吉田秋生さんの漫画「桜の園」を、久しぶりに、再読。
やはり、良い漫画です。
物語としては、やはり、映画とは別物です。
しかし、映画の方は、この漫画のテイストを、上手く、取り込み、とても上手く、まとめられている。
漫画の方は、表現が、とても、直接的で、登場人物の内面の独白によるセリフが、とても多い。
これを、そのまま、映画にするのは、なかなか、難しいでしょう。
物語は、「花冷え」「花紅」「花酔い」「花嵐」「スクールガール・プリンセス」の五つに別れている。
「花冷え」の主人公は、中野。恋人である、シンちゃんとの関係に、悩んでいる。
中野の悩みとは、シンちゃんに、身体を許すのかどうか。
そして、それは、初めての経験となること。
10歳離れた姉は、結婚の準備が進んでいる。
しかし、ある日、家に帰ってきた姉の様子が、おかしい。
婚約者との間に、何かあったのか。
中野は、姉に、理由を聞く。
姉は、その日、出かけた先で、初めて、好きになった人に、偶然、再会をしていた。
そして、その人は、初めて、身体を許した人でもある。
姉は、その、かつての恋人に、自分が結婚をするということを話せなかったと言う。
そして、その元彼に、今晩、誘われたが、断って、帰って来た、とも。
初めて好きになったの人なので、忘れられない。でも、もう、あの頃の自分は、戻って来ない。
姉の話を聞いた中野は、シンちゃんと、一夜を共にすることを決意する。
「花紅」の主人公は、杉山。周囲からは、派手な人、不良少女と思われ、よく遊んでいると思われているが、実は、男関係、身持ちは、とても堅い性格。
長く付き合っている、俊ちゃんという彼氏がいるが、俊ちゃんには、キスも許さない。
いくら、男と遊んでも、自分は、上手くやれると思っている。
男の誘いなんか、簡単に、かわすことが出来ると。
周囲の子たちは、自分たちを、どのように見ているのか。
ある日、杉山と、その仲間が、周囲から、「売春をしている」とか「中絶をした」という噂が立ち、ショックを受けたりもする。
そして、ある時、部屋で、俊ちゃんと、男の話をしている時、杉山は、俊ちゃんに、無理矢理、襲われそうになる。
そして、俊ちゃんは、言った。
「男の方が、力が強いんだから、こんなこと、しようと思えば出来るんだ。でも、しないのは、なぜだか分かるか。それは、嫌われたくないからだ」
その言葉を聞き、杉山は、自分が、男を、上手く、かわしていたのではなく、男の方が、自制をしてくれていたのだということを知り、反省する。
そして、杉山は、俊ちゃんと、キスをすることに。
「花酔い」の主人公は、志水。演劇部の部長で、しっかりした人と思われている。
志水は、あることをきっかけに、それまで、敬遠していた杉山と親しくなった。
杉山との話の中で、志水は、自分が、これまで悩んできたことを打ち明ける。
それは、女性としての成長が、早かったこと。
そのため、周囲の大人から、「この子は、ませている」とか「男に気をつけろ」などと言われたり、同年代の男の子たちに、からかわれたこと。
志水は、子供の頃に、時々、家に来る、年上の親戚の子に、恋心を抱いていた。
しかし、その子にも、「ませている」と言われたことで、ずっと、ショックを感じていた。
しかし、久しぶりに再会をした、その親戚の子に、その時のことを話しても、その子は、そのことを覚えていない。
しかし、自分は、そのことを、今でも、忘れられないでいる。
そして、杉山は、志水に、「倉田さんのこと、好きでしょう」と言った。
確かに、志水は、倉田のことが好きだった。
あまり女性らしくない倉田に、志水は、好意を抱いていた。
そして、倉田が、初恋の人に似ているというのも、その理由の一つだった。
「花嵐」の主人公は、倉田。長身で、男の子っぽい外見をしている。しかし、倉田は、女性らしくない自分の見た目に悩んでいた。
倉田は、自分のことを、いつも見ている志水の存在に気がつく。
男の子っぽい見た目に反して、大きな胸を気にしていることを志水に指摘され、二人の距離は、急に縮まり、互いに、自分の悩みを話し合う。
倉田には、好きな人が居た。
それは、別の高校の男子生徒で、いつも、登下校の時に、すれ違う。
そして、ある日、その男子生徒は、女子生徒と一緒に歩いていた。
その女子生徒は、倉田とは正反対の、小柄で、かわいらしい女の子。
自分も、小柄で、かわいらしい女の子だったら、誰かが、好きになってくれるのか。
倉田は、その思いを、志水に打ち明ける。
倉田は言った。
「男の子じゃなきゃ、駄目なの? 私、倉田さんのこと、好きよ」
そして、舞台「桜の園」は、開演する。
「スクルガール・プリンセス」は、上の四つの話とは違い、ある夫婦の話。
少し、違う話で、付録のような印象なので、内容は、省きます。
実際に、現実社会の女の子も、この「桜の園」に登場する女の子と同じような悩みを持ちながら、成長をして行くものなのでしょうか。
男である自分には、よく分かりませんが、共感をすることは出来ます。