昨日、テレビを見ていると、ニュース速報が流れ、驚きました。

ロシアの哨戒機に対して、スクランブルをした自衛隊の戦闘機が「フレア」を発射して、警告したというもの。

この「フレア」を発射して警告をしたというのは、1958年に、対領空侵犯措置を始めてから、初めてだということ。

ちなみに、1987年に、当時のソ連軍機が、沖縄で領空侵犯をした時に、「信号弾」を発射して、警告をしたことがあるそうです。

 

今回は、北海道、礼文島の北方の空域で、ロシア軍機は、三度に渡り、竜宮侵犯をしたということのようです。

当然、その間、何度も、無線で警告をしている。

しかし、ロシア軍機が、指示に従わないようなので、三回目の領空侵犯の時に、「フレア」を発射し、警告をしたということ。

これは、最後通告ということになるのでしょう。

それでも従わない時には、「撃墜」という最悪の事態に至る可能性もある。

 

さて、そもそも、「フレア」とは、何か。

 

この「フレア」とは、「赤外線センサー」を使って、迫ってくる敵の兵器を欺瞞する装置のことです。

飛行機は、飛行をしている時に、ジェットエンジンから「熱」を発している訳で、その飛行機を攻撃する時、その飛行機の発する熱を追いかけて、敵に迫る「赤外線ホーミング誘導ミサイル」という武器が使用されます。

この「赤外線ホーミング誘導ミサイル」をかわすために、飛行機は、別の熱源である「フレア」を発射し、ミサイルを、そちらに誘導し、自機を守ります。

 

フレアを発射する戦闘機です。

 

ちなみに、ミサイルには「熱源」ではなく、「電波」を発して、敵を追跡するミサイルもある訳で、そちらに対しては、この電波を攪乱するために「チャフ」と呼ばれるものを発射し、自機を守ります。

 

さて、領空侵犯に対して、この「フレア」の発射でも、相手が言うことを聞かない場合には、「バルカン砲」による警告射撃ということになるのでしょう。

 

この「バルカン砲」という兵器。

よく考えれば、奇妙な兵器です。

 

第二次世界大戦で活躍をした戦闘機には、「機関砲」が搭載されていました。

 

こちら、翼から突き出る機関砲。

 

翼の中には、このような機関砲が搭載されています。

 

第二次世界大戦では、戦闘機は、敵機の後ろにつき、この機関砲を撃って、敵機を撃墜することになる。

しかし、第二次世界大戦後、ジェット戦闘機が主流になって来ると、機体の防弾装備の充実や、機体の速度が、格段に速くなったことで、この「機関砲」では、敵機を撃墜することが出来なくなってしまいます。

 

そこで、何とか、破壊力の大きい弾丸を、高速で連射できないかと考える訳ですが、そこで、再び、注目されることになったのが、過去の遺物となっていた「ガトリング砲」です。

 

 

「ガトリング砲」は、上の写真のように、複数の銃身を回転させ、次々と、弾丸を込め、発射することが出来る。

これを、戦闘機の機銃として使おうと考えました。

 

そして、生まれたのが、航空機用ガトリング砲である「M61」と言う機関砲です。

この「M61」は、ギリシャ神話の「火の神」にちなんで「バルカン」と名付けられます。

「バルカン砲」の誕生です。

 

しかし、朝鮮戦争が終わって、間もなくの頃から、「空対空ミサイル」が発達を始めます。

つまり、戦闘機は、音速に近い高速で飛行しながら、機関銃など、到底、届かない遠距離で、「ミサイル」を使って、戦闘を行うことになることが想定された。

そのため、1960年頃には、「戦闘機に、機関砲は、いらないのではないか」と考えられるようになる。

実際に、機関砲を搭載しない戦闘機も登場することになる。

 

が、ベトナム戦争の実戦で、機関砲を搭載しないアメリカ軍の戦闘機は、北ベトナムが使用していた、機関砲を搭載するソ連製の戦闘機に苦戦を強いられることになる。

これは、まだ、ミサイルの命中精度が高く無かったこと、そして、接近戦では、ミサイルが役に立たなかったことなどが、理由だそうです。

 

そして、戦闘機の機関砲搭載は、復活をすることになる。

 

その後、いくら、ミサイルを始め、様々な戦闘機の性能が向上、発達をしようが、機関砲、「バルカン砲」は、戦闘機から無くならない。

最新鋭のF35戦闘機にも、「バルカン砲」は搭載されている。

 

戦闘機に搭載されている「バルカン砲」です。

 

ミサイルの命中精度も向上し、パイロットが敵を視認することが出来ないような遙か遠方から、敵を認識、攻撃することが出来るような時代に、なぜ、「バルカン砲」が必要なのか。

とても不思議な気がする。

 

ネットで調べてみると、色々と理由があるようですね。

 

まずは、ミサイルの搭載数が、限られているということ。

つまり、ミサイルを使い果たしてしまえば、最後は「バルカン砲」で戦うことになる。

 

また、味方機の作戦の支援をする時にも、ミサイルではなく、「バルカン砲」が有効だということのよう。

 

また、戦闘機は、常に、高速で飛行をしている訳ではなく、低速で空中戦に巻き込まれる場合もある訳で、その時には「バルカン砲」が有効になる。

 

最近では、敵の「ドローン」を攻撃するには、ミサイルよりも、「バルカン砲」の方が、経済的にも、効率的だという話。

 

 

ちなみに、こちらは、「ファランクス」と呼ばれる機関砲で、軍艦に搭載されている防御のための兵器です。

 

全自動で、自艦に接近する敵のミサイルを撃ち落とすことになる。

 

ちなみに、「バルカン砲」の「バルカン」とは、アメリカの会社が開発した20ミリガトリング砲「M61」の登録商標だそうで、正確には、他の機関砲は「バルカン砲」ではないということのよう。

しかし、今では、一般名詞ですよね。