海外の映画が日本で公開されるときに変なタイトルに変えられていることがあります。
日本の映画の配給会社が、興行的にウケそうな邦題を付けているそうですが、どうにかならないんでしょうか。
以前から同じ主張がネットで多くなされているようですが、改まる気配がありません。
観客は映画を選ぶことはできても配給会社を選ぶことはできないので、こうした配給会社へのダメだしは表面化しにくいのかもしれません。
かつて坂本九の「上を向いて歩こう」という曲が海外でヒットしましたが、そのときの海外での曲名は「スキヤキ」でした。
「なにそれ?」と誰もが思うでしょう。
ウィキペディアによれば、「サヨナラ」と「スキヤキ」しか日本語を知らない英国人がつけた名前とのこと。
ビートルズの「イエロー・サブマリン」の和名を「ローストビーフ」にしてやろうかという気持ちになります。
映画の邦題の問題は、程度の差こそあれ、似たようなものだと思います。
言語の違いから直訳だとニュアンスがどうしても伝わらないといった事情があるならまだ分かります。
しかし、多くの場合、原題あるいはその和訳で十分に意味が通るのに、あえてタイトルを変え、しかも、それが意味不明だったりするのです。
具体例を見てみましょう。
(英題→邦題の順)
○ 『フォービドゥン・キングダム』(The Forbidden Kingdom)
→『ドラゴン・キングダム』
ジャッキー・チェンとジェット・リーが共演するカンフー映画。
内容にドラゴンは一切関係ありませんし、ドラゴン・キングダムという単語も出てきません。
カンフーと言えば『燃えよドラゴン』(1973年製作)だ!…というノリでタイトルを変えたのでしょうか。
そうだとすれば、ネタとして古い上にブルース・リーの映画です。
ジャッキー・チェンとジェット・リーのそれぞれにつき、タイトルに「ドラゴン」が含まれた映画があるにはありますが、代表作とまでは言えませんし、知らない人も多いでしょう。
邦題を付けるときの発想の程度が知れる好例と思いますが、私の考えが及ばないだけで深遠な意味があるのかもしれません。
この映画が好きで5回くらい観ていますが、いまだに全く分かりませんけれども。
○ 『グラビティ』(Gravity)
→『ゼロ・グラビティ』
宇宙ステーションで事故が起きて宇宙を漂流する映画。
邦題をあえて微妙に変えていますが、その理由が分かりません。
興行的に「ゼロ」を付けた方がウケると考えた理由を30文字以内で述べよ。
宇宙っていえば無重力っしょ?分かりやすくていんじゃね?(27字)くらいのノリだったんでしょうか。
ネットで事前にいくらでも映画の情報を得ることができる昨今、映画館にフラッと行ってタイトルだけで観る映画を決める人なんて、ほぼいないと思います。
観客の映画の選び方を誤解しているのでは。
この映画のラストシーンを考慮すると、あえて「重力」というタイトルにした原題にはそれなりに意味があったと思うのですが。
○ 『ナポレオン・ダイナマイト』(Napoleon Dynamite)
→『バス男』
ダメな邦題として、もはや定番ネタ。
内気な少年の友情を描いた内容で、バスは主題と全く関係ありません。当時の『電車男』ブームにあやかろうとしたのでしょうが、内容において『電車男』との類似性はゼロ。
邦題につられてこの映画を見た人がいれば激怒するでしょう。タイトルに詐欺的な意図すら感じられ、その意味でも問題があります。
この邦題の根本的な問題は、それなりに内容が評価された映画にもかからわず、中身を正面からPRすることなく、的外れな便乗商法に走っていることです。
興行的にも大失敗でしょう。
さすがにこれはマズいと思ったのか、後に邦題が原題に戻されたようです。
最後に。
映画にアレンジした邦題をつけるべきでない理由(個人的見解)
① タイトルも作品の重要な一部であり、できるだけ原作のまま楽しみたい。
② アレンジした邦題には名付けた人の主観が入るが、それが万人の納得するものとは限らない。
③ 変な邦題を付けていると、日本の文化レベルを疑われる(前記の「スキヤキ」から抱く英国のイメージを想起いただきたい。)。
④ 海外の人と映画の話をするときに邦題では話が通じない。
⑤ 一般的に、邦題のセンスが悪い。
配給会社の方々、そろそろ真面目に考えていただけませんか?
どうしても続けるなら、せめて邦題の名付け人(責任の所在)を毎回明らかにしてください。