さて、「時間」というもの。

 

相対性理論の絡みで、色々と、以前、書きましたが、今回は、物理学的な「時間」ではなく、心理学的な「時間」について。

雑紙「ニュートン」から。

 

 

この「時間」というものは、基本的には、誰にとっても、同じように流れるもの。

しかし、年齢を重ねるごとに、「一年」という時間が過ぎるのが、段々と早くなって行くのは、誰もが、感じていることでしょう。

 

なぜ、年を取ると、一年が過ぎるのが早く感じるのか。

 

よく言われるところでは「10歳の人の一年は、人生の10分の1。50歳の人の一年は、人生の50分の1。この、経験をした年月の差で、一年が過ぎるのを、早く感じるようになる」ということ。

この説明は、フランスの心理学者「ピエール・ジャネ」らが提唱した考えで、「ジャネの法則」というそうです。

しかし、この説は、科学的に検証されておらず、心理学者の間では、ほぼ、支持されていないということ。

 

そして、別の可能性として考えられているのが「ウェーバー・フェヒナーの法則」です。

これは「ある刺激に対する感覚の大きさは、刺激の強さの対数に比例する」というもの。

これは、「時間」に限ったことではなく、例えば、100グラムの重りを持っている人が、更に、10グラムの重りを持つと、重さが「1.1倍」になったと感じる。そして、1000グラムの重りを持っている人が、同じ重さの変化を感じるには、10グラムでは足りず、100グラムの重りを持たなければならない。

「時間」の感覚にもまた、これと同じ法則が、当てはまるのではないかということ。

 

例えば、20歳の人にとって、10歳から20歳までの10年は、人生の半分です。そして、60歳の人にとって、人生の半分は、30歳から60歳までの30年。

つまり、20歳の人の10歳から20歳までの10年の「時間」の流れと、60歳の人の30歳から60歳までの30年の「時間」に流れは、体感としては、同じ長さ、と、言うことになる。

これが、年齢を重ねると、「時間」の流れるのが早く思える理由です。

 

実は、この「年を取ると、一年が過ぎるのが早い」というのは、年単位だけではなく、分単位でも起きていることが、実験で確かめられているそうです。

つまり、若い人の方が、老人よりも、1分が経つのも遅いということ。

 

そもそも、人間は、どこで「時間」を感じているのでしょう。

仮説としては、脳内のどこかに、「パルス」と呼ばれる、一定のリズムを持った神経信号が出されていて、その信号の蓄積量が、心理的時間に対応しているというもの。

しまし、今とところ、「パルス」を発生する脳内の部位は特定されていないそう。

 

面白い話として、体温が上がるなど、神経活動が活発になれば、心理的な「時間」の流れが遅く感じるという実験結果があるそうです。

一般的に、代謝が活発になれば、体温が上がり、代謝が下がると、体温も下がる。

朝、時間の流れを早く感じるのは、この影響ではないかということ。

また、夏よりも、冬の方が、時間の流れを早く感じるのも、このため。

当然、子供の方が、代謝が高く、年を取るほど、代謝は低下する。

これもまた、年を取ると「時間」の流れが早くなる原因のよう。

 

さて、この「時間」の流れが、早くなったり、遅くなったりするのは、必ずしも、年齢を重ねた時ばかりではありません。

例えば、何か、絶対的な危機を感じた時、周囲が「スローモーション」に見えるというのは、よく聞く話。これは「タキサイキア現象」と呼ばれるもの。

これもまた、実験で検証されたそうですが、結果は、芳しくなく、「タキサイキア現象」は、存在しないのではないかとも言われたそうですが、実験自体に、問題があった可能性もあるということ。

また、別の実験では、この「タキサイキア現象」は、「危機」だけではなく「喜び」の感覚でも、起きるようだという結果が出ているようです。

これは、快、不快の感情ではなく、感情の興奮自体が、「タキサイキア現象」を起すのではないかと考えられるということ。

 

また、スポーツ選手などが、極度に集中した時に、「ボールが止まって見える」などと言いますが、これは「フロー」と呼ばれる現象だそう。

これには、景色がスローモーションに見える「拡張」と、長い時間が一瞬で過ぎる「圧縮」の、二つの現象があるそうです。

 

そして、「楽しい時間」は、短く、「退屈な時間」は、長く感じることも、よくありますよね。

これは、なぜなのか。

 

いくつか説があるそうですが、その中の一つに「スカラー期待値理論」があるそうです。

少し、ややこしいので、説明が省きますが、簡単に言えば、「時間に注意を向ける回数が多いほど、時間の流れが、遅く感じられる」ということ。

これは、多くの人が、体感として、知っていることでしょう。

 

そして、また、「空間が広い」「明るい」「音が大きい」という環境の中に居ると、「時間」の流れを、遅く感じるそうです。

これは「情報量が多い」と、「時間」の流れが遅く感じるということのよう。

 

大人よりも、子供の方が、「時間」の流れを遅く感じるのは、この「情報量が多い」ということも考えられるということ。

毎日、多くの、新しい出来事に出会い、毎日、多くの刺激がある子供は、毎日、同じ日常を過ごす大人よりも、「時間」の流れを遅く感じることになる。