岩波文庫版、プルースト「失われた時を求めて」の第二巻を読書中。

少しずつ、読み進めていますが、この第二巻から、第一編「スワンの家のほうへ」の第二部「スワンの恋」が始まります。

 

 

舞台は、フランスのパリに移り、時間軸としては、語り手であり、主人公である「私」が生まれる前の話になるそうです。

相変わらず、様々なことについての、詳細な描写が、延々と続き、物語は、なかなか、先に進まない。

でも、個人的には、なかなか、面白い。

 

さて、まだ、読み始めたばかりですが、個人的に、気になる人物が、一人、登場しました。

それは「ドクター・コタール」という人物。

 

「ドクター」と呼ばれている通り、医者なのですが、その言動が、少し、他の人と違っていて、おかしなところがある。

 

その特長の一つが、「相手の『言葉』を、文字通り、その『言葉』の意味、そのままに、解釈をしてしまう」というもの。

 

小説の中で、この「ドクター・コタール」に関するエピソードの一つとして、贈り物をする時に「これは、つまらない物ですが」と言って、高価な物を渡すと、彼は、本当に「つまらない物だ」と思っているようだ。だから、これからは「これは、素晴しい物だから」と言って、安い物を贈るようにしよう、と、言うものが出て来る。

 

他にも、この「ドクター・コタール」についての、奇妙な言動が、色々と記されていて、それを読んでいると、この「ドクター・コタール」は、今の時代で言うと、「発達障害」なのではないかと思われる。

作者のプルーストは、この「ドクター・コタール」という人物を、想像で、造り出したのか。それとも、実際に、こういう人が、身近に居たのか。

恐らく、後者でしょう。

 

この「発達障害」というものが、世間で、話題になるようになったのは、ごく、最近のこと。

しかし、この「発達障害」を持っている人は、昔も、当然、居たはずで、恐らく、かつては、「変な奴」「馬鹿な奴」という一言で片付けられ、社会の中で、生きて行くには、とても、苦労をしたのではないですかね。

 

以前、ラジオで「大人のADHD」の話をしていたのを聞いたことがあります。

 

この「ADHD」も、「発達障害」の一つ。

注意力、集中力が乏しく、落ち着きが無いというのが、子供の頃の、大きな特長となりますが、大人になると、この「落ち着きが無い」という症状は、次第に、無くなって来る人が多いようです。

 

さて、ラジオの中で、話されていた特長です。

 

「複数のことを、同時にこなすということが難しく、段取りを、上手く、組むことが出来ない」

「何かを指示されても、他のことをしている間に、忘れてしまい、指示されたことを、していないという、いわゆる『指示抜け』が多い」

「『場の空気』というものを、読むことが出来ない訳ではないのだが、この『場の空気』を壊すような発言を、ポロリとしてしまう」

 

などが、挙げられていました。

 

こういう人が、職場の中に居る場合、周囲の人が、サポートをしてあげることが必要だ、と、ラジオの中で話していましたが、それは、仕事をすることに対して、人数に余裕がある、大きな会社なら、可能なのでしょう。

しかし、小さな会社で、人数も、ギリギリで、仕事をこなし、むしろ、仕事をする人が足りていないような職場では、他人をサポートするなど、不可能な話。

 

僕の会社もまた、人数が、むしろ足りない状態で仕事をしている、小さな会社なのですが、一人、この「大人のADHD」の特長が、そのまま、当てはまる人が、一人、居ます。

しかし、程度としては、それほど、酷いという訳ではないようで、仕事が、何も出来ないという訳でもない。

しかし、「段取りが、上手く出来ない」というのは、そのままで、自分で、段取りをして仕事をしていた頃は、忙しく、動き回っているようでしたが、なかなか、仕事は進まないようで、よく「仕事が遅い」と怒られていた。

また、「指示抜け」も多く、社長などに指示されたことも、「言われた通りに、しtれいない」とか、「そもそも、言われたことを、何もしていない」ということも多く、よく怒られていた。

そして、怒られている最中に、言わなくても良い、一言を言ってしまい、更に、怒られたりという場面も、よく見ていた。

よく、これまで、首にならなかったものだと思うところ。

また、あれだけ怒られて、自分から辞めなかったのも、不思議。

 

そもそも、人数が足りない状態で仕事をしているので、首にするということは、なかなか、出来ないでしょうし、辞められては、会社が困る。

少ない賃金で、キツい仕事。

求人を出しても、もう、誰も来ないでしょうし、もし、来ても、長続きはしないということは、みんな、分かっている。

 

僕もまた、自分の仕事で、手一杯なのですが、その人が、ミスをしたこと、やり残したことなどの、後始末をさせられることも、よくある。

色々と、腹の立つこともあるのですが、「発達障害」なのだと思って、我慢をしなけば、仕方が無い。

 

僕が、見ていて、その人の特長を、他に、挙げるとすれば、このようなものがある。

 

「その場を、ごまかそうとして、すぐにバレるような嘘をつく」

「心の中で、思っていることが、そのまま、ストレートに、表情に出る」

「自分の考えていることを変えるということが難しいのか、行動に融通が利かない」

「行動をする時に、先のことを考えないのか、使っているものが、よく壊れる」

 

など。

 

彼は、恐らく、今の会社だから、首になることもなく、周囲から排除されることもなく、仕事が続けられているのだろうと思っています。

恐らく、他の会社では、首になるか、周囲の人に嫌われて、居づらくなるかで、長続きをしないのではないかと思うところ。

 

本人は、そういうことを、自分で理解しているのだろうかと思いながら、毎日、仕事をしています。

自分で、自分のことを、理解しているのかどうか。