4月の初め、南三陸町に向かっていた私たちは、津波の爪痕の残る道端に水仙の花を見た。
5月だったと思う。宮古でハマユリの花が咲いたと地方局のニュースで放映された。
6月、瓦礫の向こうの柿の木を見て母がつぶやいた。「2本とも枯れてしまった」
しかし、7月その柿の木に葉っぱが出ていた。生きていた!
8月の終わり、家が全壊流失してしまった跡地の母の家庭菜園跡に草が生い茂り、その中にたくさんのトマトが苗の大きさにまで育っていた。
9月、トマトはまた大きくなって花をつけていた。そして、よく見ると、草とトマトの中にナスまで生えている。
昨年落ちた種が芽を出していたのだ。
この季節では実がなるまでには至らないかもしれないけれど、
塩水に何時間も浸かっていたはずの場所でこんなにしっかり生きている。
遺伝子工学の第一人者である村上和雄先生が、ドキュメンタリー映画「1/4の奇跡」の中で語られていた言葉を思い出す。
「生きとし生けるもの、過去に生きていたもの、今生きているもの、これから生きるもの・・・アメーバから人間まですべて同じ遺伝子暗号を使っている」
ならば、この植物たちの強さは人間にもあるはず、
私たちも強く生きていける!
そんなふうに思った。
今被災地では、草があちこちで勢いよく伸びていて、まるで大地を修復しようとしているかのようだ。
その中にたくさんの黄色いひまわりが咲いていて心を明るくしてくれる。
神様は、試練とともに脱出の道も備えてくださるのだ。