僕は「詩」というものに、あまり関心も無ければ、読んでも、あまり、特に、何かを感じることもない。
しかし、その中でも、例外は、宮沢賢治、金子みすゞ、竹内浩三の三人。
宮沢賢治、金子みすゞは、広く、マスコミなどでも、度々、取り上げられるので、有名でしょう。
しかし、竹内浩三を知っている人は、あまり、多く、無いのかも。
竹内浩三の代表的な詩は「骨のうたう」という作品です。
戦死やあわれ
兵隊の死ぬるや あわれ
遠い他国で ひょんと死ぬるや
だまって だれもいないところで
ひょんと死ぬるや
ふるさとの風や
こいびとの眼や
ひょんと消ゆるや
国のため
大君のため
死んでしまうや
その心や
白い箱にて 故国をながめる
音もなく なんにもなく
帰っては きましたけれど
故国の人のよそよそしさや
自分の事務や女のみだしなみが大事で
骨は骨 骨を愛する人もなし
骨は骨として 勲章をもらい
高く崇められ ほまれは高し
なれど 骨はききたかった
絶大な愛情のひびきをききたかった
がらがらどんどんと事務と常識が流れ
故国は発展にいそがしかった
女は 化粧に忙しかった
ああ 戦死やあわれ
兵隊の死ぬるや あわれ
これえきれないざびしさや
国のため
大君のため
死んでしまうや
その心や
以上、全文です。
しかし、上の全文には、竹内浩三の書いたものに、第三者の手が入ったもの。
以下、竹内浩三の、オリジナルの「骨のうたう」です。
戦死やあわれ
兵隊の死ぬるや あわれ
遠い他国で ひょんと死ぬるや
だまって だれもいないところで
ひょんと死ぬるや
ふるさとの風や
こいびとの眼や
ひょんと消ゆるや
国のため
大君のため
死んでしまうや
その心や
苔いじらしや あわれや 兵隊の死ぬるや
これえきれないざびしさや
なかず 咆えず ひたすら 銃を持つ
白い箱にて 故国をながめる
音もなく 何もない 骨
帰っては きましたけれど
故国の人のよそよそしさや
自分の事務や 女のみだしなみが大切で
骨を愛する人もなし
骨は骨として 勲章をもらい
高く崇められ ほまれは高し
なれど 骨は骨 骨は聞きたかった
絶大な愛情のひびきを 聞きたかった
それはなかった
がらがらどんどん事務と常識が流れていた
骨は骨としたて崇められた
骨は チンチン音をたてて粉になった
ああ 戦死やあわれ
故国の風は 骨を吹きとばした
故国は発展にいそがしかった
女は 化粧にいそがしかった
なんにもないところで
骨は なんにもしなかった
竹内浩三は、大正10年(1921)、三重県に生まれます。
非常に多才な人で、詩だけではなく、子供の頃から、漫画や、小説も書いていたそうです。
そして、昭和15年(1940)日本大学に入学します。これは、映画監督になることを目指すため。
そして、この大学時代に、仲間と同人誌を創刊します。
竹内浩三が、公に発表した作品は、この同人誌に載せられた、ほんな僅かなものだけ。
なぜなら、昭和17年(1942)、徴兵されたから。
昭和20年(1945)4月、フィリピンで、行方不明。遺骨も遺品も、戻って来ることはありませんでした。
上に挙げた詩「骨のうたう」は、まるで、近い将来の自分が、こうなることを予想したもののよう。
竹内浩三の詩のほとんどは、死後、誰にも知られることなく、書き残されていたのを集めたものだそうです。
この竹内浩三の詩が、胸に刺さるのは、まるで、自分が書いたもののような気がするからなんですよね。
おこがましい話ですが。