地球人類と、地球外知的生命と接触について。

藤子F不二雄さんのSF短編の中に、とても、良い話があります。

個人的に、この「老年期の終わり」は、「山寺グラフィティー」と共に、藤子F不二雄さんのSF短編のベスト1に挙げたい作品です。

 

 

地球から5000光年離れた銀河の中心近くに「ラグラング」という惑星があります。

地球人類が、この星に移民をし始めてから5000年が経ち、すでに、役割を終えたこの星は、住民が、順次、地球に戻ることによって、放棄されることになっていた。

そして、この星に残る住民も、残りわずか。

後は、地球に向けて出発をする最後の便を待つだけになっていた時、突然、未確認の宇宙船が接近をする警報が、星に鳴り始める。

これは、この「ラグラング」の歴史が始まって以来、初めてのこと。

 

医者の見習いだったマリモという女性は、その警報音を聞き、上空から接近する小型の宇宙船を見つける。

すでに、廃墟となった街の広場に着陸をした小型宇宙船は、自動でハッチが開き、マリモは、その古い小型宇宙船の中に乗り込む。

すると、その中には、一人の青年が、コールドスリープの状態にあった。

この「コールドスリープ」(人工冬眠)とは「ワープ航法」が発明される前に、宇宙旅行に使用されていた古い技術。

 

「一体、これは、何だ」と、マリモは、祖父のゲヒラ博士と共に、古い文献を調べた。

すると、この古い小型宇宙船は、今から6000年前に、地球から、地球外知的生命と接触をするために、打ち上げられたものだということが分かる。

「何と、無茶なことを」

と、マリモとゲヒラは驚くが、マリモは、この青年をコールドスリープから目覚めさせる。

青年の名前は、イケダと言った。

イケダは、マリモとゲヒラを見て「地球外知的生命と出会うという自分の使命は、達成された」と喜び、感動する。

 

イケダは、地球代表として「ラグラング」の総督に、地球人類との友好を望むことを伝える。

しかし、総督は、そのイケダに、遠慮がちに、「私たちは、間もなく、地球に戻ることになっている」と告げる。

この惑星「ラグラング」は、地球から移民が開拓をした星であること。

今では、「ワープ航法」で、60日で、地球に到達が出来ること。

この星は、放棄されることなどを、イケダは知り、大きなショックを受ける。

 

何もかも、捨てて、6000年もの間、旅を続けた自分の人生は、何だったのか。

イケダは、小さなレコーダーから流れる、かつての女友達の歌声を聞きながら、考える。

ゲヒラは、そんなイケダに、この6000年の間の、人類の歴史を話して聞かせた。

何度も、滅亡の危機を乗り越えた人類だが、もはや、その発展は終え、今、人類は、衰退に向かっている。

この「ラグラング」を放棄し、地球に戻るのも、人類の衰退の現象の一つ。

つまり、人類は、「老年期」の終わりにあるということ。

 

マリモは、イケダを連れて、人が去り、廃墟となった街を案内する。

人類が、初めて、この星に到達をした時のモニュメント。

最終便の出発を待つだけになった、宇宙船の空港。

 

そして、最終便の出発間近、イケダの姿は、自分が乗って来た古い宇宙船の中にあった。

「何をしているの」

と、それを見つけた、マリモは、言う。

「このまま、衰退し、滅亡を待つのは嫌だ。自分は、また、これで、外に向かって旅立つ」

と、イケダは言う。

「そんな無茶な」

と、マリモは言うが、イケダは、聞き入れない。

 

そんなイケダの決意と姿を見て、マリモもまた、イケダと共に、この宇宙船に乗ることを決める。

そして、まだ、これからも、「先」を目指そうとする若者たちの姿を見たゲヒラは、地球に向かう最終便に乗らず、生まれ育ったこの星に残ることを決断する。

「たった一人で、この星で、どうしようと言うのですか」

と、説得をしようとする総督の声を遮るゲヒラ。

 

地球に向かう最終便の大型ロケット。

その大型ロケットに平行して飛ぶ、更に、外宇宙を目指して旅立つ、古い小型の宇宙船。

その二隻を、イケダの持っていたレコーダーから流れる歌を聞きながら、廃墟となった街の丘から見上げる、老人ゲヒラ。

 

この一コマで、この物語は終わります。

 

この「老年期の終わり」というタイトルは、アーサー・C・クラークの小説「幼年期の終わり」というタイトルを元にしたものでしょう。

 

 

この「幼年期の終わり」も、読んだはずなのですが、どのような内容だったのか、全く、記憶に残っていない。

しかし、この小説は「名作」として名高いもの。

しかし、僕の好みには、合わなかったということなのでしょうね。