この本、値段は、少し高いですが、藤子F不二雄ファンならば、買って、損は無いものと思います。

とても、良い本です。

 

 

この本には、現在、活躍中の漫画家さんが、それぞれ、藤子F不二雄さんの作品をモチーフにした短編を一作、そして、藤子F不二雄さんの漫画の中から選んだ一話、そして、その漫画家さんへの、藤子F不二雄さんについての短いインタビュー記事が、収録されています。

インタビューの内容は、藤子F不二雄さんの作品の中で、好きなものは、何か。

藤子F不二雄さんの作品から、どういう影響を受けたのか。

そして、どういう理由で、掲載する一話を選んだのか。

 

さて、この本に収録されているトリビュート作品の中で、個人的に、最も、好きなのが、奥浩哉さんの描いた作品です。

 

ある大学の中にある「星野スミレ研究会」。

部屋の中で、若者たちが、憧れの芸能人「星野スミレ」について、語り合っている。

今度、出演する映画の話題。

共演する相手の俳優は、誰なのか。

そして、キスシーンは、あるのか。

 

「そういえば、星野スミレが、パーマンだって噂、知っているか?」

「そんなこと、あり得ないよ」

 

そして、街を歩く若者たちの上空に、火を噴きながら墜落をして来る旅客機が。

騒ぎ出す群衆の見ている先に、パーマンが現れた。

1号、2号(ブービー)、3号(パー子)、4号(パーやん)。

そろって、旅客機を、無事、広場に降ろす。

 

そして、1号が、パー子に聞いた。

 

「今度の映画、キスシーン、あるの?」

「無いよ。何で?」

 

そして、旅客機を救出するパーマンたちの様子を見ていた「星野スミレ研究会」の学生だち。

 

「パーマンって、今、いくつくらいだろう」

「最初、小学生くらいだったから、今は、大学生くらいじゃないかな」

 

そして、「星野スミレ研究会」の若者の一人が、自分の部屋に帰る。

そこには、パーマン1号が居て……。

 

と、言う物語。

やはり、「星野スミレ」ファンとしては、とても、良い話でした。

 

そして、とても感動した話が、一つ。

それは、浅野にいおさんの描いた作品。

 

高校生になった、のび太と、静香ちゃん。

のび太は、成績優秀、スポーツ万能で、女子にモテモテの男子に生まれ変わっていた。

二人は、学校から帰る途中、ある話をしていた。

 

「捨てちゃうんだ、あの机」

「卒業したら、一人暮らしだし、遅かれ早かれ、買い換えるつもりだったから」

「私は、ちょっと、寂しいって思ってる」

「でも、いくら待ったって、あいつは帰って来ないと思うよ」

 

のび太の部屋にある、あの勉強机の話。

ドラえもんが、タイムマシンで、やって来た、あの勉強机。

 

「きっと、それって、これで良いことなんだよ」

 

のび太は、そう言った。

 

ドラえもんは、もう、帰って来ない。

でも、それは、自分たちにとって、良いことなんだと、のび太は、自分に言い聞かせる。

 

未来に帰った、ドラえもんから、卒業し、自分の足で、人生を踏み出す。

文章では言い表せない感動が、漫画の最後の一コマに、凝縮されていたと思います。

 

やはり、絵の力は、凄いですね。