さて、「平行世界」について。
カタカナ語にしたら「パラレルワールド」ですよね。
この「パラレルワールド」をテーマにした藤子F不二雄さんのSF短編も、いくつかあり、面白いです。
一つは、「パラレル同窓会」。
主人公は、ある大きな会社の社長、高根。
いわゆる「人生の勝利者」で、欲しいものは、全て、手に入れ、不満は無い。
しかし、少し、心残りも。
それは、かつて、「作家になりたい」という夢があったこと。
そんな高根のところに、どこから来たのか「パラレル同窓会」の案内状が。
「何だ、これは」
と、思ったところ、高根は、何かの変化を感じた。
そこに、もう一人の自分が現れる。
高根は、その、もう一人の自分を見て驚く。
そして、「パラレル同窓会」への道が開かれ、高根は、もう一人の自分に案内されながら、「パラレル同窓会」の会場に向かった。
そこに居たのは、数多くの「平行世界」に住む「自分たち」だった。
そして、その「自分たち」は、様々な人生を歩んでいた。
社長である自分はもちろん、窓際族の自分、会社を辞めて他の仕事をしている自分、などなど。
そして、殺人鬼となり死刑判決を受けている自分も居た。
数多くの様々な自分が、様々な人生を歩んでいることに、高根は、驚く。
この「パラレル同窓会」は、「人生のやり直し」のために開かれるもの。
様々な自分の人生を見て、双方の合意があれば、人生を入れ替えることが出来る。
社長の高根は、その「パラレル同窓会」で、作家として生きている自分に出会った。
社長の高根は、興味を持ち、話を聞くと、売れない作家として生きる自分に、自分が、本来、このように生きたかったという思いを感じることに。
社長の高根は、作家の自分を説得し、人生を入れ替えてもらう。
そして、高根は、公園のベンチで目覚めた。
腹が減り、お金が無いので、「今日の飯を、どうしよう」と考えるのだった。
この「パラレル同窓会」のように、他の「平行世界」で、別の人生を歩んでいる多くの自分が、実際に、存在するのでしょうかね。
今の自分よりも幸せな人生を歩んでいる自分が居れば、不幸な人生を歩んでいる自分も居るのかも。
もしかすると、夢を叶えている自分も居るのかも知れない。
そうであれば、羨ましい話。
もう一つの作品が「ふたりぼっち」。
主人公は、健二という高校生。
健二は、ある日、自分と瓜二つ、平行世界に住む健二と出会う。
二人の住む「平行世界」は、「時空の裂け目」のようなものを通じて、自由に、行き来することが出来た。
ちなみに、出会った当初、二人の住む「平行世界」は、ほぼ、同じ時間の流れの中にあったようで、二人の健二の人生に、ほぼ、差は、無かった。
二人の健二は、意気投合し、頻繁に、「時空の裂け目」を抜けて、会いに行くことになる。
しかし、そのうち、健二は、もう一人の健二に、ライバル意識のようなものを持つようになり、もう一人の健二には内緒で、マラソンなどの努力をするようになる。
そして、平行世界をつなぐ「時空の裂け目」が、縮まり始めた。
二人の健二は、「時空の裂け目」が閉じないように、広げるための努力を始める。
そして、ある時、一つの小さな出来事をきっかけに、健二は、憧れの女の子、高嶺花子に嫌われてしまう。
しかし、もう一人の健二は、同じ出来事をきっかけに、高嶺花子と親しくなっていた。
健二が、いつものように「時空の裂け目」から、平行世界に行くと、もう一人の健二は留守だった。
そこに、高嶺花子が、家に遊びに来る。
健二は、もう一人の健二のフリをして、高嶺花子と、楽しい時間を過ごす。
それを知った、もう一人の健二は、健二との別れを決意し、健二も、それに同意する。
そして、「時空の裂け目」は、閉じてしまった。
そして、別の日、健二は、高根花子を見かけ、平行世界で、楽しい時間を過ごした高根花子と勘違いをして、声をかけてしまう。
「しまった」と、思ったが、その様子を見て、高嶺花子が、笑った。
健二は、新たな一歩を踏み出すことになる。
この物語。
平行世界が、分岐し、離れていく様子を描いているようですね。
二人の健二が出会うまで、もしかすると、二人は、「同じ時間の流れ」の中に居たのかも知れない。
この「平行世界」「パラレルワールド」が、実際に、存在をしていたとしても、それを確かめる手段は無い、と、言うことになるのでしょう。
現在では「マルチバース」とも言うようですね。
今は、こちらの方が、通りが良いのかも。
映画「フラッシュ」も、この「マルチバース」がテーマで、なかなか、面白かったです。