星新一さんのショート・ショート「海のハープ」。

 

 

この作品、上の本に収録されていますが、どうも「ショート・ショート」という雰囲気の作品ではないですね。

ありふれたテーマに、ありふれた展開、ありふれたオチ。

どうも、「ショート・ショート」でイメージされる「意外性」のようなものがない。

 

だからといって、面白くないのかといえば、そうではない。

個人的には、むしろ、こういう作品が好きで、しかし、それはまた、別のジャンル、と、言う気がする。

 

短い話なので、粗筋を書いてしまうと、ほぼ、作品の全体ということになる。

ショート・ショートを楽しみたいという人は、以下、読まない方が、良いでしょう。

 

主人公の女性。

恋人と喧嘩をし、別れてしまった失意で、海に行く。

そこで、海の向こうから流されて来たと思われる「ハープ」という楽器を見つける。

そのハープを鳴らしてみると、近くの砂浜で遊んでいて男の子たちが、女性の周囲に集まり、愛の言葉をささやき始めた。

そして、ハープを鳴らすのを止めると、男の子たちは、何事も無かったかのように、また、砂浜に戻り、遊び始める。

 

どうも、このハープを弾くと、その音を聞いた男は、自分に恋心を持ってしまうらしい。

女性は、そのハープの、上手い使い方を学び、様々な男を引き寄せる。

しかし、結局、男が、自分に好意を持ってくれるのは、そのハープの音を聞いている時だけ。

女性は、次第に、空しくなる。

 

女性は、最後に、別れた恋人に、もう一度、会いたいと思った。

彼に電話をし、その電話口で、ハープを鳴らすと、彼は、女性の部屋に来た。

そして、ハープを鳴らすのを止めても、彼は、帰らない。

 

女性と彼は、それから、お互いが、まだ、お互いのことを好きであることを知る。

 

そして、女性は、彼と一緒に、海に行き、ハープを、元の海に返した。

 

と、言うお話です。

 

この「異性の気持ちを引きつける道具」というのは、誰しもが、欲しいものでしょう。

例えば、「ドラえもん」の秘密道具の中にも、その手のものは、色々と、ありますよね。

 

自分が好きな異性から、自分のことを好きになってもらえる。

そういう経験が出来た人は、幸せでしょう。

僕には、女性に好きになってもらった経験が無いので、それが、どういう感覚なのか、よく分かりませんが。