宮沢賢治の小説「寓話・猫の事務所」。
この「寓話・猫の事務所」も、宮沢賢治が、生前に発表した小説の一つ。
猫は、擬人化されていて、その猫たちが働く、小さな事務所の中での物語。
この小説。
昔、一度、読んだ時から、強く、印象に残っている作品です。
それは、この小説の物語が、「社内いじめ」を描いているから。
なぜ、宮沢賢治は、このような小説を書いたのでしょう。
童話など、主人公が、「いじめ」に遭う場合は、多々、あるような気がする。
そして、大抵の場合、その主人公は、幸せになって、終わる。
軽便鉄道の停車場の近くに、猫の第六事務所がある。
ここは、主に、猫の地理と歴史を調べる場所。
そこでは、四人の書記が、仕事をしている。
一番書記、白猫。
二番書記、虎猫。
三番書記、三毛猫。
四番書記、かま猫。
かま猫は、他の三人の猫から、嫌われていた。
三人の猫は、何かと、かま猫に、言いがかりをつけ、意地悪をするが、事務長の黒猫は、そんな、かま猫を、何かと、かばっていた。
しかし、ある日、かま猫が、病気で、仕事を休んだ。
かま猫の居ない事務所の中で、三人の猫は、事務長の黒猫に、かま猫の悪口を吹き込み、黒猫は、それを信じてしまう。
そして、病気が治り、事務所に出勤をした、かま猫は、事務長の黒猫を始め、三人の猫に、仕事を取り上げられ、完全に、無視をされてしまう。
何も、することがない。そして、誰にも、相手にされない、かま猫は、事務所の中で、泣き続ける。
僕が、この小説を、初めて読んだ時から、強い印象を持っているのは、この「いじめ」の描写が、とても、リアルに感じるから。
職場の中で、こういう「いじめ」があっても、不思議ではないし、実際、あるような気がする。
かま猫の気持ちになると、切なく、悲しい。
そして、この物語は、事務所の中を覗き、様子を見ていた金色の獅子が、猫たちを一喝し、事務所の解散を命じて、終わる。
いじめられた、かま猫は、幸せになった訳ではない。
獅子が、事務所の解散を命じたのは「喧嘩両成敗」と言ったところなのでしょうか。
そして、宮沢賢治は、最後の一文で「ぼくは半分獅子に同感です」と、結んでいる。
この「半分、同感」とは、どういう意味なのでしょう。
「よだかの星」を読んだ時にも思いましたが、どうも、主人公が、救われた感じがしない。
悲しいお話のような気がします。