さて、んじゃ、晒してみますわ
今回は二話分です
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Ep.11《漁夫の利》
試合開始の合図が鳴り、両クラスの生徒が一斉に飛び出す。
何より驚いたのは、
「…何処まで飛ぶんだ、あの人は」
涼の神祇【堕天の翼】だった。
フォースの奔流が肩甲骨の辺りから噴き出し、まるで一対の翼の様に見える。
しかも、使用するフォースの量が少ないのか、涼のフォースが圧倒的なのかは分からないが、一向に堕ちる気配がない。
そして上空から敵の動きを観察し、味方に敵の情報を送るのだった。
「隼人の【精霊の眼】だっけ?あんなのみたいな役割なのか?」
「…そうだな。【精霊の眼】程の精度は無いが、充分に脅威だろう」
モニターに政宗と小十郎が映る。
並走する二人は近づく相手を悉く薙ぎ倒して行き、
『行くぞ小十郎ぉお!!』
『勝ったらデートだからね!!』
…やっぱり甘かった。
画面は切り替わり、稔が映る。
『映ってる?…あーオッケーオッケー。んじゃ、行ってきまーす』
カメラの前で身なりを整えてから言うと、急加速する稔。
カメラはそのスピードに追いつけないのか、一瞬で稔の姿は掻き消えた。
戦場では、甘々な二人が敵を悶死させていた。
「マサ!勝ったら何処行こっか!」
小十郎の言葉に政宗は少し考える素振りを見せてから、
「小十郎ン家」
「えっ、とちょ、いつ?」
またも政宗は首を捻り、
「今日だな。それがいい」
「ふぇ、ちょ、そんな急に言われても…」
「小十郎!来るぞ!」
小十郎が慌てて前を見ると、眼前に数人の男子生徒が迫っていた。
彼らは口々に政宗への罵りの言葉を紡いでいた。
「政宗ェェエ!!」
「お前はいつも小十郎ちゃんとイチャイチャイチャイチャ…」
「モテない俺らの哀しみを知れェェエ!!」
大概はモテない男の悲痛な叫びなのだが、最後に全員が声を揃えて言うのは、
「「このチビがァァァアア!」」
ブチッと、何かがキレた音がした…ような気がする。
「…誰がチビじゃゴルァ!!」
政宗だった。
「もぉ許さん!コイツら全員ぶっ飛ばす!行くぞ小十郎!!」
そして政宗は印を組み呪を紡ぐ。
「我が身に眠る竜の血よ」
呼び掛ける。
応じるのは血液の鼓動。
「眼前の血肉を喰らいて」
確かな応答が返ってくる。
そして今度は命じる。
「その力を解放せよ」
視覚できる程の圧倒的なフォースが、光となって政宗から迸った。
「【竜王の晩餐】」
稔は走るのをやめていた。
なぜなら、
「カメラ、ついてきてないなぁ」
彼にとって一番大事なのは、自分の勇姿を全教導院の女子に届けることで、勝敗は二の次だし、そもそも、A組が負けるなどさらさら思ってもいなかった。
「仕方ない。マサの方ならカメラもあるよね」
金髪の混ざった黒髪を掻き上げながら、派手にフォースを撒き散らす方へと顔を向けた。
「…はぁ」
アーサーは嘆息していた。
政宗には神祇である【竜王の晩餐】は禁止していた。
なのにまた安い挑発に乗って使用した。
「…はぁ」
アーサーはまた嘆息した。
キングとして拠点にいる彼だったが、本当は前線を駆け回りたいという衝動がある。
「大変だねぇ、キングってのは」
いつの間にか横に立って銃をクルクルと回している男子生徒がいた。
「大変っていうより…面倒、かな」
「そういうもんですかねぇ」
「そういうもんです」
隣に立っているこの男子生徒は毛利大和。
毛利家の『血統書付』だ。
「っていうか、マサ達はいいとこばっかり取っていけねぇ」
のんびりとした口調で言うと、彼は回していた銃を構えた。
「撃つのかい?」
「ちょっとは参加したいからねぇ。それに、マサが暴れちゃってるしさぁ」
「傍に小十郎ちゃんがいるとは思うけど…」
「あいつぁマサの言いなりだからねぇ」
そりゃそうだ。
じゃないと頼まれたからって自分の裸体写真なんか撮らせるハズがない。
…実物は見てないけど。
「じゃあ撃ってもいいよ。ただし、威力は抑えて。打撲位なら大丈夫でしょ?」
大和はカカカ、と乾いた笑いを零して、
「了解でさぁ。んじゃ行きますかねぇ」
拠点からでも確認出来る光に向かって銃を構える大和。
その手に持つ銃は、とてもじゃないが、あの場所に届きそうもない。
だが、
「【長銃】を最大に。【精密射撃】を最大に。【弾数】を無限に。【連射】【速射】の追加機能を掛け合わせて【Type : MachineGun】に。【威力】を追加分に合わせて減少」
彼が次々と条件を指定すると、持っていた銃が形を変える。
銃身が、今までよりもっと長く。
それに合わせて各部も微調整が加えられる。
「そんなにオプション付けて何とかなるの?」
「【威力】落としていいっていうのが効いてるんだよねぇ。【威力】ってのは銃に於いて最も大事なところだからさぁ」
そう言って、長銃の標準を合わせる。
「Lock On…FIRE!!」
小十郎は見た。
数百余りの銃弾が高速でこちらに向かってきているのを。
「…やり過ぎちゃったかな?」
向かってくるのは大和の神祇だ。
きっとアーサーが大和に頼んだんだろう。
取り敢えず回避だ。
彼女が回避行動を取ると、数秒前、彼女がいた場所に銃弾の嵐が起こった。
反射的に眼を閉じ、再び開いた先に立っていたのは、政宗一人だけだった。
「食事は終わった?」
「…ああ」
「そっか。じゃあこれに勝ったらウチでデザート食べよっ////」
顔を赤くして政宗を見つめる小十郎を見て、動けずに地に這う男たちは血の涙を流して悶死した。
「なにやってんだかねー」
「…色ボケ」
良く伸びる声と、少し低めの声とが掛け合わされる。
良く伸びる声は笑みの表情をテンプレートした豊かな胸の女子生徒のもの。
対する低めの声は無表情な美人のもの。
二人は通信に乗った政宗と小十郎の会話を聞いて手で顔を扇いだ。
すると、彼らが討ち損じた相手がこちらに向かって来る。
「さーて、行くよスグちゃん」
「…うん。行こうあーちゃん」
眼を弓にした女子生徒が五百円硬貨を取り出す。
それを指で上に弾いて通信を遣う。
「あ、アーサー?5%、借りていーい?」
通信の相手はアーサー。
彼女は通信枠を表示して、諸々の設定を書き込んでいく。
『ああ、いいよ。許可する、でいいかな?』
向こうにも同じ通信枠が表示されているはずだ。
向こうのものと同期された通信枠に、サラサラとサインが走る。
それは勿論アーサーの名前。
「オッケー。ありがとアーサー」
『それはいいけど、アレは5%でもルールに抵触するかも知れないよ?』
「まだ抑えておくからだいじょーぶ」
顔に浮かべる笑みを更に濃くして、彼女は通信を切った。
と、丁度彼女が打ち上げた五百円硬貨が落ちてくる。
彼女はそれを落下に合わせて親指で前に弾いた。
初めはただの硬貨。
しかし、硬貨の先にフレームが現れる。
そのフレームには枠いっぱいに大きく『超電磁砲』と明朝体で書かれていた。
フレームを硬貨が割る。
鈴の音の様な高い割断音と共に、硬貨が雷の様な電流を帯びる。
それは一瞬停滞すると、消えた。
直後、相手の直ぐ傍の地面が裂ける様に抉れた。
「帝門・アーサー・トゥーサンの神祇、【RailGun】。5%の威力をお借りしましたぁー」
「あのさぁアーサー。お前の神祇にGunって入ってるのはどーにかならないのかねぇ」
アーサーの隣で、大和が言った。
「俺と被るじゃんかさぁ」
「仕方ないよ、黎明の軍事兵器からとってるんだから」
「理不尽だねぇ」
「どっちがだ!!」
「【土が裂け、敵は呑まれる】」
低めのよく通る声が響く。
その言葉通り、地面は割れ、倒れていた相手を呑み込んでいく。
「【彼らは闇に意識を委ねた】」
「それにしても、明日香ちゃんと直葉ちゃんの神祇はいつ見てもすごいねぇ」
大和が感心したように言った。
「二人とも生徒会役員だからね。渡辺会計の神祇は、許可された人物の神祇を金で借りるもの。安部書記の神祇は自分の言葉を現実にするもの。どっちも味方で良かったと思うよ」
ただ、と大和は薄く笑いながら
「すごいんだけど、二人とも百合なんだよねぇ。目の前でイチャつかれるとすっごい腹たたない?」
「…否定は出来ないね」
涼は戦場の上空で戦況を見極めていた。
「…そこか」
そして彼は、降下を開始した。
『キングを発見した。これから討伐に向かう』
涼から、戦場にいる全員に報告が渡った。
同時に、その場所も報告される。
そこに先ず最初に着いたのは、政宗と小十郎の二人だった。
「この程度で俺たちが止められると思うなっつーの!!」
政宗が胸を張って眼前に迫り来る相手と相対する。
「マサ!囲まれてる!!」
隣の小十郎が政宗に呼び掛ける。
そこで政宗は自らの周囲に続々と相手が現れていることを悟った。
「中々やるじゃん」
ニヤリと笑みを浮かべたまま、政宗は小十郎と背を合わせる。
「こいつ等全員ぶっ飛ばして祝勝会だ」
「うん」
その言葉を契機に、二人は勢いよく飛び出した。
「「喰い散らせ!!」」
稔は、政宗たちの後を追いながら、ここから先の活躍をどうするか悩んでいた。
当然キングを討つのが一番格好いい。
しかし、敢えてそこで政宗たちに勝ちを譲るというのも渋くて格好いい。
そこら辺が「侘び寂び」とかいうヤツなのだろう。千利休万歳だ。
「…まぁ、キング倒すのがいいかな」
結論として、彼は最も目立つ方法を選択した。
涼は、政宗と小十郎が相対する戦場へと降り立った。
「ヤバそうだな、マサ」
「ンなことねぇっつーの!」
「どいてろ」
涼は政宗を後ろに押すと、背の翼を大きく羽ばたかせた。
「『堕天の翼』」
翼の奔流が更に強く広くなり、敵全体を包み込む。
「くわぁっ」
「あぐっ…」
「ゔっ…」
次々と敵が地に足を付け、嗚咽を漏らし始めた。
「いつ見てもこれはヒドいぜ、涼」
「勝つためならどんな方法でも俺は厭わない」
その言葉に、政宗が口笛を吹く。
「こいつ常識人みたいな顔してとんでもない異常人だな」
「…A組に常識人は存在しない」
涼がそう言った瞬間だった。
人影が、彼等の間を風のように過ぎ去った。
「…誰だ?」
涼が問うその時、影を眼で追っていた政宗がその正体に気づいた。
「稔だ!アイツ、手柄持って行くつもりだ!!」
保健室でモニターを一心に覗き込んでいた隼人たちは、肩の力を抜き、一息いれていた。
「なぁ、静、今の上崎先輩は何をしたんだ?」
レオンが問う。
「私も分からないんだけど?」
静が隼人に顔を向ける。
ガリレオは窓の外を見ているままだ。
仕方なく、彼は答えた。
「俺たち『聖神』はフォースの貯蔵量を大幅に超えるとリミッターがそれを抑えようとする。そしてその反動で吐き気を催す。つまりはそれを応用したものだろう」
「ほー」
分かったのか分からなかったのかどちらなのか分からない声で答えたレオンを見て、隼人は苦笑した。
静も微妙な顔で頷いている。
「まぁ観てろって。もうすぐ決着だ」
「稔!待て!!」
《市街地》ステージの相手拠点を屋上へと駆け上る二つの影。
「だれが待つかっての!!」
一人は金髪の混ざった黒髪のイケメン。
稔だ。
もう一人は右眼を眼帯で覆い、右の側頭部から角が生えた男。
政宗だ。
二人はお互いに術式を展開しながら屋上を目指していた。
先行するのは稔で、その後を政宗が追う形だ。
階段を一足飛びに駆け上がる。
跳躍力は政宗の方があるのか、少しずつ距離を縮めていく。
そして、屋上付近で二人ともが並んだ。
「いいとこばっか撮らせるかよ!!」
「俺はまだ最初しか映ってないんだっつーの!!」
扉を開いたのは政宗だった。
扉の開いた先には、C組のキングがいた。
首にはしっかりとキングを表すペンダントが掛けられている。
「往生せいやァァァアア!!」
政宗が声を張り上げペンダントを潰しにかかる。
そして、ペンダントは破砕した。
政宗の行為によってではなく、稔の行為によって。
「『乾椿』が間に合ってよかった」
「稔…てめェ…」
稔は政宗の湿気の多い視線を受け流し、髪を掻き上げて、
「勝利!!」
腕を大きく上に突き出した。
観客が、一瞬の間の後、湧きに湧いた。
歓声は次の三年生の決勝戦の順延が知らされるまで続いた。
Ep.12《女の子は強かなのです》
「三年生の決勝戦は順延、か」
「こんなに時間使ったら流石にな」
そう言われて時計に目をやると、既にクラスマッチに当てられた時間を超過していた。
「そろそろ私はお暇させて頂くよ、藤原くん」
窓際のガリレオが、こちらに向かって言った。
「ええ。どうもわざわざありがとうございました」
「身体は大事にした方がいい」
そして彼は保健室を後にした。
「そういえば、他のみんなは?」
「里見が後で来るって言ってたな。私の王がどうとか」
里見、という名前を聞いて思い出すのはあの誓いだ。
あれを発案したのが里見だったはずだ。
「それから半蔵は家の用事だとかで来れないらしい」
「鳳仙は?」
隼人が尋ねると、レオンと静の二人は顔を見合わせてニヤニヤと笑った。
「あいつは今妹と修羅場だ」
「修羅場?」
隼人が尋ねると、今度は静が答えた。
「そう。クラスマッチで涼風くんと戦り合ってた娘いたでしょ?あの娘、LOVEしちゃったみたいね」
「LOVEしちゃったって…」
それがどう修羅場になるのだろうか。
「あの兄妹、シスコンでブラコンなんだよ」
「お兄ちゃん!その人誰なのっ!?私聞いてないよ!?」
叫ぶのは容姿端麗な美少女。
「いや、そう言われてもな?」
両手を彼女の前に掲げ、制止しようとするのは鳳仙だ。
「あら?『お兄ちゃん』だなんてお子様ね」
美少女と相対するのは智美だ。
だが、美少女は負けじとその豊かな胸を両腕で押し上げ、
「もう充分大人ですっ!てゆーか、あなたよりおっきいですから!!」
「なっ…このっ…私は90あるのよ!」
智美は胸を張り、自信有り気に言い張った。
だが、
「残念ですね、私92ですから!」
「なんの言い争いだァァァアア!!!」
耐えきれず、鳳仙が間に割って入った。
「お兄ちゃん!私とこのちっちゃいの、どっちが大事なの!?」
「ちっちゃくなァァァアアい!!ちっちゃいって言うのはA組の桐崎さんとかの事を言うのよ!」
「私よりちっちゃいのはちっちゃいんです!!」
「そしたら人類の大半はまな板よ!!」
「………誰か二人を止めてくれ」
鳳仙の悲痛な叫びは、空に消えた。
「遅れましたわ!」
自動ドアが開くのを待つのももどかしそうに、里見が入ってきた。
彼女はベッドで半身を起こしている隼人を視界に入れると、恭しく膝をつき、
「この里見麻耶、参上に遅れましたことを御許し下さい」
「…レオン、彼女は一体どういう種類の変人だ?」
隼人が問うとレオンは苦笑した。
「前に言ったけど、麻耶は騎士の家の出でな?んで、そーゆーのが身に付いてんだと」
「あの…」
すると、里見が入ってきた。
「あのっ、私、騎士として、仕える王を探しているのですけれど…」
隼人は、嫌な予感がした。
「私の王になって頂けませんか?」
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さーて、最初は二年生のチートっぷりをたっぷりとお伝えして、次の回では女の子の強かさをお伝えしましたwww
あー、彼女ほしーなーというこの頃ですな
でわでわ、また次回お会いしませう!

