さて、この本から、続いて、短編「沼」。

 

 

主人公は、沓川輝彦。

 

地域には、古くから信仰を集める「沼」があり、輝彦の家は、代々、その沼を御神体とする黒沼神社の神職を務めている。

 

その沼を調査するために、研究員を名乗る久保沢進一という男が、町に来て、沓川家にも訪れる。

輝彦は、この久保沢進一という男が、本当は研究員ではなく、不審な人間だと警戒をしていた。

 

進一は、次第に、輝彦の父、武典を取り込み、御神体である沼への調査を、認めさせようとする。

武典は「沼に居る竜神が許可をすれば」という条件で、沼の調査を認めることに。

 

しかし、その企みを阻止するため、輝彦は、ある仕掛けをした。

輝彦の仕掛けにより、竜神は、沼の調査を拒否するという結果に。

 

輝彦は、東京の知り合いに頼み、久保沢進一の身元を調べてもらう。

すると、進一は、研究員ではなく、ある会社の社員だということが分かった。

 

しかし、その時、すでに、父、武典と、妹の節子は、進一に取り込まれ、進一は、輝彦の知らない間に、節子を連れて、沼の調査に出かけて行く。

 

節子は、輝彦の知らない間に、進一と恋仲になっていて、結婚の約束までしていた。

その節子と共に、沼の調査に出かけた進一は、その沼の「龍の目」と言われている部分が、温泉の湧き出す場所だったということを突き止める。

 

実は、進一は、ある観光開発の関連会社の社員だった。

この沼の「龍の目」の伝説に目をつけ、そこが、温泉の出口ではないかと見当をつけ、目的を隠して、この町に調査に来ていたのだった。

 

沼から温泉が出ることを確信した進一は、ついに、表の顔を出し、温泉とホテルの開発を、町に申し出る。

さて、沼を守るため、そして、進一に騙された妹のため、輝彦は、どうするのか。

 

この物語。

 

古くから、その土地にある「信仰」の対象と、その土地の「開発」の話ですよね。

 

住民の信仰を集める場所を、観光、その他、産業のために、開発をしても良いのかどうか。

 

昔、何かで、イタコで有名な、青森の「恐山」に、大きな金の鉱脈があるのではないかという話を、どこかで読んだ記憶があります。

もし、恐山で金を掘れば、多くの金が取れるのではないかと。

 

この話、本当なのでしょうかね。

 

実際に、恐山を調査した訳ではないのでしょうから、眉唾かも。