柳田国男の「日本の昔話」という本。

とても、面白く、興味深い。

 

 

日本全国から集められた昔話が、まとめられているようです。

最初に、この本が出版されたのが、昭和5年だそうですね。

恐らく、その頃には、まだ、その土地、その土地で、こういった昔話を語り継ぐ人が居たのではないでしょうか。

 

その中に、興味深い話が、一つ。

それは、「海の水はなぜ辛い」というもの。

 

海の水が塩辛いというのは、誰もが知っている事実ですが、昔の人は、なぜ、海の水が、川や池などと違って、塩辛いのか。

疑問を持ったのではないですかね。

そして、こういう物語を作ったのだろうと思います。

 

昔々、金持ちの兄と、貧乏な弟が居た。

金持ちの兄は、ケチで、悪い人。

貧乏な弟は、善人というのは、昔話の定番でしょう。

 

弟は、正月の準備のため、兄に、お米を借りに行くが、ケチな兄は、酷いことを言って、貸してくれない。

その帰り道、弟は、不思議な爺さんに出会い、ある話を聞く。

弟は、そのお爺さんの言う通りにしてみたところ、小人に出会い、その小人から、何でも出て来る石の挽き臼を貰った。

臼は、右に回すと、何でも、欲しい物が出て来る。

そして、左に回すと、出るのが止まるということ。

弟は、その臼を持って家に帰り、米や鮭、その他、様々な物を、臼から出し、十分な正月を迎えることが出来た。

 

突然、金持ちになった弟を不思議に思い、兄が家にやって来る。

そして、弟が、臼を回して物を出すところを、こっそりと覗き見た兄は、その石の挽き臼を盗み出す。

兄は、浜に出ると、そこに小舟があったのを幸いに、島に渡って、一人で金持ちになろうと考える。

 

兄は、弟の家から盗み出した石の挽き臼と、一緒に盗んで来た餅やお菓子を小舟に積んで、海にこぎ出した。

兄は、小舟に乗って、海に出る。

餅やお菓子といった甘い物はあるのだが、何か、塩気のものが欲しいと思った兄は、小舟の上で、臼を回して、塩を出す。

しかし、兄は、臼から物が出るのを止める方法を知らなかった。

 

臼が、どんどん、塩を出すので、小舟は、塩で一杯になり、その重さで、海の中に、兄と一緒に、沈んでしまった。

そして、海の中に沈んだ臼は、延々と、塩を出し続ける。

だから、海の水は、塩辛くなってしまった。

と、言うこと。

 

面白いですよね。

誰が、このような話を考えたのでしょう。

 

テレビやラジオはもちろん、本なんかも、一般の人たちには手に入りにくかった時代。

親や、祖父母が、子供や孫たちに、代々、語り継いでいた物語が、その土地、その土地にあったのだろうと思います。

 

しかし、今となっては、もはや、そういうものは無くなってしまっているでしょう。

誰にも知られることなく、消滅してしまった物語も、多いものと思います。

こうやって、残されているのは、ごく一部ではないでしょうかね。