藤子F不二雄さんのSF短編「旅人還る」が、実写ドラマのラインナップに入っていましたね。

これは、青年宇宙飛行士が、宇宙の「果て」を目指して、地球を出発。

延々と、宇宙の果てを目指して、旅をする物語。

この本に収録されています。

 

 

 

果たして、宇宙に「果て」は、あるのでしょうか。

そして、そこに、行き着くことは、出来るのでしょうか。

 

しかし、実は、この物語のテーマは、そこではありません。

 

主人公の青年には、恋人が居ました。

当然、宇宙に行くと、二度と、会うことは出来ない。

恋人は、「なぜ、あなたが行かなければいけないの」と、反対をします。

しかし、青年は、「どうしても、行きたいんだ」と、最終的に、喧嘩別れに。

 

そして、宇宙に向けて出発をした青年。

宇宙船に乗っているのは、その青年、一人。

宇宙船の中には、「チクバ」という人工知能が、青年の相手となります。

普通の人間のように、会話をし、ゲームの相手にもなる。

 

宇宙船は、光速に近い速さで、宇宙の果てに向けて、飛び続ける。

しかし、その「果て」に、たどり着く訳もない。

延々と流れる、孤独な時間。

青年は、宇宙船の中で、次第に、無気力になり、何も、する気を無くしてしまう。

 

光速に近い速さで飛ぶ宇宙船の中は、周囲に比べて、時間の流れが、著しく、遅れることになる。

地球は、すでに、赤色巨星と化した太陽に飲み込まれ、存在をしない。

 

そして、長い時間の果てに、宇宙は、膨張から、収縮に転じた。

「この先、どうなるか、想定が出来ません」

と、戸惑う「チクバ」に対し、青年は、すでに、覚悟を決めていた。

「君の責任を、全て、解除する。ご苦労だった」

と、青年は、眠りにつくのだが……。

 

さて、かつて、宇宙は、そのうち、「膨張」から「収縮」に転じるのではないかと言われていたようですね。

この短編物語は、それをテーマにしている。

宇宙が「膨張」していることは、アインシュタインの相対性理論の方程式で証明されていたのですが、実は、アインシュタイン自身は、この宇宙の膨張が信じられず、その方程式を改変してしまった。

しかし、その後、ハッブルが、天体観測によって、遠くの星ほど、速く遠ざかっていることを確認。

これは、宇宙が「膨張」していることを示し、アインシュタインは、方程式を改変したことを後悔したとか。

 

さて、宇宙が、膨張を続けるのか、それとも、そのうち、収縮に転じるのか。

これは、宇宙全体の物質、そして、エネルギーの量によるということのようですが、今は、この「膨張」は、更に、加速を続けているという話だったと思います。

実は、今、宇宙の膨張が「加速」をしていることの原因が、よく分からないそうですね。

宇宙には、まだ、人類の知らない、未知の物質である「ダークマター」と、未知のエネルギーである「ダークエネルギー」が存在し、それは、宇宙の95パーセントくらいを占めるという話のよう。

つまり、この宇宙全体で、人類が確認を出来ている物質とエネルギーは、ほんの数パーセントに過ぎない。

 

つまり、恐らく、今は、宇宙が「収縮」に転じるということは考えられていないのではないでしょうかね。

もっとも、詳しいことは、勉強不足で、知りませんが。

 

さて、もし、仮に、宇宙が「収縮」に転じた場合、どうなるのか。

 

昔、読んだ本には、「時間の流れが、逆転をするのではないか」と書かれたものもあったように思います。

もちろん、事実なのかどうかは、分からない。

 

そして、物語のオチになりますが、この「収縮」をする宇宙の中で、青年は、自分が出発をした直後の地球に、帰還することになる。

これは、恐らく、「時間が、逆転をした」ことを示しているのではないでしょうか。

 

青年が乗った宇宙船が、地球から飛び立つのを見上げて、涙を流す恋人の前に、長い旅を終えた青年が、姿を現す。

その瞬間で、物語は、終わります。