未来から来たカメラのセールスマン、ヨドバは、ある骨董品店に入り「値ぶみカメラ」とうものを売ろうとしますが、店主に断られる。

しかし、家を出たところ、たまたま帰って来た、その骨董品店の店主の娘、竹子に呼び止められた。

 

 

竹子は、カメラマンをしているが、まだ、それで稼ぎが出ている訳ではない。

そのため、そのヨドバが持つ珍しいカメラに興味を持った。

こっそりと竹子の部屋に上げてもらったヨドバは「値ぶみカメラ」の説明をする。

 

この「値ぶみカメラ」は、写真に写したものの値段が分かるカメラ。

写真には、四つのボタンがあり、その写真に写っている物体の価値を表示することが出来る。

一つ目のボタンは、その物質を、単なる「物」として見た時に値段。

二つ目のボタンは、その物質の市場での価格。つまり、定価が表示される。

三つ目のボタンは、その物質が、生み出すであろう価値の値段。

四つ目のボタンは、……。

ここで、母親が、竹子の部屋にヨドバが居るのに気がつき、ヨドバは、慌てて、部屋を出て行く。

 

竹子には、恋人の宇達という男が居た。この宇達もまた、売れないカメラマン。

そして、竹子は、一方的に、ある男性に好意を寄せられていた。それは、倉金という裕福な青年実業家。

倉金は、積極的に、竹子にアプローチをして来る。母親は、倉金との結婚に大賛成。父親は、竹子が、意中の人と結婚をすれば良いと、考えている。

 

竹子は、宇達と倉金の二人は、「値ぶみカメラ」で撮影。

三つ目のボタンを押してみると、生涯、倉金の生み出す価値と、宇達の生み出す価値とでは、比べものにならないほど、倉金の方が、圧倒的に上。

しかし、竹子は、それでも、悩む。

 

そこに、ヨドバが現れ、四つ目のボタンの説明をする。

この四つ目のボタンは、撮影をした人にとって、撮られた物が、どれほどの価値があるのかを示すもの。

竹子は、その説明を聞いたが、ボタンを押す前に、宇達の方を選んだ。

そして、ヨドバが、宇達の写った写真の第四のボタンを押すと、そこには、表示しきれないほどの、高い数字が、表示をされたのだった。

 

さて、この「値ぶみカメラ」の四つのボタンですが、とても、面白いですよね。

 

まず、一つ目のボタンは、単なる「物質」としての価値を示すもの。

例えば、車を撮影すると、その車を形作っている金属やプラスチックなどの原料の値段ということになるのでしょう。

どのような製品でも、そうやって見ると、それほど、大きな価値があるものではないですよね。

もちろん、金や銀、宝石の原石などは、それだけでも、十分に、とんでもない価値がある訳ですが。

 

二つ目のボタンは、その物体が市場で売られる時の価格「定価」を示すもの。

例えば、車なら、その車の「定価」ということになる。

単なる「物質」としてのものから、様々な手が加えられることによって、「付加価値」が付けられる。

この「付加価値」を、如何にして、高く、付けることが出来るのかが、物を作る時の大きな条件、目標となるのでしょう。

 

三つ目のボタンは、その物体が、どれほどの利益を生み出すことが出来るのか。

例えば、自分が持っているパソコンを「値ぶみカメラ」で撮影をすると、自分が、そのパソコンを使って、どれほどの利益を生み出すことが出来るのかということが分かる。

仕事でパソコンを使っている人など、とても、関心があるところではないでしょうか。

 

そして、問題は、四つ目のボタンです。

これは、写された物体が、撮影をした人にとて、どれほどの価値があるのかを示すもの。

物語を読めば分かるのですが、「その物体が生み出す価値」が、必ずしも、「自分にとっての価値」と、一致、または、比例するものではない。

 

これは、なかなか、難しい問題ですよね。

 

客観的に見れば、竹子は、宇達と結婚をするよりも、倉金を結婚をする方が、幸せになることが出来るような気がする。

しかし、竹子自身にとって、価値があるのは、倉金ではなく、宇達の方。

こういうことは、恋愛、結婚では、よくあることなのかも。

 

また、視点を変えれば、「仕事」というものも、そうなのではないでしょうかね。

たくさん、お金を稼ぐことが出来る仕事が、必ずしも、自分にとって価値のある仕事ではないのかも知れない。

もしかしたら、自分のやりたい仕事や、自分の好きな仕事ではなく、自分がやりたくないと思っている仕事が、自分にとって、本当に価値のある仕事なのかも知れない。

もっとも、そういうことは客観的に判断することは出来ないので、考えるだけ、無駄なことなのかも知れませんが。