今日も快晴。

 

 

そして、空には、また、月が。

 

 

さて、将来、月に人が行くようになると、当然、月に、基地が出来たり、在住をする人も出て来るのでしょうが、その時、月の「土地」は、誰のものになるのでしょう。

確か、南極には大陸がありますが、南極は、誰の土地にもしないという取り決めがあるんですよね。

今は、それが、守られているということになるのでしょう。

月の土地も、多分、そのようになるのかなという気がしますが、僕が生きている間に、月の土地で揉めるということはないでしょうから、考えたところで、仕方が無い。

 

さて、藤子F不二雄さんのSF短編に「三万三千平米」というお話があります。

この作品は、今回の実写ドラマのラインナップにも入っていましたよね。

 

 

 

主人公は、「寺主」というサラリーマンで、そろそろ、自分の家を持ちたいと、良い土地を探している。

友達の安田は、不動産屋で、その安田の紹介で、色々な土地を見ているのだが、なかなか、手頃な土地が見つからない。

 

そんな時、寺主の家に、奇妙な格好をした紳士風の男が訪ねて来る。

「あなたの土地を、一坪、一万円で売ってくれませんか」

と、男は言うが、寺主は、土地を所有している訳ではない。

「一体、何のことです」

と、寺主が言うと、男は、驚いたように、

「あなたの土地ですよ。三万三千平米」

と言った。

目の前の変な男と、変な話に、寺主は、「夢でも見ているのか」と、ふらふらと部屋を出て、布団に入る。

そして、男は、

「地主さまを怒らせてしまうようでは、交渉人として失格です。また、出直します」

と、寺主の妻に言い、家を出て行く。

 

寺主は、安田と、土地探しを続けるが、なかなか、見つからない。

安田は、寺主の優柔不断に、苛立つ。

「何で、土地って、こんなに高いんだろうな」

「地主や、企業が、土地を買い占め、売り惜しみをして、値段を上げているのだろう」

「そんなやつらは、社会のダニだ」

と、寺主と安田は、酒を飲みながら、不満を漏らす。

 

そして、その帰り道で、寺主は、チンピラ風の男に声を掛けられる。

よく見ると、その男は、先日、家に来た、おかしな格好をした紳士風の男と同一人物だった。

「今回は、もっと、砕けた感じでお話をしようと思いまして、このような格好で来ました」

と、男は、言う。

「お喜び下さい。上司と話をしたところ、あなた様の土地、三万三千平米を、一坪、三万円で買い取ることに決まりました」

「有り難いね。でも、無いものは売れないよ」

と、寺主は、相手にしない。

奇妙な男は、土地を売ってくれと、執拗に食い下がる。

最後には、土下座をしてまで頼み込むが、寺主は、それを振り切って、逃げようとした。

「分かったぞ。ごね得を狙っているんだろう。お前なんか、社会のダニだ!」

と、奇妙な男は、叫びながら、追いかけて来る。

寺主は、何とか、逃げ切り、家に帰る。

 

そして、ある日、寺主は、新聞の広告で、とても条件の良い土地を見つけた。

寺主は、すぐに家を出て、不動産屋に案内をしてもらう。

そこは、緑が豊かで、南向きの、広い土地。

まさに、理想的で、しかも、値段も安い。

寺主は、即決をして、購入を決め、金を払う。

そして、上機嫌で、そのことを安田に会って、話す。

「俺は、こうと決めれば、決断は早いんだ」

と、得意げな寺主の前で、安田は、怪訝な顔をして、契約書類に目を通す。

「お前、ここが、緑地地域だと知っていて買ったのか? こんなところ買っても、家は建てられないぞ」

と、安田に言われ、寺主は、驚く。

 

寺主は、悪徳不動産屋に騙された訳で、

「何とかならないか」

と、安田に言うが、

「どうにもならないな。契約は正当だ。そこにテントでも建てて、生活しろ」

と、安田は、寺主を見放す。

 

土地と家のために蓄えていたお金を失った寺主は、家で、妻との大喧嘩の末、失意に沈む。

そこに、あの奇妙な男が、機動隊のような格好をして入って来た。

「あなたの土地を、強制収用することが決まりました。出来るだけ、あなた方のルールーを尊重しようと思いましたが、受け入れられないなら、仕方が無い。円の用意が困難だったので、代金として、これを」

と、床に置かれたのは、時価三億円の宝石類の入った袋だった。

 

寺主は、理想通りの、広い庭のある大きな家を手に入れた。

あの男は、何者だったのか。

寺主には、一つ、思い出したことがあった。

それは、昔、ジョークで買った「火星の土地」の権利証。

三万三千平米の火星の土地を、宇宙人が、買いに来たのかも知れない。

と、寺主は、考えた。

 

この「火星の土地」を売るというジョークは、実際に、あったことだそうですね。

この短編物語は、それをモチーフにしたものでしょう。

そして、「月の土地」もまた、売っているそうですね。

もちろん、それもまた、ジョークの一つでしょう。

 

この物語の中の、奇妙な男のセリフにもありますが、そもそも「土地」というものは、人間が、この世に生まれる以前から存在をしているもの。

なぜ、誰が作ったものでもない「土地」に所有者がいるのでしょう。

 

土地を買い、家を建てるなど、夢のまた夢。

でも、最近、増え続ける「空き家」が大きな問題になる一方で、あちらこちらに、新しい家が建っている。

この「空き家」ですが、安く売るとか、安く貸すとか、出来ないものなのでしょうかね。

なんだか、大きな無駄なような気がします。