「南総里見八犬伝」の前半とも言える、八犬士の誕生から、里見家に仕えるまでを、簡単に、まとめてみました。
上の本自体が、長大な「南総里見八犬士」の、ごく一部。
そして、以下の粗筋は、更に、その、ごく一部。
書かれていること以外にも、様々な物語が、「南総里見八犬士」には、含まれていることでしょう。
室町時代の中頃、関東の管領、足利持氏は、将軍、足利義教と執権の上杉憲実に攻められて、自害。その後、足利持氏の遺児を立てて、結城氏朝、里見季基らが、結城城に立てこもる。しかし、この結城合戦で、里見季基は戦死。季基の嫡男、里見義実は、城を脱出し、安房国に逃げ延びる。
その頃、安房国では、神余光弘が、逆臣の山下定包に殺され、光弘の妻、玉梓は、以前から密通していた定包の妻となっていた。
里見義実は、仲間たちと協力し、山下定包を攻め滅ぼす。義実は、金椀孝吉の助言を受け、玉梓を処刑することにするが、玉梓は、処刑される直前、「金椀の子孫を絶やし、里見の子孫を犬にしてやる」と、叫んだ。
里見義実は、一男一女をもうけるが、娘の伏姫は、三歳になっても喋ることが出来なかった。母が、州崎明神に祈願をすると、ある日、役行者の化身が現れ、伏姫に、仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌の、八つの文字が入った数珠を与える。それから、伏姫は、順調に成長するようになった。
長禄元年(1457)、里見領は凶作で、義実は、金椀大輔を使者にして、安西景連の元に派遣をするが、抑留されてしまう。安西景連は、この機会に、里見領を攻め取ろうと、義実の城に大軍で押し寄せる。
絶体絶命に陥った義実は、可愛がっていた八房という犬に、「敵将、安西景連を殺せば、何でもやるぞ」と、苦し紛れの冗談を言う。「魚か、肉か。それとも、役職か領地か。それとも、伏姫と結婚するか」
すると、城を飛び出した八房は、何と、敵将の安西景連の首を咥えて、戻って来た。八房は、伏姫が欲しいという素振りを見せる。義実は、当然、それを認めないが、伏姫は、「約束は、果たさなければ駄目です」と、父、義実を諫める。
伏姫と八房は、富山の山中で、二人で暮らすことになった。母は、心配のあまり、病に倒れ、義実は、一年後、夢に導かれて、富山に向かう。
同じ頃、安西への使者に失敗した金椀大輔は、故郷で親戚の家に身を寄せていたが、八房と伏姫の噂を聞き、八房を殺害し、伏姫を奪い返して手柄にしようと、鉄砲を持って、富山に向かう。
そして、富山の中で八房と暮らしていた伏姫は、お腹が膨らみ始めていた。そして、泉に写った自分の顔を見ると、頭が犬に変わっている。
金椀大輔は、八房を狙って、鉄砲を撃った。弾丸は、八房に命中したが、同時に、伏姫にも当たってしまった。八房は、殺したものの、伏姫に重傷を負わせてしまった大輔は、切腹をしようとするが、そこに到着をした義実に止められる。
義実は、怪我をした伏姫を連れて返ろうとするが、お腹の大きくなっていた伏姫は、それを拒否する。伏姫は、決して、八房と接触をした訳ではないと弁明した。お腹の中に居るのが子供ではないと証明するため、伏姫は、守り刀で、自分の腹を斬る。
すると、伏姫のお腹の中から、白い「気」が立ち上り、首にかけていた数珠が切れて、仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌、の八つの珠が空に舞い上がり、他の百個の珠は、地面に落ちる。
八つの珠は、光り輝き、八方に飛び散って、消えた。伏姫は、そのまま、息を引き取った。
金椀大輔は、出家をして「丶大」(ちゅだい)と名を改める。伏姫の首から落ちた百個の珠は、また数珠にして丶大が持ち、飛び散った八つの珠を探す旅に出る。
さて、今から十年前、大塚万作という浪人が居た。番作の父は、足利持氏が敗れた時に、討ち死にをし、番作は、その父から「村雨丸」という宝刀を受け継いでいた。
番作もまた傷を負い、武蔵国の故郷に帰れないでいた間に、大塚家の領地は、腹違いの姉、亀篠と、その夫、蟇六に奪われていた。
番作は、故郷に戻ると、名を犬塚と改め、妻の手束との間に、子供をもうける。犬塚信乃である。信乃は、兄、三人が夭折したため、女の子として育てられる。信乃は、武芸に優れ、一緒に成長した犬は、四つの足が白かったので与四郎と名付けられた。
蟇六は、村雨丸を奪おうとするが、番作は、自害をして、それを阻止する。信乃は、父を失ったことで、自分も死ぬ覚悟をし、まず、犬の与四郎を斬った。すると、斬った与四郎の首から血が噴き出し、その中から白く光る物が飛び出した。信乃が、それを手にすると、「孝」の字の入った珠だった。
そして、自害をしようとすると、左の腕に、牡丹の形をした痣があるのに気がつく。
蟇六、亀篠の夫婦は、信乃の自害を引き留め、成長をした後には、養女の浜路と結婚をさせ、家を継がせることを約束する。それは、村雨丸を奪うための嘘だと気がついていた信乃だが、しばらくは、蟇六、亀篠の元で、生活をすることにする。
蟇六の家には、額蔵という下男が居た。信乃は、次第に、その額蔵と親しくなる。
ある日、信乃の腕の牡丹の痣を見た額蔵は、自分にも、背中に、似たような痣があると信乃に話した。そして、信乃の持つ「孝」の珠を見て、自分もまた、「義」の珠を持っていると、信乃に見せる。額蔵は、本名を犬川荘助と言った。
信乃と額蔵は、義兄弟となった。
陣代の宮六が、下役の五倍二と共に、蟇六の家に来る。宮六は、浜路に惚れ、蟇六に金を渡し、婚約を迫る。蟇六夫婦は、信乃を追い出すため、ある計画を練る。
村雨丸を許我に居る足利成氏に献上するように信乃に勧める。その前日、蟇六は、左母二郎と共に、漁に出かけるが、そこで、偶然を装って、信乃と一緒に船に乗る。そこで、蟇六が、わざと船から落ちておぼれ、信乃が、それを助けようと船から飛び込んだ時、左母二郎が、村雨丸を、他の刀とすり替えた。しかし、悪人の左母二郎は、更に、刀をすり替え、蟇六には、偽の刀を渡し、本物の村雨丸は、自分の手元に残した。
一方、額蔵は、亀篠から、旅に出た信乃を殺すことを命じられるが、額蔵は、信乃に、そのことを伝え、殺害に失敗したとして、帰途につく。
宮六と、浜路の結婚の日が近づく。左母二郎は、浜路をさらい、村雨丸と共に、姿を消す。
左母二郎は、浜路に結婚を迫る。しかし、浜路は、それを拒否して、左母二郎に斬りかかるが、逆に、斬られてしまう。左母二郎は、浜路にとどめを刺そうとしたが、その時、一人の行者が、手裏剣を投げて、それを防ぎ、左母二郎を斬り殺した。そこに、偶然、通りかかった額蔵は、成り行きを見つめる。
行者は、浜路に向かい、自分は、腹違いの兄だと話す。名前は、犬山道節。道節は、父の敵を追って、旅をしている。浜路は、村雨丸を信乃に届けるように頼むが、敵討ちが先だと、道節は、断る。浜路は、絶望をして亡くなった。
話を聞いた額蔵は、村雨丸を奪い返そうと、道節に戦いを挑む。激戦の中で、額蔵が身に付けていた珠の入った小袋がちぎれ、道節の身体についた。また、額蔵が、道節の肩にあった瘤を斬ると、そこから、血と一緒に、何かが飛び出し、額蔵の胸に当たった。額蔵は、それを手にする。
道節は、火遁の術で、姿を消した。額蔵が手にしたのは、「忠」の字の入った珠だった。
蟇六夫婦は、左母二郎と浜路を追わせたが、見つからない。宮六は、五倍二と共に、浜路と結婚をするつもりで、家に来る。しかし、浜路が居ないので、激怒する。蟇六は、村雨丸を差し出して、宮六をなだめようとするが、その村雨丸は偽物だった。宮六は、更に怒って、蟇六、亀篠を斬殺。そこに、犬川荘助(額蔵)が、戻って来た。
荘助は、宮六、五倍二と戦い、宮六は殺すが、五倍二には、逃げられる。荘助は、五倍二の嘘によって、蟇六、亀篠を殺した犯人とされ、浜路と左母二郎の殺害の疑惑もかけられる。
許我についた犬塚信乃は、足利成氏に村雨丸を献上しようとするが、その村雨丸が偽物であることを直前に知る。信乃は、必ず、本物を持って来ると言うが、執権の在村によって間諜と決めつけられ、成氏も、信乃の殺害を命じる。
信乃は、成氏の手勢を相手に、芳流閣という三階建ての建物で戦うことになった。しかし、成氏の手勢は、誰も、信乃に敵わない。
在村は、今、牢屋の中に居る犬飼見八を戦わせてはどうかと進言する。牢屋を出た見八は、芳流閣で、信乃と戦うが、勝負がつかない。そのうちに、信乃と見八は、芳流閣から、落下し、転がりながら、川に浮かんでいた船の中に落ちた。船を岸に繋いでいた綱が切れ、二人は、船に乗ったまま、川に流される。
信乃と見八は、気を失ったまま、流されるが、下総国の行徳で、旅館を経営する文五兵衛という人物に発見された。文五兵衛は、犬飼見八の知り合いだった。文五兵衛の子、小文吾と、見八は、乳兄弟であり、義兄弟の間柄。文五兵衛は、意識を取り戻した信乃から、これまでの顛末を聞く。
信乃は、見八の顔に、牡丹の痣があるのに気がついた。信乃は、故郷の大塚で、農民の糠助から聞いた話を思い出す。見八は、糠助が、幼い頃に別れたという子供が、見八であるということに気がつく。そして、見八も、目を覚ます。
見八は、元々、足利成氏の家臣、見兵衛を養父として育てられ、見兵衛が亡くなった後、獄舎長の役目を務めていた。しかし、在村が、罪の無い人々を獄に入れるのに耐えられず、辞任を申し出たところ、逆に捕らえられ、牢屋に入れられたのだった。
糠助の話では、見八の生まれた七日後、鯛を料理したときに、その腹の中から「信」の字を持つ球が出て来たということ。その珠を、守り袋に入れ、見八に持たせていたということで、信乃が尋ねると、見八は、その珠を持っていた。信乃と見八は、義兄弟となる。
文五兵衛は、信乃と見八の話を聞き、驚いた。実は、文五兵衛の子、小文吾もまた「悌」の字の珠を持っていた。この「悌」の珠は、小文吾が幼い頃、お食い初めの祝いの茶碗の赤飯の中から出て来たもの。そして、尻に牡丹の痣がある。
信乃と見八は、文五兵衛の旅館にかくまわれ、小文吾とも会った。見八は、現八と改名する。しかし、信乃の傷が悪化し、破傷風になってしまう。現八は、その薬を買うために武蔵国に出かける。
成氏の家臣、帆太夫は、信乃が、文五兵衛の旅館に居ることを突き止める。帆太夫は、文五兵衛を人質に、小文吾に、信乃の首を差し出すように伝える。
小文吾の妹、沼依と、その夫、林房八は、自らを犠牲に、信乃を助けることにする。沼依と房八は、わざと、小文吾に討たれ、房八は、自分の首を、帆太夫に差し出すことを提案。そして、沼依と房八の血で、信乃の傷を洗うと、破傷風も回復する。
この時、その旅館には、八つの珠を探して全国行脚をしている、丶大法師と、伏姫に仕えていた蜑先照文の二人の修験者が泊まっていた。
丶大法師と照文は、信乃と小文吾に珠の由来を聞かれ、伏姫の最期を、二人に話す。
そして、沼依と房八の子その子、大八は、生まれた時から、左の手を開いたことがなかったのですが、その時、左の手から「仁」の珠がこぼれ落ちた。そして、脇には、牡丹の痣があった。大八は、祖父の名だった犬江を名乗ることにして、犬江親兵衛と名付けられる。
丶大と照文は、信乃、小文吾、親兵衛の三人に、里見家に仕えることを要請するが、まだ、八人が揃わないということで辞退する。そして、信乃と現八と小文吾は、荘助に会うため、大塚に向かう。
親兵衛は、祖母の妙真の元に残るが、悪人の舵九郎にさらわれそうになったところ、突然の暴風に巻き込まれ、行方不明になってしまう。
信乃と小文吾の二人は、額蔵(荘助)が、五倍二の嘘によって、牢に入れられていることを知る。
そして、いよいよ処刑の日、荘助は、庚申塚に引き出され、多くの見物人の前で、木に吊り下げられる。
そこに、信乃、現八、小文吾が現れ、荘助を助け出す。
信乃、現八、小文吾、荘助の四犬士は、大塚の陣代、丁足町進の手勢に追われ、泰平の助けにより、上野国の荒芽山に逃れることにする。額蔵は、ここで、本名の荘助を名乗ることにする。
犬山道節は、主君の敵である管領である扇谷定正を討つために、上野国に入る。村雨丸を献上するという名目で、定正に近づき、首を討つが、それは偽物だった。
道節は、定正の家来たちを相手に戦うが、そこに四犬士が現れ、道節の味方と誤解をした定正の家臣によって襲われる。その戦いの中、荘助は、他の犬士たちとはぐれてしまう。
泰平は、かつて、道節の父に仕えていた。妻の音音は、道節の乳母でもあった。荘助と道節は、泰平の居る荒芽山に来て、二人は互いに自分の生い立ちを話し、以前、円塚山の戦いで、入れ替わった珠を、本来の持ち主に戻す。
この荒芽山に、五人の犬士が集まるが、定正の軍に攻められ、何とか、脱出。その時、小文吾が、他の四人とはぐれてしまう。
小文吾は、武蔵国で、並四郎という人物を助けることになるが、その妻、船虫に騙され、千葉家に追われることになりますが、難を逃れる。小文吾は、千葉家の乗っ取りを企む家老の馬加常武によって拘束され、そこで、常武のこれまでの悪事を知る。
その時、女田楽師の一向が、馬加家を訪れる。その中でも、特に、美しい女性、旦開野という人物と、小文吾は知り合う。
そして、常武の息子の誕生日を祝う宴会の席で、旦開野は、常武の首を討った。旦開野という女性は、実は、犬坂毛野という男性で、父と兄を、常武に殺され、敵討ちの時期を待っていたのだった。
小文吾と毛野は、馬加の家から逃れるが、隅田川で別々の船に乗り、はぐれてしまう。
小文吾は、毛野を探して、各地を歩く。
また、荒芽山の戦いで、犬士たちとはぐれた現八も、犬士たちを探して、各地を歩く。
現八は、上野国の庚申山で、妖怪に出会い、その妖怪の目を矢で射て、撃退。更に、庚申山に分け入ると、赤岩一角という人物の幽霊が出現し、その妖怪は化け猫であること、そして、自分を殺した化け猫が、自分に化けて、妻に牙二郎という子供を産ませ、今は、その妻も亡くなり、船虫を後妻にしていることを話す。そして、子供の角太郎に、この真実を告げるように、現八に頼む。
現八が、角太郎の元を訪れ、話を聞くと、角太郎もまた、「礼」の字の珠を持つことを知る。しかし、その珠は、妻の雛依が、誤って、飲み込んでしまったということ。
そこに、化け猫の化けた一角と船虫の夫婦が訪れ、現八は、奥に隠れる。一角は、庚申山での現八との戦いで目を負傷していて、それを治すには、角太郎の妻、雛依の退治の肝が必要だと迫る。
雛依は、その話を聞き、親孝行のためだと、自ら、自分の腹に短刀を刺す。すると、そこから珠が飛び出し、一角の胸を貫いた。船虫と牙二郎は、怒って、角太郎に襲いかかる。現八は、角太郎を助けようと、奥から飛び出すが、角太郎は、継母、弟を守ろうと、現八と戦うことに。そこで、現八は、一角の幽霊から聞いた真実を角太郎に話す。真実を知った角太郎は、現八と共に、化け猫を倒す。
角太郎は、犬村大角と名前を改め、雛依を葬ると、現八と共に、犬士を探す度に出る。
四年前の荒芽山で犬士たちとはぐれてしまった犬塚信乃は、再び、犬士たちを会うために諸国を回り、今は、甲斐国の木工作の家に居た。木工作の養女の浜路は、信乃に好意を持つ。木工作は、淡雪奈四郎に殺害される。奈四郎は、木工作の後妻だった夏引と示し合わせて、信乃を木工作を殺した犯人に仕立て上げる。
夏引は、甲斐国の代官、甘利堯元を呼びに、躑躅崎に行く。しかし、間もなく、堯元が家に来て、信乃と浜路を捕まえて、連れて行った。
が、夏引が、家に帰って来て、下僕の出来介に、これから堯元様が、家に来ると伝える。それを聞いて、出来介は、驚いた。
出来介は、堯元が、すでに、家に来て、信乃と浜路を連れて行ったと夏引に伝える。そこに、堯元が、家に来る。
出来介は、事の経緯を、堯元に話した。堯元は、話を聞き、木工作の遺体を調べる。そして、堯元は、奈四郎と夏引の悪巧みを見破った。
実は、甘利堯元になりすまし、信乃と浜路を連れ去ったのは、犬山道節だった。道節と荘助、丶大法師、照文の四人は、指月院という寺に居て、夏引らの企みを知り、堯元になりすまし、信乃と浜路を救ったのだった。
実は、浜路は、14年前に、鷲にさらわれた里見義成の娘だった。照文は、浜路を安房の里見家に送ることにする。
一方、毛野を探していた小文吾は、伊豆から大島、三宅島、浪速、有馬、越後と旅を続ける。その越後で、目を患い、按摩に治療をしてもらうが、実は、その按摩は、小文吾を狙っていた船虫だった。しかし、小文吾を狙った船虫の計画は失敗し、庚申堂で拘束される。そこに、たまたま、犬川荘介が訪れ、船虫に騙されて、庚申堂から船虫を助け、船虫の家でもてなされる。そこで、荘介は、船虫と、夫の酒顛二が、小文吾を襲う計画をしていることを知る。荘介は、船虫に味方をするふりをして、一味に加わり、荘介の居る小千谷の石亀屋次団太の家に向かった。
石亀屋での戦いで、荘介と小文吾は、酒顛二らを討ち取る。
荘介と小文吾は、領主の執事、稲戸津衛由充に招かれるが、そこで、捕らわれてしまう。これは、領主である長尾景春の母、箙大刀自の意向だった。箙の二人の娘は、武蔵大塚の大石家と武蔵石浜の千葉家に嫁いでいて、大石家の家臣、五倍二や、千葉家の家臣、馬加大記の殺害に、犬士が関わっていると知っていたため。
しかし、稲戸津衛は、犬士の方に義があることを知っていたので、荘介と小文吾を逃がす。荘介と小文吾は、信濃国に向かった。
諏訪湖のほとりで、荘介と小文吾は、乞食に変装していた犬坂毛野と出会う。毛野は、馬加を討った後、もう一人の敵、籠山逸東太縁連を探していた。毛野は、自分の生まれた時に、「智」の珠が、母親のお腹に飛び込んだことを話す。
小文吾と荘介は、毛野と別れると、道節らの居る甲斐国の指月院に向かった。
犬村大角と犬飼現八は、他の犬士を探して、伊豆、駿河、遠江、三河、尾張、伊勢、美濃、近江、京都を巡る。そして、赤岩に戻り、雛依の三回忌を行った。
再び、出発をした大角と現八は、千住で、郷士の氷垣夏行に盗賊と間違えられ、土蔵に閉じ込められるが、夏行の娘、重戸によって助けられる。そして、千住で、偶然、信乃と道節に会い、本当の盗賊を捕まえる。
大角と現八は、甲斐国の指月院に向かう。道節は、扇谷定正を討つために、夏行の婿、落鮎有種の助力を得て、機会をうかがう。
犬坂毛野は、武蔵国湯島で、扇谷定正の夫人、蟹目上と、家臣の河鯉守如の知遇を得る。そして、二人から、扇谷定正の奸臣、竜山免太夫を討つように頼まれるが、その竜山が、毛野の探していた敵、籠山縁連だった。
荘介、現八、小文吾、大角の四犬士は、石和から穂北に向かう途中で、芝浜で、道節、信乃の二犬士と出会う。道節らは、翌朝、毛野が、縁連を討つことを知り、密かに、助太刀をし、同時に、扇谷定正を討とうと考えていた。
その日、朝、縁連は、多くの供と、五十子の城を出た。その一向が、鈴茂森に差し掛かったところで、毛野が、一向に襲いかかる。そして、毛野は、縁連を討ち取った。
この知らせを聞いた扇谷定正は、自ら軍を率いて、五十子城を出陣する。道節らは、落鮎有種の助けを得て、扇谷定正を追い詰めるが、逃げられてしまった。
信乃は、扇谷定正の居ない五十子城を占領する。信乃は、城にあった食糧や金銭を、領民に分け与えると、城を後にした。
信乃は、城の外で、道節、小文吾、荘介、現八、大角と合流。毛野を乗せた落鮎有種の船は、芝浦の沖で、五人の犬士を待つ。
道節ら、六人の犬士は、その船に乗り込んだ。そして、船は、穂北に向かう。
七人の犬士は、穂北の氷垣家の屋敷に入る。丶大は、法会のため、結城に出発をした。
数年前のこと。山賊の素藤は、館山の城主、如満を討ち取り、館山城の城主となっていた。そして、数年後、素藤は、里見家の浜路姫と結婚をしようと、里見義成の嫡男、義通を、館山城に閉じ込める。
里見義実は、娘の伏姫の墓参りのため、富山に入る。しかし、伏姫の住んでいた岩穴に近づいた時、突然、何者かに襲われた。襲ったのは、かつて、義実が滅ぼした家の家臣だった物たち。しかし、そこに、一人の少年が現れて、義実を救う。義実を救ったのは、犬江親兵衛だった。
犬江親兵衛は、六年前に神隠しに遭い、その後、富山で、伏姫の神霊によって養われていた。他の犬士たちの動向や、里見家の様子も、知らされていた。
親兵衛は、わずかな供と、館山城に乗り込み、素藤を捕まえ、義通を助け出す。
しかし、その後、素藤は、妙椿という妖術使いの尼と通じ、その力と謀略で、再び、館山城主に収まる。親兵衛は、再び、館山城に乗り込み、素藤を倒した。
文明15年4月16日、丶大法師は、結城の古前城で、法会を営む。七人の犬士も、それに参加。親兵衛もまた、参加をするつもりだったが、館山城の素藤の件で間に合わなかった。
法会の後、悪徳僧たちが、丶大法師や照文を襲うが、犬士たちが、それを防ぎ、丶大法師は、脱出。しかし、左右川で、丶大法師は、敵に追いつかれ、捕まりそうになったところを、遅れていた親兵衛が現れ、丶大法師を助ける。
そこに、七人の犬士たちが到着。八犬士は、ここに集結をした。
丶大法師と八犬士が、廃寺に居ると、結城の重臣が来て、領内での狼藉を詫びた。
丶大法師と八犬士は、安房国に向かう。
八犬士は、里見義実の滝田城に招かれ、歓待を受ける。
翌日は、里見義成の稲村城に招かれ、城主格で召し抱えられることになった。
以上、前半の粗筋です。
以下、里見家と、八犬士が、足利、扇谷、山内の連合軍と大合戦を行い、勝利をするまでの後半は、また、別の機会に。