのか?
そう思うけど、現実は無力な自分。
わたしもなにもしていない。
ある時、友達と待ち合わせしていたら、
「今外で、小学生くらいの男の子のことを、父親が怒鳴りながら殴って蹴って虐待してた。けど、あそこでとめたら、あの子は家に帰ってもっと酷い虐待を受ける。お前のせいで恥かいたとか言われて。だからなにも言わず来た。」
と、友達が言った。
そう言われてみれば確かにそうだ。
その友達は、子供の不登校や女性が受けるDVに関して勉強したり、そういう団体に寄付したり、お手伝いしていると言ってた人だった。
わたしには、色んな事がわからなかった。