前・中・後篇でわかれてます。
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「今日はもう、帰って。友達来たから」
マキは握られていた男の手を振り払って吐き捨てるようにいった。
強く睨んだマキをみて男は舌打ちをすると、放り投げられていたバックを拾い上げてドカドカと通り過ぎると、真夜中には近所迷惑になるぐらいの騒音を立てながら玄関扉を閉めて去って行った。
「綾瀬、ほんとごめん……!なんかいきなり来て、ちょっと口論なっちゃってさ」
「前にも来てた人だよね」
「はは……うん、そう……」
困ったように俯いた彼の目じりが少し赤くなっていた。
深く話を聞くには、同じ土俵に乗れていない気がして、いつも聞く事ができない。彼もきっと話したくない部分もあるだろう。代わりにその広い背中を軽く抱きしめてポンポンと叩くと、マキは嬉しそうでいて、少し泣きそうな顔を恥ずかしそうに自分の手のひらで隠した。
「やばいよね。男なのに、ごめん」
「……よーし。よしよしよしーよしゃしゃしゃしゃ」
「え、そういうあやし方なの。他にしようよ」
失笑をこぼしながらもその手は軽く私の肩を抱く。
「綾瀬が恋人だったらいいのになぁ」
よわってるだけと分かっていても、その言葉を聞いて何処か嬉しく感じる。
反面、【私】では駄目な事も理解をしているからこそ、返す言葉が思い浮かばなかった。
(そう思うのなら、振り向いて)
漏れそうになる言葉を飲み込んで背中に回した手を解く。
私は、友達として、彼に幸せになってほしいから。
「とりあえず、おなかすいたよ」
「ああ、ごめん!部屋先入ってて」
足元に置いたビールを拾い上げて居間にはいると、おそらく時間に合わせてあたためといてくれたのだろう、美味しそうな匂いがキッチンから籠っていた。
(うん、この幸せで十分だから)
自分を納得させる様に思いながら、自分の腕をぎゅっと握る。
キッチンで準備をしているマキの姿に背を向けながら、報告をする。
「今日、長谷川くん、きてたよ」
「え?」
「またくるって」
反応はなかった。
きっとはにかんだ笑顔をこぼしているのだろう。
確認はしていないけれども、彼の思い人が誰であるかぐらいは、よく見てればわかってしまう。
――お互いに次の日が予定がなかった為、その日はゲームとお酒で徹夜した。
外が明るくなって窓から光が差した時、ふと見るとマキはスマホを持ったまま床で寝落ちてしまっていた。ベットから掛け布団だけ引きずり持ってくると彼にそっとかけて、腫れた目に触れる。
「……好きだよ」
聞こえないくらいの小さな声で呟いて、深く溜息をつく。
諦めなければいけないと、ずっと思っていてもなかなか難しいものだ。
(貴方には幸せになって欲しいから)
彼の寝顔を見ながら、ちくちくする胸の痛みを抑えるように言葉を何度も何度も繰り返し唱える。
そして私は微睡みの中に夢を見ることにした。
おわり⇒番外へ
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文字数と自動でなる改行に悩まされるとはおもっていませんでした。
ひとまずはこれでおしまいですが、ひとつ書きたいサイドストーリーがあるので番外編あげて最後になります。