宮武外骨「滑稽新聞」の第145号まで、読了。

この「滑稽新聞」は、全6巻となるそうですが、市立図書館には、第5巻までしか無いようなので、これで、終了となります。

 

 

解説によれば、この頃、日本で最初の「社会主義」の合法的組織「日本社会党」が結成される。

かつて「万朝報」に居た、幸徳秋水、堺利彦らも、参加をしています。

そして、日本社会党の機関誌「平民新聞」も発行をされる。

ちなみに、堺利彦は、後に、宮武外骨と親交を持ったようです。

 

さて、この「日本社会党」は、一応、合法的組織なのですが、日本政府からすれば、自身と敵対をする厄介な相手と見ていたことに、違いはない。

日本の社会主義者は、様々な形で、嫌がらせ、弾圧を受けることになる。

幸徳秋水が、処刑をされることになる「大逆事件」は、その象徴的なものでしょう。

 

宮武外骨は、この「社会主義」というものに、大きな関心を持っていたそうです。

そのため「滑稽新聞」に掲載される記事にも、社会主義に関するものが増えて行く。

また、宮武外骨は、社会主義に関する雑誌を、新しく発行することも構想していたそうですが、それは、なかなか、上手く行かなかったよう。

理由としては、当時、日本で社会主義に詳しい人たちが、東京の日本社会党、「平民新聞」の方に集まってしまったため、宮武外骨の居る大阪に招き、仕事をしてもらうということが、なかなか、困難だったため。

 

そして、社会主義思想の広まりの影響か、当時、労働争議が、社会で頻発をしていたようです。

賃上げ、待遇改善を求めて、労働者のストライキも頻発。

あの足尾銅山でも、労働者が結集して立ち上がり、それは、暴動にまで発展。

この暴動は、「社会主義者による扇動だ」とされ、処分を受ける者も出る。

 

こういった労働者のストライキなどの記事も、「滑稽新聞」には、多く、掲載をされることになる。

 

さて、「滑稽新聞」には、当時、社会で起こった奇妙な事件を掲載するコーナーもあります。

 

例えば、兵庫県のあるところで、牛舎に侵入をした男が、「牛泥棒」の罪で、逮捕された。

しかし、犯人の男の供述からは、意外なことが。

実は、この男、「雌牛を姦すれば、出世をする」という噂を聞き、そのために牛舎に侵入をしたそう。

伊藤博文なども、そうして出世をしたのでは、と、記事では、皮肉っている。

 

また、奈良県のあるところで、若い女性が、自分の身体の一部を売るという事件があったそう。

その記事によれが、奈良県に住む、ある男性の娘が、硫酸によって大怪我をし、身体が不自由になってしまった。

そして、ある医者が言うには「同じ年頃の若い娘の肉や皮を移植すれば、身体が元に戻るかも知れない」ということで、その父親は、ある決意をする。

そして、自殺目前だった娼妓を見つけ、父親は、説得。

そして、娘のために、その女性に、身体の一部を売らせたという話。

 

どちらも迷信ですよね。

他にも、奇妙な事件が、色々とあって、面白い。

 

また、「滑稽新聞」の増刊として、宮武外骨は「絵葉書世界」という雑誌を出版。

これは、観賞用としても使え、また、切り離して絵葉書としても使え、結構、人気だったそうです。

 

また、「滑稽新聞」には、毎号、面白い絵が、数多く、掲載されています。

その挿絵を描いた人として、「今一休」とか「十返舎一六」といった名前が書かれています。

 

こちら、板垣退助の古稀を皮肉ったもの。

祝いの席の背後には、「自由」のお墓が、描かれている。

 

こちらは、都の路面電車の値上げを受け、民衆の抗議活動が、暴動に発展をした時の記事。

かつては、日本人も、様々なことで、抗議、暴動が発生をしていたよう。

いつから、日本人は、大人しくなってしまったのでしょうね。

現在の、米の高騰、物価高でも、抗議活動も、暴動も、起こらない。

 

こちら、女性の一生と、趣味の変遷。

なかなか、的を射ている。

 

さて、この絵。

描いたのは、何と、あの「竹久夢二」です。

 

竹久夢二は、「美人画」で有名な、岡山県邑久郡(現、瀬戸内市)出身の画家。

 

 

 

 

この竹久夢二の美人画。

見たことがある人は、多いはず。

 

ネットで少し調べて見ると、竹久夢二は、学生の頃、社会主義者の人たちと交流があり、「平民新聞」などにも、挿絵を描いていたということ。

「滑稽新聞」に挿絵を描いたのも、そのつながりでしょうかね。