「南総里見八犬伝」の粗筋をまとめようと思ったのですが、かなり、難儀なことになりそうなので、まずは、概略から。
この「南総里見八犬伝」は、安房国の里見家と、「八犬士」と呼ばれる八人の男の物語です。
「八犬士」とは、犬塚信乃(孝)、犬川荘助(義)、犬山道節(忠)、犬飼現八(信)、犬田小文吾(悌)、犬江親兵衛(仁)、犬坂毛野(智)、犬村大角(礼)の八人。
さて、なぜ「八犬士」が、この世に誕生することになるのか。
それは、玉梓という女性の、里見家への呪いです。
結城合戦に敗れ、安房国に入った里見義実は、山下定包という人物を討つことになるのですが、その妻だった女性が玉梓です。
山下定包は、主君を討った逆臣で、玉梓は、その主君の妻でありながら、定包と密通をしていた悪女。定包が主君を討った後は、定包の妻となっていた。
里見義実は、山下定包を討った時に、玉梓も処刑をする。その時に、死の直前、玉梓が、里見家に呪いをかけた。
玉梓に呪いをかけられたのは、里見義実の娘の伏姫です。伏姫は、成長をしても喋ることが出来なかった。その後、伏姫は、役小角の力によって喋ることが出来るようになりますが、もう一つの呪いが、里見義実の愛犬、八房にもかけられていた。
そして、里見義実は、敵に攻められ、窮地に陥る訳ですが、その時、八房に「敵の首を取ってくれば、伏姫と結婚をさせてやる」と、苦難の中で、冗談を言ってしまう。
そして、八房は、敵の大将の首を取って、戻って来る。
約束を守るため、伏姫は、八房の妻となり、山の中で暮らすことに。
そして、八房の「気」が、伏姫の腹の中に宿る。
伏姫は、八房の子を宿した訳ではないことを証明するため、自ら、腹を斬る。すると、そこから「気」が立ち上り、首にかけていた役小角から貰った数珠がバラバラになって下に落ち、その中の八つの珠が、空に舞い上がり、八方に飛び散った。
この珠には、「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の文字が、一つずつ入っている。
この珠を、生まれた時に、身に付けることになるのが、八人の犬士たち。
もちろん、それぞれの犬士たちは、離れた場所で、それぞれに生まれ、互いのことを知りません。当然、自分が「犬士」だということも知らない。
犬士たち、それぞれの成長と、旅立ち、出会いと、別れ。
それぞれの人生を歩みながら、自分の事情を知り、相手のことも知り、里見家との関わりも知ることになる。
八犬士たちは、長い旅を続けながら、それぞれの目的を果たすために自分の人生を進んで行く。出会ったと思ったら、別れ、別れたと思ったら、出会う。彼らは、その旅の中で、様々な敵と戦うことになる。
それが、「南総里見八犬伝」の前半の物語となります。
そして、八犬士たちは、運命に導かれて、安房里見家に仕えることになる。
八犬士たちは、里見家に迫る扇谷定正、山内顕定、足利成氏の連合軍を相手に、里見軍を率いて戦い、里見軍を大勝利に導く。
これが、「南総里見八犬伝」の後半の物語。
八犬士の活躍で、関東は、平和になる。
そして、エピローグ。
八犬士たちは、里見家の姫と結婚をし、それぞれ、子供が生まれ、八犬士たちは引退。
しかし、里見家には、また、戦乱の兆候が見え始める。
その戦乱の兆しの中で、年老いた八人の犬士たちは、山の中で、姿を消すことになる。
時代的には、里見義実、義成、義通の三代の時代となります。
一応、歴史を踏まえているものの、もちろん、正しい歴史考証が行われ、史実がメインになっているという訳ではなく、かなりの部分が、フィクションです。
エピローグで、戦乱の兆しが見えるというのは、里見義通の時代。
以前、里見家の歴史を紹介した時に書きましたが、この里見義通の死後、後を継いだ里見義豊は、傍流の里見義尭に、里見家の家督を奪い取られることになる。
この時、八犬士は、居ないんですよね。
もし、八犬士が居たら、馬琴は、どういう物語にしたでしょうね。