さて、「可変翼」が、様々な理由で、採用されなくなると、次に、戦闘機で採用が始まるのが「カナード翼」と呼ばれるもの。
この「カナード翼」とは、「エンテ型」と呼ばれる翼の形状の一種。
主翼の前に、小さな翼を持つ飛行機のことを言います。
この「エンテ型」で、有名なのは、やはり、太平洋戦争で、日本軍が開発をした局地戦闘機「震電」でしょう。
主翼が後方にあり、前方に、小さな翼があるのが、分かります。
この「エンテ」とは、ドイツ語で「鴨」のことだそうです。
鴨の飛ぶ姿に似ているため、と、言うことのよう。
しかし、この「エンテ型」の飛行機は、飛行が、かなり不安定で、操縦が、とても難しいという欠点があるようです。
そのため、翼の形状としては、主流にはならなかった。
それが、なぜ、「可変翼」が廃れた後、戦闘機の主流とも言える翼になったのか。
それは、コンピューターの発達が、一つの理由だそうです。
こちらは、1971年に運用が始まったスウェーデンの戦闘機「サーブ・ビゲン」です。
この「サーブ・ビゲン」は、「カナード翼」の先駆けになった戦闘機。
ちなみに、この「サーブ・ビゲン」の「カナード翼」は、「ダブルデルタ」と呼ばれる形状で、STOL性(短距離離着陸)を高めるために、採用されたもののよう。
そして、1996年に運用が始まった、同じスウェーデンの「サーブ・グリペン」で、この「カナード翼」の特性が、発揮されることになる。
それは、機体を、わざと不安定な状態で飛行をするように設計し、この「カナード翼」を、コンピューターで制御をすることによって安定した飛行を可能にするという技術。
なぜ、このようなことが行われたのか。
それは、一つは、戦闘機にとって重要な「運動性」の向上のため。
つまり、戦闘機の機動性の向上のためです。
こちらは、2000年に運用が始まった、フランスの「ダッソー・ラファール」です。
個人的には、この「ラファール」の試作機を、どこかで写真で見たのが、「カナード翼」の戦闘機を見た、最初でした。
こちらは、2003年に運用が始まった、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインが共同開発した「ユーロファイター・タイフーン」です。
ちなみに、当初、この開発計画には、フランスも参加していたのですが、意見の相違から、離脱。
フランスが、その後、独自に開発したのが「ラファール」ということになる。
ちなみに、日本の自衛隊では、「F35・ライトニングⅡ」の導入を決めましたが、この時、この「ユーロファイター」も、候補の一つだったよう。
売り込みは、かなり、熱心だったようで、確か、ブラックボックスは無く、全ての情報を開示し、日本で完全に生産を可能にするという話だったような記憶が。
しかし、なかなか、日本が、アメリカ以外の国の軍用品を購入するというのは難しいのでしょう。
そして、この「F35・ライトニングⅡ」は、今後、戦闘機の常識を、一変させる可能性のある戦闘機で、日本が、「ユーロファイター」ではなく「F35・ライトニングⅡ」の導入を決めたのも、当然の流れとも言える。
もはや、戦闘機の「速度」や「機動性」は、それほど、重要な性能とは言えなくなるということのようで、「カナード翼」をつけた機体は、登場しなくなることでしょう。