三角関数は、三角形に関するものですが、その中の「サイン」「コサイン」を、平面座標に移し替えると、面白いことが分かります。
まず、「サイン」の角度を、横軸に、その計算数値を縦軸に書きます。
すると、このようなグラフになります。
0から始まる、「波」になっているのが分かりますよね。
これが「サイン波」です。
同様に、「コサイン」を、座標に表します。
こちらが「コサイン波」です。
こちらは、1から始まる「波」になっていることが分かります。
さて、「三角関数」が、三角形に関するものであるということを離れて、座標に表示をすると「波」として現れる。
この事実から、ジョセフ・フーリエ(1768~1830)という人物が、とても重要なことを発見しました。
それは、「どのような関数でも、サインとコサインを無限に足し合わせた式で表すことが出来る」ということ。
つまり、あらゆる「関数」は、「サイン」と「コサイン」で成り立っているということの発見です。
この「サイン」と「コサイン」を無限に足し合わせた式を「フーリエ級数」と呼びます。
ちなみに、この「ジョゼフ・フーリエ」という人物。
あのナポレオンのエジプト遠征に同行をした学者の一人で、その時に発見された「ロゼッタストーン」の写しを、フランスに帰国後、少年のシャンポリオンに見せます。
この「シャンポリオン」は、それから、エジプトの象形文字に興味を持ち、20年後、その解読に成功することになります。
さて、フーリエが発見した「どのような関数でも、サインとコサインを無限に足し合わせた式で表すことが出来る」という性質は、言いかければ、「どのような複雑な波形でも、多くの単純な波形の組み合わせから成り立っている」ということを示しています。
例えば、人間の「声」は、空気の振動、つまり、空気の「波」によって成り立っています。
つまり、人間の声は、グラフに「波」として表すことが出来るということ。
これは、「声」の「波」、つまり「周波数」を、グラフにしたもの。
具体的には、人間の発する「こんにちは」という声は、複雑な空気の振動(波)から成り立っています。
この「こんにちは」という複雑な声の中に、どの周波数のサイン波、コサイン波が、どれだけ含まれているのか、これを計算すれば、単純なサイン波、コサイン波の集まりに変換することが出来ます。
この「複雑な波」を、いくつもの「サイン波」「コサイン波」に分けるという作業は、サイン(sin)、コサイン(cos)の前に付く数、つまり「フーリエ級数」を求めるということ。
この「フーリエ級数」を求めることを「フーリエ変換」と呼びます。
オーディオには、このような表示がありますよね。
この「音」と一緒に、上下をする棒グラフのようなものは、「音」を、「フーリエ変換」で、単純なサイン波、コサイン波に分解し、その周波数を表示したものです。
つまり、オーディオのスピーカーは、単純なサイン波、コサイン波のデーターを組み合わせて複雑な波に変換し、一つの「音」を発信しているということ。
その様子を表示しているのが、上の写真です。
この「フーリエ変換」は、「波」で表すことが可能な、全てのものに応用することが可能です。
例えば、AIの「音声認識」や、ボーカロイドの「音声合成」。
画像を、濃淡の「波」と認識することで、データーの圧縮、画像認識、画像生成にも、この「フーリエ変換」が応用されています。
デジタル信号の処理もまた「フーリエ変換」によって、成り立っています。
医療現場では、心電図や、脳波の解析など。
天文学では、電波望遠鏡。
地震波の解析。
その他、社会で生活をおくる中で、まさに、ありとあらゆるところに、「三角関数」から発見された「フーリエ変換」が使われている。
この「フーリエ変換」が無ければ、今の社会は、成り立っていないということ。
「三角関数は、日常生活に必要ない」という考えが、いかに、無知から来ているものかが、よく分かります。
ちなみに、テレビやラジオが、なぜ、数多く飛んでいる複雑な電波の中から、特定の周波数を受け取り、映像や音声を受け取ることが出来るのか。
これもまた、「フーリエ変換」の賜物です。
この「フーリエ変換」によって、「波」の特長を調べることを「フーリエ解析」と呼びます。
テレビ局、ラジオ局の発する電波を、この「フーリエ解析」によって、特定の周波数の電波に絞り込む。
そして、絞り込まれた音声、映像の信号の波をキャッチして、それを、スピーカーからの音や、画面の映像に変換し直して送り出す。
これによって、私たちは、テレビを見て、ラジオを聞くことが出来る訳です。
これは、今、誰もが使っている携帯電話や、無線LAN、Wi-Fiも、また、同じです。
まさに、現代社会こそ、日常生活に、「三角関数」は、必要不可欠だということです。