さて、「男尊女卑」という思想。

 

一体、どこで、どのようにして生まれたのでしょうね。

 

個人的な想像では、まだ、「呪術」が、社会に大きな影響を与えていた頃には、女性の地位も、それほど、低いものではなかったのかな、と、思います。

しかし、武力、軍事が、ものを言う社会になると、やはり、力の強い男の方が、有益で、力の弱い女は、男に、従属せざるを得ないということになってしまったのかな、と、思うところ。

そして、「男尊女卑」の考えは、世界中に広がり、それは、今でも、尾を引いている。

 

女性だ、と、言うだけで、悔しい思い、辛い思いをしている人は、多いのではないでしょうかね。

男女平等は、まだまだ、達成されていない。

特に、日本の社会では。

 

さて、藤子F不二雄さんのSF短編に「女には売るものがある」という、短いお話があります。

さて、「女が売るもの」とは、何なのか。

 

 

冒頭に登場するのは、年配の、しょぼくれたサラリーマンの男性。

裏通りを歩いていると、若い、綺麗な女性に、声を掛けられる。

女性と、年配の男性は、お金の交渉の末、近くのホテルに入る。

一緒に、風呂に入り、女性に身体を洗ってもらった年配の男性は、ベッドの上で、悠然と、座っている。

そこに、女が、ベッドに入ろうとする。

すると、男は、激怒をし、強い口調で、女に言った。

 

「馬鹿者! 誰が、金を払ってまで、そんなことをしたいと思うか。ずうずうしい奴だ、女のくせに」

 

男は、ベッドに、悠然としたまま、女に新聞を持って来させる。

女は、大人しく、ベッドの脇で、正座をしている。

 

「エヘン」

 

と、男が、言った。が、女は、無反応。

すると、男は、

 

「『エヘン』と言ったら、お茶だ! 気が利かん奴だ、女のくせに」

 

と言い、女は、急いで、お茶を持って来る。

男は、更に、言った。

 

「ウチワで、仰げ」

「クーラーが、効いてますけど」

「切って、扇ぐんだよ」

 

女は、ウチワを持って、ベッドの上の、男を扇ぐ。

 

「オホン」

 

と、男が言ったので、女は、急いで、お茶を持って来る。

しかし、男は、言った。

 

「『オホン』と言ったら、タバコだ! 『エヘン』と『オホン』の区別もつかんのか!」

 

と、男は、女を、怒鳴りつける。

タバコを持って来た女に、男は、更に、言った。

 

「腰でも揉め。言われる前に、やらんか。女のくせに」

 

男は、ベッドの上で、女に、腰を揉ませる。

 

そして、時間が来た。

 

「時間だよ。お金を払って消えな、おじさん」

 

と、女は、男に、お金の催促をする。

 

「せめて、後、10分、いや、5分」

 

と、男が、言っているところに、警察が踏み込んで来た。

 

男と女は、警察に連行される。

取り調べをするのは、偉い女性の警察官。

 

「出来心です。どうか、家内には、内密に……」

 

と、男は、恐縮して言うが、

 

「差別語です。『主人』と言いなさい!」

 

と、男は、女性警察官に、怒られる。

 

一方、女の方は、取調室で、女性刑事から、取り調べを受けていた。

 

「お前なんか、全女性の敵なんだよ。今日の女性上位を勝ち取るまで、先人たちが流した、血と汗と苦闘の歴史を、お前は、逆行させようとしているんだ」

 

そして、女性は「売権防止法」違反で、送検されることになる。

 

この短編。

子供の頃、最初に読んだ時は、何を言いたいのか、よく分からなかった。

しかし、大人になると、よく分かる。

 

女性たちの懸命な努力と戦いで、「男尊女卑」の思想を打ち破り、「女尊男卑」の社会になった。

 

その社会の中で、かつての「男尊女卑」を体験したい、年配の男。

そして、その年配の男の思いを、お金で、叶えてやる女。

 

なかなか、面白い。