さて、「反重力」の話。

 

この「反重力」という言葉は、SF物語などで、よく目にします。

しかし、この「反重力」、つまり「重力」というものを自由に扱おうという装置は、個人的には、いくら、科学が発達しても、出現しないものと思っている。

つまり、過去に時間を遡る「タイムマシン」が開発出来ないのと同じく、重力を自由に扱う「反重力システム」のような機械は、発明されることはないでしょう。

 

そもそも、この「重力」という力は、どこで、どのようにして生まれるのでしょうね。

その辺のことが、ネットで調べてみても、どうも、よく分からない。

取りあえず、「質量」を持つ物質は、全て、「物を引きつける力」=「引力」を持っている訳で、それが、「重力」ということになるのでしょう。

つまり、「重力」とは、ほぼ「引力」と同じ意味、と、言うことになる。

もっとも、厳密に言えば、少し、違うのでしょうが。

 

では、なぜ、「質量」を持つものは、「引力」を持つのか。

その点が、謎、と、言うことになるのですが、まあ、自然界、宇宙の仕組みが、そうなっているのだから、仕方が無い。

 

地球の上に立っていると、地球の「重力」を感じることが出来ます。

地球に、自分たちが、引っ張られている力。

この「重力」というものは、非常に、強いものだという印象を持っている人が多いのかも知れませんが、実は、自然界に存在する「力」の中では、極めて、弱い。

 

自然界に存在する「力」は、「強い力」「弱い力」「電磁気力」「重力」の四つです。

「電磁気力」とは、「電場、あるいは、磁場から、電荷が受ける相互作用」。

簡単に言えば、「+」と「ー」が、引き合ったり、反発したりする力のことでしょう。

「強い力」とは、陽子や中性子を結びつけて、原子核を作るための力、そして、クォークを結びつける力ということ。

「弱い力」とは、中性子が、陽子と電子とニュートリノに分かれる「ベータ崩壊」を起す力。

この三つの力に比べて、重力は、極端に弱いということ。

なぜ、でしょう。

 

一説には、この「重力」は、別の次元にまで影響を及ぼしているので、力が弱いのではないかという話。

「超ひも理論」によれば、この宇宙は、10次元、11次元くらいで構成されている可能性があるという話。

何だか、よく分からない。

 

さて、実際には、とんでもなく弱い力である「重力」ですが、イメージとしては、とても強いもの。

なぜなら、この「重力」を発生させるものが、巨大な質量を持っているから。

「地球」という巨大な質量が生み出す重力は、とんでもなく強い。

「ブラックホール」になれば、超巨大な質量によって、超巨大な重力が生み出され、光でさえも、吸い込んでしまう。

この「重力」を、自由自在にコントロールするということが、果たして、可能なのでしょうか。

とても、そのような装置が、現実的に、誕生するとは思えない。

 

さて、この「重力」を操る装置、つまり「反重力」システムを使ったら、どのようなことが出来るのか。

個人的に「なるほど」と、感心をしたのが、藤子F不二雄のSF短編「宇宙船製造法」です。

 

 

この短編。実に、面白いお話で、映画にでもすれば、面白いのではないかと思うところ。

 

若者、8人が、春休みを利用して、宇宙船に乗り、宇宙の旅をしていました。

しかし、その途中で、宇宙船が、トラブルに遭い、ある惑星に不時着します。

幸い、宇宙船の操縦システムや、反重力エンジンには異常がなく、航行に支障は無い。

しかし、宇宙船の居住区が、大きく破壊され、宇宙に飛び立つことは出来なくなっていた。

 

幸い、惑星は、地球の環境に近く、宇宙服を着なくても、生活をすることが出来る。

宇宙船が不時着をした場所は、巨大な流氷の上だったので、別の、生活の出来そうな場所に、宇宙船を移動させる。

 

小山は、何とか、宇宙船の修理が出来ないかと考えるが、志貴杜は、「宇宙船の修理は不可能で、出来ないことに、無駄な労力をさくよりも、この星で、生き延びることを考えよう」と提案し、みんな、それに同意する。

そして、この星での生活が始まる訳ですが、乱暴者の堂毛が、次第に、身勝手な振る舞いを始め、ついに、志貴杜と対決し、喧嘩に勝った堂毛は、まるで「王様」のように、勝手に振る舞うようになってしまう。

 

このままでは、この星で、無事に生き延びることが出来ないと考えた志貴杜は、他の仲間たちと、密かに、話し合いを行い、堂毛を倒すことを決意。

集団で、堂毛を、力尽くで押さえ込み、罰を与えることになる。

 

孤立して、懲罰を受けた堂毛は、すっかり、大人しくなる。

しかし、志貴杜は、リーダーとして、暴走を始めることになる。

厳格なルールを決め、それに反した仲間には、過酷な懲罰を与えることに。

 

当然、仲間たちの間には、志貴杜への反感が、高まる。

そして、小山は、志貴杜に、言った。

 

「君は、地球に帰る望みを、捨ててしまったのか」

 

志貴杜は、答える。

 

「毎晩、地球に帰る夢を見るよ。でも、出来ないことを考えても、仕方が無い。ここで、みんなを、無事に、生きていけるようにすることが、僕の務めだ」

 

しかし、志貴杜の、過激なリーダーシップに、不満は高まるばかり。

 

そして、ある時、小山は、あることを閃く。

 

宇宙船は、操縦システム、反重力エンジンに異常はない。

つまり、居住区の破壊された部分を密閉することが出来れば、宇宙船は、宇宙を航行することが出来る。

では、どうやって、その居住区を密閉させるのか。

それには、「氷」を使えば良い。

 

小山は、非常サイレンを鳴らし、みんなを宇宙船に呼び寄せ、離陸させる。

目的地は、この惑星に遭難した時に着陸した、「巨大な流氷」の上。

小山は、流氷の上に、宇宙船を着陸させる。

 

宇宙船を、「巨大な流氷」の中に沈め、船体を密閉。

反重力エンジンは、「重力をコントロール」出来るので、宇宙船の大きさは関係ない。

なので、この「巨大な流氷」ごと、宇宙船を、宇宙で航行させることが可能。

これで、地球に帰ることが出来る。

 

この、小山のアイデアを聞いた志貴杜は、言った。

 

「氷の宇宙船で帰るなんてことは、無茶だ。そもそも、宇宙船の隔壁が、氷の圧力に耐えられるのか」

 

小山は、答える。

 

「多分、大丈夫だろう」

 

「多分とは、何だ。100パーセントの安全を保証しろ」

 

と、志貴杜は、言うが、

 

「俺は、賛成だ。こんな星で、生き延びるより、地球に帰る可能性に懸けたい」

 

と、堂毛が言い、他の仲間たちも賛同する。

 

残されたレーザー銃のエネルギーを使い、宇宙船を、巨大な流氷の中に沈める。

宇宙船が密閉されたところで、反重力エンジンを指導。

巨大な流氷ごと、宇宙船は、空へと浮かび上がる。

 

みんなは、大喜び。

志貴杜もまた、部屋の中で、一人、地球に帰れる喜びで、涙を流していた。

 

「巨大な流氷」を、まるごと、宇宙船にするという発想。

初めて読んだ時に、とても、感心しました。

「反重力エンジン」は、物体の質量に左右されることなく、物を、浮かび上がらせることが出来る。

もし、実現すれば、とても、面白いでしょうね。