不思議な現象である「量子のもつれ」を使えば、物質を、一瞬で、別の場所に転送する「テレポーテーション」が、理論的には可能です。

SF物語では、お馴染みのテレポーテーションが、現実世界でも可能とは。

 

 

さて、この「量子テレポーテーション」は、どのようにして行われるのか。

 

まず、「量子測定室」という部屋を用意します。

 

そして、「量子送信室」と「量子受信室」という二つの部屋を用意します。

 

この「量子送信室」と「量子受信室」の二つの部屋の中には、それぞれに、十分な物質(大量の原子)が入っていて、「量子送信室」と「量子受信室」の原子は、「量子もつれ」によって繋がっています。

 

そして、転送したい物質の情報を「もつれ測定」という特殊な方法で測定。

これによって、「量子測定室」と「量子送信室」の原子の間で、強制的に、「量子もつれ」の関係が、作り出されます。

それと連動して、「量子送信室」と「量子受信室」の原子の間にあった「量子もつれ」の状態は壊れ、「量子受信室」の原子の状態が瞬時に変化します。

 

この段階で、「量子もつれ」を介して、物質の情報は「量子受信室」に伝わりますが、まだ、不完全な状態です。

そこで、「量子測定室」で行った「もつれ測定」の結果を、通常の通信方法で「量子受信室」に送ります。

この「もつれ測定」の結果を使って、「量子受信室」の原子の状態を補正。

そうすると、「量子測定室」にあった物質が、「量子受信室」に出現します。

 

このようにして、「量子測定室」にあった物質が、「量子受信室」に転送されます。

これが、「量子テレポーテーション」です。

 

理論的には、どのような物質でも、この方法で「量子テレポーテーション」が可能だそうですが、大きな物質を、この「量子テレポーテーション」で転送することは、極めて困難だということ。

理由は、量子状態の実現と維持が難しいということです。

現在では、光子や原子といった小さな粒子でしか「量子テレポーテーション」は実現していないということ。

 

さて、この「量子テレポーテーション」。

 

上の説明を読むと分かるように、物質を、そのまま、別の場所に転送する訳ではありません。

転送をされるのは、その物質が持つ「情報」であって、その「情報」を使って、転送先で、物質を、瞬時に再構成するということ。

つまり、二つは、「全く同じ」物質という訳では、ありません。

 

しかし、この「転送前」の物質を「転送後」の物質の違いを探すことは不可能です。

なせなら、量子のレベルで、二つの物質は、全く、同じものであるから。

 

問題は、もし、「生き物」を、この「量子テレポーテーション」をした場合、転送前、転送後で、同じ「生き物」と言えるのかということがありますよね。

例えば、「人間」を「量子テレポーテーション」した場合、転送前、転送後で、同じ人間と言えるのか。

想像をすると、怖いものがあります。