雑誌「ニュートン」から、「人工生命」について。
そもそも、「生命」とは、何でしょう。
元々、「生命」を構成する物質、一つ一つは、「生命」ではないですよね。
しかし、その「生命ではないもの」つまり「物質」が、多く、組み合わさることで「生命」が生まれる。
なぜなのか。
この疑問を解明するためには、ただ、現在、この世に存在をする「生命」を研究するだけでは、不十分だそうで、そこで、実際に、「生命」を作ってみようという研究が進んでいる。これを「合成生物学」と呼ぶそう。
2008年、クレイグ・ヴェンダー博士らが、「マイコプラズマ」という細菌の全DNAを、化学的に合成することに成功。
2010年には、この人工DNAを、本来のDNAを取り除いた別のマイコプラズマの細胞に移植。天然の細胞と同じように、自律的に活動し、増殖を始めることを確認。
生物学では、一般的に、「生命」は、以下の三つの基本条件を満たすものとされています。
一つは、内部と外部を分ける境界(膜)があること。
一つは、代謝、つまり、外部からエネルギーや物質を取り入れて、生命活動を維持すること。
一つは、自己複製、つまり、遺伝情報をコピーし、次の世代に伝えること。
これらの三つの条件を満たした最小の単位が、「細胞」です。
合成生物学では、基本条件の一つ目である「膜」の形成に成功しています。
細胞膜は、リン脂質という分子が、二層に重なった「脂質二分子膜」で形成されていますが、この形成に成功。
ここから、DNAやタンパク質の合成に必要な分子を含んだ「疑似細胞」(人工細胞)を形成。
そして、2019年、代謝が出来る疑似細胞の合成にも、成功しているそうです。
これは、「光」のエネルギーからATP(アデノシン三リン酸)などの生体分子を生産する「葉緑体」を模したもの。
疑似細胞の外部から光を当て、内部でATPを合成。更に、そのATPからタンパク質を合成することに成功したということ。
生命の重要な特徴の一つが、DNAを複製し、遺伝情報を子孫に伝えるということ。
この時、複製のミスや、DNAの損傷などにより「突然変異」が起こります。
この突然変異の中から、環境に適したものが残ることを「進化」を呼びます。
現在、単純な自己複製システムを試験管の中で進化させることに成功しているということ。
生命って、不思議ですよね。
何で、地球に、「生命」が、生まれたのでしょう。
それを調べるために、研究が進んでいるのでしょうが、個人的には、「生命」を、「人工的」に作るということには、抵抗のあるところでもあります。
研究によって作られた「人工生命」が、自然界で増える、または、自然界の生命と一緒になる、などということは、無いのでしょうかね。
もし、そうなった時、環境や、既存の生命に、どういう影響が出て来ることになるのか。
また、もう一つ、別の話。
2010年頃から、DNAを部品として、コンピューターを作る研究が進められているそうです。
コンピューターとは、情報を記録する機能と、その情報に基づいて計算や処理をする機能(演算)が必要なもの。
実は、DNAは、この二つの機能を兼ね備えた分子だそうです。
コンピューターは、「0」と「1」という二種類の記号を使って演算をしています。
DNAは、特定の塩基(A、T、G、C)が結びついて、塩基対を作るという性質があり、配列を工夫すれば、特定のDNA同士だけを結びつけることが可能。
この原理を利用すれば、DNAを使ってコンピューターを作ることが出来るそうです。
このDNAコンピューターを使えば、周囲の状況を認識して、自律的に動作する「分子ロボット」を作ることも可能だとか。
現在、光をあてることによって、動きを自在に制御し、クラゲのように水中を遊泳するDNA液滴ロボットの開発に成功している。
また、DNAなどの分子に、情報を記録する「分子メモリ」の開発も進められている。
この分子メモリは、細胞に新しい機能を追加できる可能性があるそう。
これって、「生命」を、「機械」として製作し、使用しようということなのでしょうかね。
いまいち、イメージが沸かないところです。