安部公房の新潮文庫の新刊「飛ぶ男」。
今になって、まさか、安部公房の文庫の新刊が出るとは思わなかったので、早速、購入し、読了。
安部公房に興味を持ち、色々と、文庫を読んでいたのは、もう、二十年以上も前のことなので、詳しく、内容を覚えているという本はありませんが、「砂の女」と「カンガルーノート」の二作品は、とても、面白く、一気に読んだ記憶がある。
まず、「砂の女」。
主人公の男は、昆虫採集のために、ある砂丘に来る訳ですが、そこで、一人の女が生活をしている砂丘の中の家に、閉じ込められることになるんですよね。
男は、何とか、その家から脱出をしようと試みることになるのですが、どうしても、脱出をすることが出来ない。
次第に、男は、その砂丘の家での生活に馴染み、脱出をする気持ちも、無くなって行くことになる。
こちらは、「カンガルーノート」。
この「カンガルーノート」は、安部公房の発表した、最後の長編小説ということになる。
主人公の男は、病院の自走ベッドに固定された状態で、様々な、不思議な世界を走り抜ける。
安部公房の小説は、文章は読み易く、内容も面白いものが多いのですが、その登場人物たちが、なぜ、そのようなことをしているのか、そして、その物語が、どういう意味を持つのか、どうも、良く分からない。
これは、個人的に大好きな「フランツ・カフカ」の小説と、雰囲気が、良く似ている。
さて、今回、読んだ「飛ぶ男」。
明け方、ゆっくりと空を飛ぶ男が居た。
その男から、電話がかかってきたのが「保根」という男。
飛ぶ男は、自分が、保根の弟だと言う。
保根が、飛ぶ男と電話で話をしている最中、飛ぶ男は、空気銃で狙撃をされることになる。
狙撃をしたのは、保根の隣に住む「小文字並子」という女。
狙撃をされ、傷を負った飛ぶ男は、保根の部屋に逃げ込むが、再び、飛び去る。
そして、空気銃を持った並子が、保根の部屋に乗り込んで来るのだが……。
この「飛ぶ男」は、安部公房の死後、ワープロのフロッピーディスクの中に保存をされていたものだそうです。
未完の作品で、書かれているのは、ほんのプロローグと言った感じの部分だけ。
実に、惜しい。
完成をしていれば、どれほど、面白いものになっていたのか。
さて、この文庫には、「飛ぶ男」の他に「さまざまな父」という作品が収録されています。
この「さまざまな父」という作品は、「飛ぶ男」の前日譚のような物語です。
さらに、もう一冊、新潮文庫の新刊が出るようなので、また、読まないと。