石ノ森章太郎「漫画超進化論」。

なかなか、面白く、興味深い本です。

 

 

この本、初版が出たのは、1989年3月ということ。

この本は、「漫画」というものの進化、そして、今(当時)の漫画の現状、そして、この先、漫画は、どうあるべきかという構想、などを、石ノ森さんが、小池一夫さん、藤子不二雄Aさん、さいとうたかおさん、手塚治虫さんと、1対1で対談をしたものをまとめたもの。

そして、石ノ森さんへの「漫画」についてのインタビュー。

ラストには、短いですが、石ノ森さんの手塚治虫さんとのエピソードを描いた漫画が掲載されています。

 

個人的には、漫画原作者の小池一夫さんの話が興味深く「漫画原作者」という人が、何をしているのかということが、具体的に分かって、面白かった。

 

そして、手塚治虫さんとの対談。

この手塚治虫さんとの対談の中で、個人的には、かなりショックな話がありました。

 

かつて、「漫画」とは、社会に「害」を与えるもの、そして、子供に「悪影響」を与えるものという考えが、根強くあった。

社会的地位のある人が、公然と「漫画」というものを批判し、子供を持つ親たちが、「漫画」に対して、強く非難し、子供に「漫画」を読ませないようにすることも多かった。

この「漫画」への社会からの攻撃の矢面に立たされていたのが、手塚治虫さんです。

やはり、「漫画」と言えば、「手塚治虫」というのが、世間の認識だったのでしょう。

実際に、手塚治虫は、漫画界の第一人者で、多くの人に影響を与える人気漫画家だった。

手塚治虫さんが、当時、社会から、どのような非難を受けていたのか。

具体的なことが、少しですが、対談で話されています。

自分自身が、全身全霊を持って取り組んでいる仕事が、社会から大きな非難を受けるというのは、相当に、辛いことでしょう。

 

さて、今、なぜ、ここに、この話を描いたのかと言えば、ちばてつやさんの漫画「ひねもすのたり日記」の第六巻を読んだため。

 

 

この「ひねもすのたり日記」は、ちばてつやさんが、自身の過去の思い出や、現在の日常を、フルカラーで、エッセイ的な漫画にしたもので、とても、面白い。

 

 

第一巻から、発売されると、毎回、買って、読んでいるのですが、この第六巻は、ようやく、先日、買って、読んだところ。

 

その中に、上の「漫画超進化論」の中にもあった、手塚治虫さんの話がありました。

 

「漫画」が、社会的に非難をされていた当時、実際に、「漫画」を、この社会から排除をしようと運動する人たちも居たようですね。

 

ある時、学校の校庭で、その学校に通う子供の母親たちが、多くの漫画本を集め、他のアダルト雑誌などと共に、火をつけて燃やすという行動を取ったそうです。

いわゆる「焚書」という行動です。

この時、手塚治虫さんも現場に呼び出され、燃やされる漫画本の前で、集まった母親たちから、厳しく、非難を浴びせられたということ。

想像をするだけでも辛いことですが、この時のことを、手塚さんは、ちばてつやさんや、他の漫画家たちが集まっている前で、無念そうに話したことがあるそうです。

 

「漫画」というものが、このような扱いを受けていたというのは、今では、信じられないですよね。

今、「漫画」は、日本を代表する文化の一つ。

海外への大きな輸出品でもある。

 

僕が子供の頃、まだ、大人が漫画を読むなどということは希でしたよね。

しかし、今では、老若男女、誰もが、漫画を読んでいても不思議ではない。

手塚治虫さんや、石ノ森章太郎さん、ちばてつやさん、その他、多くの漫画家の人たちの努力の結果ですよね。