藤子F不二雄の漫画「バケルくん」。
久しぶりに、読み直してみました。
主人公は、「須方カワル」という男の子。
ある日、近所にある「お化け屋敷」として有名な、大きな洋館に入ったところ、そこで、不思議な光景を目撃する。
その屋敷に居たのは、宇宙人で、宇宙人は、その鼻を押すと身体が入れ替わる不思議な人形を持っていた。
宇宙人は、「もう、地球での仕事は終わったから」と言い、不思議な人形をカワルに残して、宇宙に帰って行く。
カワルは、その不思議な人形を手に入れたことによって、別人に自由に入れ替わる、特別な日常生活を始めることになる。
さて、意外なことに、この「バケルくん」は、人気が無かった訳ではないようですが、なぜか、テレビアニメになっていないんですよね。
何か、理由があるのでしょうか。
そして、この「バケルくん」は、てんとう虫コミックス「ドラえもん」の第9巻に、「ぼく桃太郎のなんなのさ」という作品が掲載されていて、その中に「バケルくん」が登場するので、知っている人は、多いのかも知れない。
なぜ、「ドラえもん」の作品の中に「バケルくん」が登場するのか。
子供の頃から、ずっと、不思議に思っていました。
以前、「ドラえもん」のトリビア的知識を紹介するYouTubeチャンネルを見ていると、その謎の答えがありました。
元々、「ドラえもん」は、一度、連載を終了することが正式に決まっていたそうです。
てんとう虫コミックス「ドラえもん」は、第6巻の最後に「さようならドラえもん」という最終回のような一話が収録をされていますが、これは、小学館学年誌での連載が終了するにあたり、てんとう虫コミックス「ドラえもん」もまた、この全6巻で、終了をすることが決まっていたそう。
ちなみに、この全6巻は、藤子F不二雄さんが選んだ「傑作選」のようなもの。
そして、「ドラえもん」の連載を終了するにあたり、新しい漫画を連載することも決まっていたそうで、それが「バケルくん」ということになる。
しかし、どうしても「ドラえもん」を描き続けたいと思った藤子F不二雄さんは、「新連載も始めるから、『ドラえもん』を続けさせてくれ」と頼んだそうで、出版社側も、それを了承したそうです。
そして、「小学四年」で、「ドラえもん」と「バケルくん」の二作品が、一緒に連載されることになり、ついでに「ドラとバケルともう一つ」というコラボ企画も始まったそうで、「ドラえもん」と「バケルくん」が一緒に登場する「ぼく桃太郎のなんなのさ」という作品は、そのコラボ企画の一つだったそうです。
また、同じ「ドラえもん」の第9巻に収録されている「ジ~ンと感動する話」という作品もまた、「ドラえもん」と「バケルくん」のコラボ作品だったそうですが、コミックスに収録される時に、大幅な描き直しが行われ「ドラえもん」の単独作品になっている。(ちなみに、あるコマの群衆の中に、バケルくんが残っているのと、バケルくんの犬もまた、一コマの中に登場する)
さて、この「バケルくん」は、カワルが、人形と入れ替わる訳で、それは、カワルでなくても、他の人でも、人形の鼻を押すと、身体が入れ替わることになる。
身体が入れ替わるということは、逆に言えば、「心」が入れ替わることでもある。
この、「人の心が入れ替わる」という話は、様々な物語で見かけるもので、大人になってから、改めて読んでみると、色々と、考えさせられることも。
その中から、一つ。
カワルは、野球が大好き。しかし、カワルは、野球が、とても下手で、試合に出してもらえない。
そこで、カワルは、監督の「ゴン太」と心を入れ替え、自分が監督になって、カワルを試合に出場させることにした。
チームメイトの反対を押し切って、ゴン太(カワル)は、カワル(ゴン太)を試合に出場させる。
しかし、カワル(ゴン太)は、試合でヘマばかり。打席に立っても三振ばかりで、守備では、エラーを繰り返す。
それを見ていたゴン太(カワル)は、ついに「やめちまえ!」と、カワル(ゴン太)を、思わず、怒鳴ってしまうことに。
元に戻ったカワルは、自分の考え、態度を、大きく反省する。
「やはり、試合に出るなら、それだけの実力をつけないとな」
と、練習に打ち込むことに。
そして、今回、読み直して、気になる話も、一つ。
ある日、カワルの住む町に「なぐり屋」を名乗る男が現れる。
「金をくれれば、誰でも、自分が殴ってやる」
と、男は、カワルたちに言う。
そして、一人が、その「なぐり屋」に殴られたことから、みんなが、疑心暗鬼に。
誰が、自分を殴れと依頼をしたのか。
あいつか、それとも、あいつか。
みんなが、疑心暗鬼になり、「なぐり屋」に、人を殴ることを依頼する。
なんとかしなければ、と、カワルは、バケル一家に変身。
バケル一家で、家族会議をする。
数多くある人形の中で、「なぐり屋」よりも強い人に変身をし、「なぐり屋」をやっつけてしまうのは簡単。しかし、それでは、また、他の町に行って、同じことを繰り返すだろう。
バケルの姉、ユメ代のアイデアで、ある事を、決行することを決める。
ユメ代は、「なぐり屋」を探し、バケルを殴ることを依頼。
「今夜は、一人で家に居るので、念入りに、殴って欲しい」
と、頼む。
「なぐり屋」は、その夜、バケルの居る屋敷を訪れ、部屋に一人で居るバケルを見つけると、一発、殴った。
すると、バケルの身体が、バラバラになってはじけ飛ぶ。
驚いた「なぐり屋」は、「まさか、こんな。殺すつもりなんか、無かったのに」と、気を失ってしまった。
自分が人を殴ることで、その人を殺してしまったと思わせる作戦。
こうすれば、「なぐり屋」は、人を殴ることを止めるだろうというユメ代の考えだった。
なかなか、上手い話ですよね。
力で、無法者を倒すことは簡単。
でも、心から、改心させないと意味がないということ。
子供に、これは、なかなか、理解できないかも。