中村靖日さんの訃報を知り、また「運命じゃない人」を見ようと思っていたのですが、ようやく、観賞。

やはり、何度見ても、面白いですね。

よく、これほど、手の込んだ、面白い脚本を書くことが出来るものです。

この映画を、小説にするのは、なかなか、難しいのかも。

公開は、2005年。

 

 

 

この映画は、中村靖日さん演じる「宮田武」、山中聡さん演じる探偵の「神田勇介」、山下規介さん演じるヤクザの組長「浅井志信」の、三人の視点から見た、ある一夜の物語です。

 

宮田武は、板谷由夏さん演じる「倉田まゆみ」という女性と結婚をするために、無理をして立派なマンションを購入するのだが、その直後に、突然、まゆみは「他に好きな人が居る」と言って、マンションを出て行ってしまった。

宮田は、失恋のショックを引きずりながら、そのマンションで一人暮らしをしている。

 

霧島れいかさん演じる「桑田真紀」という女性。

真紀は、ある男性と婚約をしていたのだが、その男性が浮気をしていることを知り、一緒に暮らしていたマンションを出た。

お金も無く、住むところもない。

失意の中で、あるレストランに入る。

そこで、真紀は、近くのテーブルに座っていた、一人の男に声をかけられた。

(場面転換)

 

ある日、仕事からマンションに帰って来た宮田の携帯電話に、中学の時からの親友で、探偵の神田から電話がかかって来た。

「話があるから、今すぐ、いつものレストランに来い」

と言う。宮田が、帰って来たばかりだからと渋ると、

「まゆみちゃんのことで、話がある」

と言うので、すぐに、マンションを出て行く。

宮田は、レストランに到着をするのだが、なかなか、神田が来ない。

ようやく、レストランに来た神田は、

「まゆみちゃん、結婚するらしいよ」

と、宮田に伝える。

ますます、落ち込む宮田に、神田は、新しく、女性と出会う努力をしろと話す。

そして、すぐ後ろの席に座っていた女性(桑田真紀)に声をかけた。

「良かったら、一緒に、食事をしませんか。もちろん、おごります」

真紀は、「いいんですか」と、さっそく、宮田と神田の居るテーブルに移動し、互いに自己紹介。

そこで、神田が、「ちょっと、トイレ」と言って、席を立つと、そのまま、姿を消してしまった。

仕方なく、宮田と真紀は、互いの境遇を話し、意気投合する。

行くところがないという真紀に、宮田は、自分のマンションに来るように誘う。

マンションに戻った、宮田と真紀。

宮田は、真紀を、まゆみの使っていた部屋に泊めることにして、その準備をするのだが、そこに、突然、まゆみがマンションに来る。

「ちょっと、荷物を取りに来た」

と、言う、まゆみを見て、真紀は、まゆみを「自分勝手だ」と非難し、マンションを出て行く。

宮田は、まゆみに「必要な荷物は持って行ってくれ。後は、処分するから」と、真紀を追って、マンションを出て行く。

タクシーを探していた真紀に追いついた宮田は、「もう、まゆみのことは好きではない。君のことが好きだ」と告白する。

すると、真紀は、

「自分のものになりそうだったら、どんな女性でも好きになるんですか」

と、宮田を責め、タクシーに乗り込む。

しかし、諦めきれない宮田は、タクシーを追いかけ、呼び止める。

「また、会いたいから、電話番号を教えて欲しい」

と、真紀に言う。

「電話番号くらい、教えてあげれば」

と、タクシーの運転手に促され、真紀は、宮田に、電話番号を教える。

電話番号をゲットした宮田は、大喜びで、マンションに戻る。

(場面転換)

 

探偵の神田は、自分の事務所に戻る。

そこには、まゆみが神田を待っていた。

神田は、まゆみを事務所に入れ、話をすることに。

実は、まゆみは、結婚詐欺師で、今は、暴力団「浅井組」の組長の女だった。

神田は、最初から、「まゆみは怪しい」とにらみ、勝手に素性を調べていたのだが、宮田のことを思うと、宮田には真相を話せないで居た。

まゆみは、「組長から、自分を逃がして欲しい」と頼む。しかも、まゆみは、組長のお金を盗んで来ていた。

「ヤクザをなめると、長生き出来ないよ」

と、まゆみに忠告をし、お金は、組に返せと言う。

渋々、まゆみは、それを了承し、宮田の部屋に残してある荷物の中に、パスポートがあるので、それを取りに行きたいと神田に頼む。

神田は、合鍵を使って、宮田のマンションに入る。

まゆみは、自分の使っていた部屋で、パスポートを探す。神田は、その間に、トイレに。

すると、そこに、宮田が仕事から帰って来た。

神田は、慌てて、トイレの中から、小声で、宮田の携帯に電話をかける。

「話があるから、今すぐ、いつものレストランに来い。まゆみちゃんのことで、話がある」

神田が、そう言うと、宮田は、急いで、部屋を出て行った。

急いで、トイレから出た神田は、パスポートを見つけた、まゆみと共に、マンションを出る。

その足で、神田は、浅井組の事務所に、まゆみの盗んだお金を返しに行くが、組員に見つかり、お金の入ったアタッシュケースを置いて、事務所を脱出。

神田は、車で逃げると、まゆみから、お礼としての百万円を受け取り、まゆみと別れると、宮田と待ち合わせをしているレストランに向かった。

レストランで宮田と会い、

「まゆみちゃん、結婚するらしいよ」

と、宮田に話す。落ち込み宮田に、

「新しい出会いを探せ。三十を過ぎると、じっとしていても出会いは無いよ」

と話し、後ろの席に居た女性(桑田真紀)に声をかける。

「良かったら、一緒に食事をしませんか。もちろん、おごります」

と、神田が言うと、

「いいんですか」

と、すぐに、真紀が、自分たちの席に移って来た。

互いに自己紹介をしたところで、神田は、レストランの中に、浅井組の組員が入って来るのに気がついた。

「ちょっと、トイレ」

と、神田は、逃げようとしたのだが、トイレには、他の人が入っていて、神田は、組員に捕まり、事務所に連行される。

事務所に連行された神田は、散々、脅された後、組長を待っていたのだが、組長は、何と、まゆみと一緒に、事務所に戻って来た。

まゆみと神田は、組長の部屋に入れられ、三人で、話をすることになる。

「これ、お前がやったんじゃないよな」

と、組長は、お金が入っていたアタッシュケースを見せた。

すると、その中には、まゆみの下着類が詰められ、神田の名刺が一緒に入っていた。

驚いた神田は、「違います」と、慌てて、訂正。

そして、組長は、事前に、神田の事務所に入り、神田が調べた、まゆみの結婚詐欺の資料を持っていた。

「君、良い仕事するね。これから、俺の仕事をタダでしてもらうということで、許してやる」

と、神田を釈放する。

神田は、一体、あのアタッシュケースの中のお金は、どうしたのかと考える。

すると、パスポートを探しに、宮田のマンションに行った時に、お金を下着類を、まゆみが入れ替えたのだと気がついた。

神田は、すぐに、宮田のマンションに行き、まゆみの使っていた部屋に入るが、その部屋は、すでに片付けが終わって、何も無くなっていた。

「ゴミは、もう、業者が、持っていたんじゃないか」

と、宮田に言われ、神田は、ショックを受ける。

(場面転換)

 

ヤクザの組長、浅井は、なかなか、事務所の資金繰りに苦労をしていた。

しかし、組長たるもの、お金に苦労をしているところを組員に見せられない。

そこで、懇意にしている「何でも屋」の山ちゃんの手を借りて、「見せ金」の札束を用意し、組員たちに見せつけることで、威厳を保っていた。

そして、それはもちろん、愛人の、まゆみも見ていた。

そして、ある日、組員と、まゆみを連れて、近くの中華料理屋に食事に行こうとしたところ、まゆみが「ちょっと、トイレ」と、事務所に戻り、組長たちは、中華料理屋に向かった。

しかし、そこで、まゆみは、付き添いで残った新入りの組員を騙し、浅井の金庫から「見せ金」の札束を奪って、姿を消す。

浅井は、あの「見せ金」がバレてはまずいと、「金が盗まれた」と大騒ぎをする組員たちに、「他の組への恥になるから、あまり大事にするな」と、まゆみを追うことを命令。

しかし、そこで、ある男(神田)が、事務所に、お金の入ったアタッシュケースを持って来て、密かに、置いて、逃走。

組員に神田を追わせ、浅井は、部屋の中で、アタッシュケースを開けるが、そこには、「見せ金」ではなく、下着類と、神田の名刺が入っていた。

すると、そこに、まゆみから電話がかかってくる。

「神田という男に、金を盗むように強要されたの。神田は、あるレストランに居るから」

と、まゆみは、神田の居るレストランを浅井に教える。

浅井は、組員に電話をして、神田の居場所を教え、神田が、もしかすると「見せ金」のことを知っているのかも知れないと考え、「その男に、何も喋らせるな」と、強く、組員に命令。

組員は、早速、レストランに行き、神田を発見。

組員は、神田を脅しながら、事務所に連行する。

その間、浅井は、名刺から、神田の事務所に向かっていた。そして、「何でも屋」の山ちゃんに鍵を開けてもらい、中に入る。

浅井は、その部屋の中で、まゆみの結婚詐欺の資料を見つけた。

浅井は、その資料を眺めていたところ「宮田」という人物からは、まゆみがお金を奪っていないことに気がつく。

そこで、浅井は、あの「見せ金」が、宮田の部屋にあるのではないかと思い、宮田のマンションに向かった。

また、山ちゃんに鍵を開けてもらい、浅井は、宮田のマンションに入る。

まゆみの使っていた部屋で、浅井は、下着類の詰められた箱の中に入れられた「見せ金」を発見。そこに、レストランから、宮田と真紀の二人が、マンションに戻って来て、浅井は、ベッドの下に、身を隠す。

浅井は、ベッドの下で、宮田と真紀のやり取りを聞いていた。

宮田が、まだ、まゆみに未練があること。そして、真紀が、宮田に、好意を持ちかけていること。

そして、風呂の準備をするために、宮田が部屋を出て行く。

真紀は、宮田が出て行った部屋の中で、箱の中にある「見せ金」の札束に気がついた。

真紀は、その「見せ金」の札束を、自分のバッグの中に詰め込む。

すると、そこで、まゆみが、「荷物を取りに来た」と、マンションに来る。

真紀は、急いで、バッグと自分の荷物を持って部屋を出た。

そして、「自分勝手じゃないですか」と、まゆみを非難し、マンションを出る。

真紀を追いかけて、宮田もマンションを出て行く。

まゆみは、一人、マンションに残ったと思い、自分の使っていた部屋に、札束を回収するために入るのだが、そこには、組長の浅井が居た。

浅井は、まゆみを連れて、事務所に戻る。

そして、まゆみと神田と三人で、自分の部屋で話をすることに。

浅井は、神田の持っていた百万円を貰い、更に、タダで、自分の仕事をしてもらうということで、神田を釈放。

そして、まゆみもまた、自分と手を組み、詐欺の仕事をすることを了承させることに。

(場面転換)

 

まゆみの盗んだ札束が、宮田のマンションにあると思い、急いでマンションに来た神田だったが、すでに、まゆみの荷物は宮田が処分をした後で、神田は、大金が捨てられたと失望する。

その一方で、宮田は、真紀から「電話番号を教えてもらった」と喜んでいた。

神田の前で、その番号に電話をしてみるのだが、なぜか、繋がらない。

「その電話番号は、嘘だ」

と、神田は言うが、

「彼女は、そんなことをする人ではない」

と否定し、また、電話をしてみるが、やはり、繋がらない。

「だから、その番号は、嘘だよ」

と、神田は、言うが、宮田は、

「彼女は、そんな酷いことをする女性じゃない」

と、否定。

「女性は、そういう酷いことをするんだよ。また、次の出会いを探せ」

と、神田は、言うが、宮田は、

「きっと、書き間違えたんだよ。この6は8じゃないかな」

と、また、電話を書き続けるが、やはり、繋がらない。

「書き間違えないよ。だから、それは嘘だ」

(場面転換)

 

真紀は、「見せ金」とは知らない札束をバッグの中に入れ、この世界で、一人で生きていくことを決意していた。

と、言う物語。

 

なかなか、面白いですよね。

文章で、この面白さが、伝わるのかどうか。

 

宮田武と、桑田真紀の出会いは、「運命」のようで、「運命」ではなかったということ。

だから、タイトルが「運命じゃない人」だと思うのですが。