以前から、ずっと気になっていた飛行機が、一つ。

それは、アメリカの偵察機「U2・ドラゴンレディ」です。

 

 

この飛行機が「U2・ドラゴンレディ」です。

外観が、すでに、興味を引く。

 

一言で、言えば「怪しい」ということ。

一体、どのような飛行機なのか。

 

実は、アメリカ軍では、偵察機には「R」という記号を使います。

しかし、この「U2」には、「U」が使われている。

この「U」は、「汎用機」を意味するようです。

つまり、この「U2」は、最初から、正体を隠して、開発されたということ。

 

なぜ、正体を隠す必要があったのか。

それは、最初から、「他国の領空内を飛行して偵察をする」という違法行為を前提とした飛行機だったから。

当然、対象としていたのは「ソ連」です。

第二次世界大戦後、ソ連もまた、核兵器の開発に成功し、また、世界初の人工衛星の打ち上げにも成功し、アメリカは、ソ連の核の脅威に晒されることになります。

ソ連が、どこに、核を搭載している弾道ミサイルを隠しているのか。

それを知るには、ソ連の領空内を飛行し、直接、偵察をするしかない。

 

この「U2」を開発したのは、ロッキード社ですが、当初、ロッキード社は、この計画からは外されていたそう。

しかし、この偵察機の開発の話を知ったロッキード社の「ケリー・ジョンソン」という人物が、この偵察機の開発に強引に参加しようと、空軍に話を持ちかけます。

しかし、空軍には、話を蹴られることになる。

そこで、ケリーは、何と、CIAに、この飛行機の開発の話を持ち込みます。

更に、この話は、当時のアイゼンハワー大統領にまで持ち込まれ、大統領も、CIAの長官も、あまり乗り気ではなかったそうですが、ケリーは、CIAの下での開発の許可を得ることに成功。

そして、この違法行為を前提とした飛行機の開発は、あの「エリア51」で、秘密裏に行われたそうです。

そして、「U2」という名前も、その正体を隠すためのもの。

当初は、「気象観測機」という名目でもあったそうです。

 

当初の計画では、同時期にロッキード社で開発が進められていた「F104・スターファイター」をベースにして開発をする予定だったようです。

 

これが、「F104・スターファイター」です。

しかし、この「F104」をベースにするという案は、ほぼ、不可能で、「U2」は、独自の機体になります。

 

さて、この「U2・ドラゴンレディ」とは、一体、どのような飛行機なのか。

 

それは、高度2万メートルを超える超高高度で、巡航飛行をすることを可能にするために特化した性能を持つ飛行機、と、言うことになります。

この「高度2万メートル」を、安定して飛行するというのは、普通の飛行機には不可能なこと。

それは、大気の薄さ、気温の低さが理由です。

気圧は、地表の5パーセントしかないそうで、大気が薄いと、翼が揚力を得ることが難しい。

そのため、「U2」の機体は、グライダーのような大きな翼を持ち、しかも、機体は、非常に、軽く作られている。

燃料も、普通のジェット燃料では、この高度では揮発してしまうため、「U2」専用の燃料が作られたそう。

 

そして、操縦が、非常に難しい飛行機だということ。

 

高度2万メートルを超える高度では、気温の低下により、音速が、秒速295メートル程度になるそうです。

「U2」の機体は、非常に、脆いので、マッハ0.8に達すると、衝撃波で、機体が壊れるそう。

しかし、速度を緩め過ぎると、揚力が足りずに、失速をしてしまう。

その差は、わずか、時速18キロしかないそうです。

つまり、この時速18キロの範囲内で、飛行しなければならない。

 

また、着陸も、非常に、難しい。

 

一つは、機体が、とても軽く作られているため。

機体が、すぐに、浮こうとしてしまう。

 

更に、軽量化のため、車輪が、胴体の前部と後部の二つしかついていない。

長い主翼を、平行に保ちながら、その前後の車輪を滑走路に接地させなければならない。

操縦席からの視界は、非常に悪く、パイロットが目視で確認できないため、別の「U2」のパイロットが、着陸をする「U2」を車で、追走し、適切な姿勢を保てるように指示を出しながら、着陸をするということ。

そして、最終的には、翼の端を滑走路に接して、停止することになる。

 

ちなみに、パイロットは、与圧服を着用し、操縦席では、ほぼ、身動きが出来ないそう。

ほぼ、10時間の飛行時間を、パイロットは、狭い空間で、身動きの出来ない状態で、耐え続けなければならない。

 

そして、「U2」のパイロットは、他国を領空侵犯して飛行するため、軍籍を離れ、民間人として、「U2」に乗り込んでいたそう。

更に、極秘任務のため、パイロットは、自殺用の毒物を持って、「U2」に乗り込んでいたそうです。

 

当初、この「U2」の運用期間は、それほど長くないと考えられていたそうです。

 

それは、高度2万メートルという超高高度でも、そのうち、敵の戦闘機やミサイルによって迎撃が可能になることが想定されたため。

そして、実際に、1960年、ソ連の領空の飛行中の「U2」が、ソ連軍の対空ミサイルによって撃墜され、パイロットが捕虜になるという事件が起きる。

その後、ソ連の領空での偵察飛行は行われなくなったそうですが、むしろ、その後、「U2」の任務は、ますます、増えて行ったよう。

そして、それは、現在も続いている。

 

この「U2」の後に開発された、マッハ3を超える「SR71」偵察機や、無人機の「グローバルホーク」などが登場し、「U2」は、これらに取って代わられ、退役するのではないかと思われたのですが、その費用対効果から「SR71」は、先に退役し、「グローバルホーク」は、費用の割に、「U2」ほどの仕事は出来ないということで、「U2」は、今も、現役にある。

 

ちなみに、この「U2」は、CIAの下からは離れたものの、NASAでも運用され、当初、カムフラージュだった気象観測の分野でも活躍をしているそう。

 

そして、今は、「データーリンク」による戦闘が想定されていますが、その中継地点としても、この「U2」は期待をされているということ。

 

 

なかなか、面白い飛行機です。