最近、また、ふと「星新一」さんの本でも読んでみようかと思い、本棚を探したところ、昔、買った、この本がありました。
星新一さんの本を読もうと思ったのは、これが、三度目。
一度目は、もう30年くらいも前の話。
この本を、買ったんですよね。
しかし、こちらは、もう、手放してしまい、棚の中には、無かった。
そして、上の「妄想銀行」は、10年以上も前、二度目に、読もうと思った時に、買った本。
なぜか、一度目に、読もうと思った時、二度目に、読もうと思った時、どちらも、最後まで読み切ることが出来ず、途中で、挫折してしまったんですよね。
なぜか、その時は、あまり、面白いものとは思えなかった。
しかし、今、読み直してみたところ、とても、面白く、興味深い。
なぜ、昔は、途中で、挫折をしてしまったのか。
自分で、その理由が、よく分からない。
星新一さんは、「ショートショート」というジャンルを確立したのと同時に、日本のSF作家の先駆けのような存在でもあるそうですね。
やはり、短い話の中で、その発想と展開の面白さ、そして、「オチ」がつくことで、まるで、四コマ漫画でも読んでいるように、気軽に、読むことが出来る。
最初の数編を読んだ中で、「住宅問題」という作品が、とても、面白く、感心したところ。
主人公は、家賃が無料という住宅に住んでいる。
なぜ、家賃が、「無料」なのか。
実は、その部屋の中では、四六時中、CMの映像、音声が、流れるようになっている。
何かを食べようとすれば、その食べ物に関するCM。
何かの家電を使おうとすれば、その家電のCM。
つまり、そのCMを部屋に流すスポンサーの会社が、家賃を肩代わりしているということ。
そのため、その部屋に住む人の家賃は、無料。
もちろん、CMが流れるからといって、必ずしも、そのCMの商品を買わなければならない訳ではない。
しかし、心情的に、無料で部屋に住んでいるのだから、何か、必要なら、そのCMの商品を買おうと思うのは、自然でしょう。
なかなか、良いアイデアだと、個人的に、感心をしたところ。
実際、こういうアパートがあっても、良いのではないかと思ったところです。
しかし、四六時中、流れるCMによって、住人の気が変になってしまっては、意味がない。
その点、心理学者のアドバイスで、適切に、CMも管理をされているということ。
主人公もまた、その部屋の中で、CMを見ながら、生活をしている訳ですが、ある時、新聞のチラシに、「土地」の広告を目にする。
とても、良い土地であり、しかも、値段が、とても安い。
この値段なら、今の自分の貯金で、買うことが出来る。
主人公は、即決で、その土地を買うことにした。
これで、四六時中、流れる、煩わしいCMからも解放されることになる。
そして、主人公は、自分が買った土地を、見に行くのだが……。
ここからの「オチ」もまた、秀逸です。
まさか、こういう発想があるとは。
これぞ、「ショートショート」の醍醐味、と、言ったところでしょう。