第二話『娘と一つ屋根の下』 | You and I can (not) be "Genius"

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喰人のブログ。。。

大好きなアニメのことや、毎日の生活などの話題が中心です。

たまーに自作小説を書いたりします


んじゃ、さっさとagainうpしまーす

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「じゃあ、明日はテストだ。全員入学したてで辛いとは思うが、今の実力を測る大事なテストだからな。ちゃんと勉強しておくように。」
岡部教諭の言葉が終わり、この日は終了となった。
「大将、帰ろうぜ。」
「ああ。」
荷物をまとめて校舎を出ていく。
桜坂の桜は満開だ。
ちょっとしたハイキングコース並みの長さのあるこの坂も、桜を見ているとそこまで苦にはならない。
が、やはりそれは初めて見るものへの興味心からで、飽きてしまえばたとえ同じ満開の桜だろうと、退屈になることは避けられないのだろうなと考えると、これが自分のものではないように、足取りはすこぶる悪くなるのだった。
学校から徒歩五分。
それが俺の住む場所からの所要時間だ。
…いや、俺たちの、か。
何時の間にか、俺たちの周りは大きな豪邸とでもいうべき家の集まる高級住宅街の姿に変わっていた。
だが、その中でも一際大きな家の豪奢な門を物怖じすることなくくぐっていく。
広い庭には青々とした草木が美しく手入れされ、この家の庭師のセンスの良さが窺える。
長い小道を歩き、家のドアの前で立ち止まる。
カバンに入れたカードキーを取り出し、スロットに挿れる。
ロックの外れる音と共に、スロットのライトが赤から緑に変わった。
重いドアを開けて家の中に入っていく。
甘美な香水の匂いが薄く漂う。
五畳半以上はあろうかという広い玄関の埃ひとつない真っ白な床に、乱雑に放られた赤いハイヒールはいつもの光景だ。
「美鈴さーん。帰りましたよー。」
俺は玄関から声をあげた。
返事はない。
仕方なく俺は靴を脱いだ。
子龍もそれに続く。
リビングに入ると、そこには長い艶やかな黒髪を垂らしながらソファで眠る女性がいた。
黒のガーターを張った黒い網タイツのスラっとした長い脚が、これまた黒のタイトミニのスカートから伸びている。
彼女の羽織る曇りひとつない真っ白な白衣は、掃除洗濯担当の子龍の努力の賜物だ。
その長い黒髪の奥にある顔は驚く程小さく、パーツの一つ一つも、百人が百人間違いなく美人だ、と言う位に美しく、それはさながら、精緻に作り込まれたビスクドール人形を思わせる顔の作りだ。
「…何見てんのよ。」
急にパチリと長い睫毛が動き、黒い瞳が俺を見つめた。
突然の事に、俺は驚いて軽く仰け反ってしまった。
「美鈴さん…起きてたならちゃんと言って下さい。」
「悪いわね、さっき起きたばっかりなのよ。」
艶のあるアルトの美声が響く。
美鈴さん…この家の主である藤原美鈴さんは、俺の父親、子龍の母親、そして、帝門学園の理事長である帝門天馬さんとの、ある意味おかしな交友関係があったため、俺たちが帝門学園に入学する時に色々お世話になった人で、家からの通学は遠過ぎる俺たちの下宿を、家事全般をするだけで認めてくれた人でもある。
そんな訳で、恩義を感じないわけではないのだが、俺たちが家にいるときは大概家の地下室に籠っているし、玄関のハイヒールはいつ見ても同じ位置にある。
これだけの豪邸を建てているのだから、何かしらの職業には就いているはずだが、彼女が仕事をしているところを俺は見たことがない。
見た目こそ二十代半ばだが、中身は完全に四十代だ。
こんな風に、謎の種は尽きない美鈴さんだからこそ、俺は素直に彼女の言葉を信じることが出来ない。
存在自体が嘘のようなものだ。
「…くん?…やとくん?…隼人くん?」
「えっ?あ、はい?」
どうやら考え事に耽ってしまっていたようだ。
取り繕うように俺は言った。
「じゃあ、晩飯にしますか。」
数十分後、食卓には様々な料理が湯気を立てていた。
いただきます、と全員で手を合わせ、箸を取る。
勿論この料理の数々は、生活スキルが皆無の美鈴さんや、掃除洗濯担当の子龍が作ったワケではなく、炊事担当の俺が作ったものだ。
幼い頃に母親を亡くした俺は、親父と妹の為に毎日飯を作っていた。
なぜ妹ではなく俺なのかはよく覚えていないが、ただ単に楽しかったのだろう。
今でも、料理番組を観て新しいメニューを考えるのは楽しいのだから。
「で、どうだった?」
食事中に口を開くのは厳密にはマナー違反で、厳格な家ではそれだけで斬られるかの様に怒られる家もある。しかし、そんな家なんてものは殆ど廃れた絶滅危惧種で、基本どんな家でも、食事の場は最大の交流の場だ。
それに、無言のまま箸を進めるのもどうかと思う。
時代とは、移り変わっていくものだ。
と、適当に心の中で言い訳してから、俺は美鈴さんの問いに答えた。
「どうだった、とは?」
「だからさー、可愛い姉ちゃんがいたぜー、とか。」
「ないです。」
俺は既に全てを諦めている。
理想と現実は違うのだ。
ハーフならみんなモテるなんて甘い考えは、もうとっくの昔に棄てている。
ただでさえ女子のスペックは平均以下のような私立高校なのだ。ちょっと可愛いだけでもかなりの競争率になることは避けられない。
「シケてやがんなぁー、大将は。」
「子龍、お前はあれでよかったのか?」
「おいおい大将、俺を誰だと思ってるんだ?上級生まで全員見て回ってA~Eまでランク付けしたし、Aの娘にいたっては顔と名前まで記憶したぜ。」
…暇なやつだ。
「はぁー、隼人くんはホンっト枯れてるねぇ…高校生でしょ?性欲持て余してるんでしょ?それなら子龍くん見習うくらいはしなさいな。」
「今日の美鈴さん、やけに荒れてますね。」
「バカ。これは機嫌いーの。」
「珍しいですね。俺は美鈴さんって一年中だらーーーっとしてんのかと思ってました。」
「いや、あながち間違ってはないと思うぞ、大将。」
「お前ら…」
美鈴さんがプルプルと拳を握る。
「まぁいいわ。で、ね。」
「はいはい。」
「娘が来るのよ。」
「………」
沈黙が食卓を包んだ。
「何よ、その反応は。」
「いや、それがどうしたのかなーって」
美鈴さんの娘さんが来たところで、何も変化はなさそうだ。
「はぁー…編入すんのよ。」
「「え?」」
俺と子龍の声が重なった。
「お、いい反応ね。」
「それ…って、どういう…」
「そのままよ。私の娘が帝門学園に編入すんの。白馬に頼んでね。」
なるほど。この人ならそんなことでもやりそうだ。
目的の為ならそれまでの手段を選ばないような人だからな。
「ん?」
そこで俺は一つ気掛かりなことを見つけた。
「てことはなんですか。俺らとその美鈴さんの娘さんは一緒に…」
「ええ、一つ屋根の下ね。」
………
「きっと明日あんたらが登校してから位に着くと思うから、別に待たなくてもいいわよ。」
「そうですか…名前、なんて言うんですか?」
「莉愛。」
「りあ…」
「どう?いい名前でしょ?」
そういう美鈴さんの顔は、今までのどの顔よりも輝いていた。
「美鈴さん…」
「ん?」
「歳、いくつですか?」
「んーとね、多分今年で39だね。」
「そんなにっ?!もう詐欺の域ですよそれっ!!」
笑い声が食卓を優しく包む。

この時の俺は知らなかった。
彼女との出逢いが、その後の俺の人生までもを、大きく変えることになるなんて。

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えー、眠いです。。。
間違えても、そこはご愛嬌ってことで


でわ、また会いましょう