【埼玉ホームゲーム三昧(番外編)・夕方の部 ~桃色行脚'17~】 | 監督のささやき戦術

 2回にわたってレポートさせて頂いた、先日の日曜日の県営大宮球場でのダブルヘッダー、デイゲームの武蔵ヒートベアーズVSジャイアンツ三軍戦そしてナイトゲームの埼玉アストライアVS兵庫ディオーネ戦

 1日2試合、しかもどちらもプレイボールからゲームセットまでを見届け、十分過ぎるほどに野球を堪能したのだが、それに飽き足らず、実はもう1試合、同日に観戦した試合があった

 結果、桃色行脚史上初のトリプルヘッダーが実現した、網走よりもはるかに番外感満点の、日曜の番外編の話をさせて頂く。

 

 

 前回の記事でお伝えした通り、この日の大宮公園は、埼玉を本拠地とする独立リーグ、女子プロ野球、Jリーグの3チームが同日にホームゲームを開催する「大宮公園トリプルマッチデー」であった。

 県営大宮球場では、13時プレイボールで武蔵ヒートベアーズが、18時プレイボールで埼玉アストライアが、それぞれ主催ゲームを開催。そのデイゲームのベアーズ戦が終盤に差し掛かった16時に、お隣に建つサッカー場、NACK5スタジアムでJリーグ大宮アルディージャのホームゲームがスタート

 隣も隣、江戸時代の長屋のような隣接っぷりで建っている県営大宮球場とNACK5スタジアム。球場のスタンドから、かなり頑張れば隣のサッカーをタダ見できる、という話も最初の記事でちょろっと触れたが…

 ちょいと覗いて見ているうちに、むくむくと湧き上がってきた楽し気なスタジアムへの好奇心…

 その行き当たりばったりの情動に突き動かされた結果、気付いたら…

 「来ちゃった…」と、思わず往年の日活ロマンポルノの名セリフを誰に聞かせるでもなく呟いていた…。

 そう、来ちゃったのである。隣のNACK5スタジアムに…

 

 県営大宮球場のデイゲームが終わったのが16時19分。ナイトゲームのプレイボールである18時にはまだ割と時間がある。そして只今目と鼻の先でプロスポーツが賑やかに行われている…、と来れば行くしかないでしょう! いや、大半の人は行かないと思うが、とにかく深夜の自販機に吸い寄せられる蛾のごとく、歓声に誘われるままにふらふら来てしまったのである。

 

 

 今でこそ公私の区別なんぞ全くない野球三昧の暮らしを送っているが、実はこの商売を始める前は、地元クラブのベガルタ仙台を応援しようと、Jリーグ観戦にもちょこちょこ足を運んでいた自分。なのでまるっきり知らぬという訳ではないのだが、最近はとんとご無沙汰で、あやふやな記憶を遡ってみると、多分5年以上ぶりのJリーグ観戦。最近触れているサッカーといえば漫画『GIANT KILLING』を読んでいるくらいで、ほぼ何の事前情報も持たずにNACK5スタジアムに突入するという暴挙に出たのだった。

 

 

 この日、NACK5スタジアムで開催されていたのは、J1リーグ第14節、大宮アルディージャVSサガン鳥栖戦

 まだ県営大宮球場にいた時に撮った、この試合のスタメン。

 

 

 ホームの大宮アルディージャは、前年のリーグ5位から一転、リーグ戦開幕6連敗というスタートダッシュの失敗などもあって、前節まで2勝1分10敗の最下位で、監督が交代したばかり。

 アウェイのサガン鳥栖は、前節まで5勝3分5敗の10位と中位グループにつけているが、アウェイの戦績が3分4敗とリーグ戦では本拠地以外で勝っていないという状況で、敵地大宮に乗り込んできた。

 …というのが、慌てて調べて把握したこの試合前の両チームの状況であった。

 

 

 初めて足を踏み入れたNACK5スタジアムで、選んだ席種は「ホームバックSA自由」というエリア。

 サッカー場に関して全く馴染みのない方のために、甚だ簡単かつ雑に、フィールドの構造がまるで違うのを承知であえて野球場に置き換えて席種の説明をさせて頂くと、野球場におけるバックネット裏のスタンドが、サッカー場では「メインスタンド」となっており、野球場同様他のエリアに比べて値段が高く、大体指定席である。

 「メインスタンド」をバックネット裏とするならば、二つあるゴールは球場で言えば一塁と三塁の位置に置かれており、そのゴールの真後ろの席、野球場で言えば内野席が、サッカー場では「ゴール裏」と呼ばれる、最も熱心に応援する観客のためのエリア。多くのスタジアムが、「メインスタンド」から見て左手側、野球場で言えば三塁側をホーム側としている。

 そしてメインスタンドと相対する格好となる、野球場で言えば外野席に当たるのが「バックスタンド」と呼ばれるエリア。熱心に応援するよりはじっくり観戦したい、という観客向けの席種であり、眺めは「メインスタンド」と左右逆になる以外は大差はないが、比較的チケットが廉価に設定されている事が多い。

 ざっくり括るとこんな感じに分かれているサッカー場の席種。頭でお伝えした通り、「甚だ簡単かつ雑」な説明であり、スタジアムによっての違いも多々あるので、ご興味おありの方はご自身でググって頂きたい。

 で、今回座った「ホームバックSA自由」という席種だが、超雑に野球場的に言えば、「応援団のいない外野自由席」みたいなエリアである。神宮球場の外野自由席の内野寄り、背もたれがあるエリアというのが一番近いかもしれない。

 

 

 県営大宮球場のベアーズVSジャイアンツ三軍の試合を最後まで見届けてからやって来たので、席に着いたのは前半も30分になろうかという頃合いであった。その時点で「ホームバックSA自由」はほぼ満席で、どうにか見つけた隙間に尻を捻じ込む。

 苦戦が続いているにもかかわらず、いや、続いているからこそなのだろうか、ホームアルディージャ側のゴール裏は、ご覧の通りの超満員状態

 

 アウェイのサガン鳥栖のホームは佐賀県鳥栖市。かなりの遠方ゆえ、どの程度のサポーターが来ているのだろうかと逆サイドのゴール裏に目をやると…

 こちらも水色とピンクのサポーターで完全に埋まっているではないか…。

 アウェイゆえ、もちろん数では明らかに劣勢ではあるが、ホームから遠く離れた埼玉の地でアウェイゴール裏を埋め尽くすサポーターの姿は、なかなか圧巻の眺めであった。

 

 

 たった今さらっと触れたが、サガン鳥栖のチームカラーは水色とピンク。この試合では選手は水色基調の1stユニを着用していたが、サポーターの中に数名着用している方が見えるだろうか? 実は鳥栖の2ndユニは真っピンク。言ってしまえば「桃色装束」なのである。

 鳥栖とは全く関係ないとは言え、自前の「桃色装束」を着用してひとりでスタンドをうろついていたら、「鳥栖サポが単騎喧嘩を売りに来た」と勘違いされかねないと、入場前に上着を羽織り(それも自前の「桃魂パーカー」なのだが)、入場するや否や真っ先にグッズショップに駆けこんで、恐らく今後一生使う事はないであろうアルディージャのオレンジのマフラータオルを購入して装備。あくまで「個人的にちょっと桃色が好きなだけの中年アルディージャサポーター」を装う事で、無事に大宮サポの中に紛れ込む事に成功。

 前掲の桃色装束でフィールドの眺める写真は、両チームのサポーターが一時的に入り乱れるハーフタイム中に大慌てで撮ったものである。

 

 

 慣れぬ場への潜入記ゆえ、いつも以上に説明ばかりになってしまっているが、とにかくそんなこんなでスタンドから観戦したJリーグの試合。席からの眺めはこんな感じであった。

 座ったのはバックスタンドのアウェイゴール裏寄りの中段あたりだったのだが、それでこの近さである。

 

 これをまたちょっと説明させて頂くと、NACK5スタジアムは「サッカー専用スタジアム」なのである。逆に専用じゃないスタジアムとはどんなものかといえば、最も一般的なのは「陸上競技場との兼用」というパターン。陸上競技場兼用のスタジアムは、様々な用途で利用できるという運営者側のメリットがある反面、サッカー観戦の上ではフィールドとスタンドの間にトラックが横たわる格好となるため、どうしても距離が遠くなってしまうというデメリットが生じる。

 で、専用スタジアムだが、専用というだけあってフィールド部分にはサッカー場以外に何もなく、フィールドに完全に隣接する形でスタンドが建てられており、びっくりするくらい選手が近いのである。野球場で例えるならば、ファウルグラウンドも全部観客席、と言えば伝わるだろうか。

 もちろん野球場だったら投手泣かせで観客も死人続出だろうが、ピッチ外の広さが競技には関係ないサッカーにおいて、専用スタジアムは純粋に観戦環境と臨場感が段違いに向上するのである。実は自分も今まで「味の素スタジアム」や「日産スタジアム」「等々力陸上競技場」など、兼用のスタジアムにしか足を運んだことがなく、専用スタジアム初体験だったのだが、聞きしに勝るその近さにはえらく興奮したのだった。

 

 

 試合展開などは特に追わず、黙って席から眺めたプレイの写真を何枚か貼っておく。

 

 スタジアムに到着した時点で、0-1で鳥栖が1点リードしていたが、その後は一進一退でともにゴールを割る事が出来ず、時間だけが進んでゆく。

 せっかく来たのに一度もゴールシーンが見られぬのは残念だが、ぼちぼち県営大宮球場に戻ろうかと考え始めた17時半近く、72分に大宮の江坂選手の同点ゴールが生まれる。

 遠いサイドでの事だったので、正直何が起こったのかはよく見えなかったのだが、ゴール裏のオレンジのサポーターが歓喜を爆発させているのを見て、ボールが鳥栖ゴールを割った事を知る

 

 こうして、ゴールシーンに満足したところでサッカー観戦を途中で切り上げて、まもなくナイトゲームが始まる県営大宮球場へと舞い戻る

 かたや新監督でのリーグ戦初勝利、かたやアウェイでのリーグ戦初勝利と、共に初勝利を目指してぶつかった一戦の結末が1-1のドローに終わった事は、県営大宮球場のスタンドで知る

 この結果、全試合観戦した「大宮公園トリプルマッチデー」は1勝(アストライア)1敗(ベアーズ)1分(アルディージャ)となったのだった。

 

 

 広いピッチのいたるところでボールを巡る攻防が行われ、攻勢守勢も目まぐるしく入れ替わるサッカーの観戦は、当たり前だが普段野球を見ている時とは全く異なる集中力が求められ、最初は少々戸惑いもしたが、目の前でやっている競技の違いはもちろん、サポーターの応援やスタジアムの構造、物販や飲食ブースなど、サッカー独自の文化に久々に触れ、短い時間ではあったが、新鮮な驚きと視点のリフレッシュ、そして興奮が得られた観戦となった。

 こんな特殊ケースでもなければ野球シーズン中はまずないとは思うが、機会があったらまた野球以外のスポーツにも積極的に足を運びたいと思う

 

 

 セパ交流戦真っ只中だが、野球も好きなサッカーファンの皆様による異競技交流戦なども、ぜひ当スタジアムでどうぞ。

 引き続き皆様の当スタジアムへのご来場を心よりお待ちしております。