さて、かつて、日本の会社は「終身雇用」「年功序列」が、普通でしたが、その頃、首にしたい社員でも、勝手に、首を切ることは出来ず、会社として、色々と問題もあったようですね。
例えば、不本意な部署に異動させる。
やりたくない仕事を、無理矢理、やらせる。
逆に、仕事をさせない。
などなど。
自分から「辞める」と言って貰わなければ、その社員を、会社から排除することが出来ない。
これが、良いことなのか、悪いことなのかと言われれば、悪いことに違いない。
藤子不二雄Aさんのブラックユーモア短編の中に「なにもしない課」という話があります。
主人公は「天野芳雄」という会社員。
営業で、バリバリ仕事をしていたのですが、ある日、「調査課」への移動の命令が出る。
この「調査課」とは、会社の「姥捨て山」と呼ばれている場所。
天野は、抗議をするが、当然、命令は、変えられない。
天野が、調査課に行くと、課長は、昼寝をしている。
他には、新聞のスクラップに精を出す者、読書をしている者、売れない小説を書いている者、編み物をしている者、麻雀をしている者。
誰一人、仕事をしていない。
「ここも、慣れると、良いところですよ。何しろ、責任あることは何もしないで、給料が貰えるのですから」
天野は、そう言われても、どうも、何かしないと、落ち着かない。
「ちょっと、営業に、顔を出して来ます」
と、部屋を出ようとしたところ、
「駄目ですよ。トイレ以外で、部屋を出ることは、禁止されています。それに、行ったところで、相手にされませんよ」
調査課では、みんな、定時で、会社を出る。
天野は、調査課の同僚の一人と、酒を飲みに行き、他の課員の話を聞く。
麻雀をしている二人は、その麻雀が原因で、調査課へ。
そして、一緒に酒を飲みに来た同僚は、酒での失敗で、調査課へ。
調査課の一番の古株は、「細井」という人。
正義感が強く、組合の執行委員に担がれ、会社と、激しくやりあったのが原因で、調査課へ。
しかし、近々、「特赦」があるという話。
この「特赦」によって、会社で、何か、目出度いことがあると、調査課の中で、古い順に、まともな職場に移動出来る。
そのため、最近、細井の機嫌が良いということ。
しかし、その後、この「特赦」によって、管理課に異動となったのは、課長の田所だった。
細井は、同時に、調査課の課長となったが、その日、会社に来なかった。
そして、細井が自殺したことが新聞の記事になり、天野は、それを目にして、驚く。
天野は、一生、この会社に、へばりつく決意をし、調査課に行く。
そして、天野は、細井がしていた、新聞のスクラップを始めた。
こういう「調査課」のような部屋が、かつて、色々な会社にあったのでしょうかね。
だとすれば、ひどい話ですが。