北欧の竜はドラゴンではなく蛇? | NORTHERN SPIRIT

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こんにちは、JAMIE です。

 

 

映画 『ノースマン 導かれし復讐者』 のコンセプトブック(洋書)に載っていた

「ヴォルスンガ・サガ」(ドイツのジークフリート伝説の北欧版。シグルズ伝説とも)

のタペストリーに、シグルズがファーヴニル(竜)を討伐する場面があります。

 

 

 

 

穴に隠れ、下から心臓を一突きにするという伝承に忠実なのも良いのですが、

何よりもファーヴニルがいわゆる西洋らしい翼を持つ竜ではなく、

ヨルムンガンドを想像させるデザインなのがいいね、と 

Twitter のフォロワーさんが言ってらしたのを思い出しました。

 

 

ヨルムンガンドはミズガルズ蛇。

北欧神話に登場する、世界をぐるりと取り巻いている巨大な蛇です。

ロキの三人の子供の一人で、ほかの二人(人じゃないけど)は

フェンリル狼と冥府の女王ヘル。

 

 

蛇といえば、オーラヴ・トリュグヴァソン王(オーラヴ1世)の軍船の名が

まさに長蛇号 (Ormrinn Langi)。

オルム(Ormr)は「蛇」 を意味する古ノルド語で、男性名によく使われています。

 

余談ですが、日本でも昔は男子の名に強い動物名が多かったですね。

熊之助とか、虎太郎とか。

北欧も同様で、ビョルン(熊)、ウールヴ(狼)、オルン(鷲)などあり、

今もポピュラーな名前です。

 

 

 

ところで、ヴァイキング船のことを竜頭船とも言いますが、

舳先の飾りだけ観ると竜なのか、蛇なのかわかりません。

 

 

 

 

 

ですが、サガで好まれるのはドラゴンではなく長蛇。

ルーン石碑に彫られているのもそれです。

 

 

シグテューナのルーン石碑 (photo by JAMIE)

 

 

やたら胴体が長い蛇。

ヨルムンガンドを表わしているのだと思います。

 

 

 

 

イングランドやウェールズの竜といえば、翼のあるドラゴン。

 

ウェールズの国旗 (ウィキペディアより)

 

 

 

ヴァイキング時代の北欧には一般的な西洋竜の概念はなく、

竜といえば長蛇ヨルムンガンドを指していたのかもしれません。

 

 

JAMIE