さて、雑誌「ニュートン」の今月号。

「シンメトリーの物理学」という記事を、面白く、読みました。

 

 

この「シンメトリー」とは「対称性」のこと。

この宇宙に存在をするものは、基本的に、どれも「対称性」を持っている。

ちなみに、一般の人がイメージをする「対称性」とは、「左右対称」や「上下対称」など。

しかし、物理学、科学の世界では、一般の常識ではイメージをすることが難しい「対称性」も、多く存在をしている。

 

基本的に「対称性」とは、「何かを変換しても、何も変わらない」ということを示す。

この「対称性」は、非常に、広い範囲に及ぶということ。

例えば、この宇宙には、様々な「保存則」が存在する。

例えば、「運動量保存則」「エネルギー保存則」など。

これら「保存則」は、様々な現象から、それぞれに導き出されたものですが、実は、全て「時空」の「対称性」から来ているものだということ。

なるほど、と、納得です。

 

実は、自然界の中には「対称性があると思われていたものが、実は、違っていた」というケースが、よくあるそうです。

これを「対称性の破れ」と言うそう。

この「対称性の破れ」には、個人的に、昔から、関心を持って居ました。

 

対称性の一つに「パリティ変換」(P変換)というものがあります。

これは「座標の正負を変換する」というもの。

つまり、xをーxに、yをーyに、変換をするというもの。

かつて、自然界の物理現象は、この「パリティ変換」を行っても変わらないというのが常識だったそう。

しかし、この「パリティ変換」が、「ベータ崩壊」という現象で「破れ」ていることが1956年に確認をされたそう。

この「ベータ崩壊」とは、自然界に存在する「弱い力」によって引き起こされる、中性子を、陽子、電子、ニュートリノに分裂させる現象のこと。

この「弱い力」は、粒子が、「左巻き」のスピンをしているか、「右巻き」のスピンをしているかで、働き方が違うそう。

つまり、「対称性」が「破れ」ている。

 

実は、この「弱い力」は、「粒子を反粒子と入れ替える」=「C変換」についても、「対称性」が「破れ」ていることが確認をされたそう。

ちなみに、「反粒子」とは、「粒子」の「電荷」、つまり「+」と「ー」が逆になったもの。

電子は、普通、「-」の電荷を持ちますが、「+」の電荷を持つ電子は「陽電子」と呼ばれ、「反粒子」ということ。

この「反粒子」は、基本的に、自然界には、存在をしない。

 

しかし、この「弱い力」は、「P変換」「C変換」を続けて行った「PC変換」の場合は「対称性」を持つのではないかと考えられたそう。

しかし、1964年に、この「PC変換」についても、「弱い力」では、「対称性の破れ」が確認をされたということ。

この「弱い力」の「PC対称性の破れ」について、1973年に、理論的に証明し、仮説を立てたのが、小林博士と、益川博士です。

この小林、益川、両博士の仮説が正しかったということが、後に証明され、2008年に、ノーベル物理学賞を受賞することになります。

 

実は、この「PC対称性の破れ」は、今、宇宙に「粒子」だけが存在し、「反粒子」が存在をしないことについての重要な鍵になっているということ。

 

基本的に、この宇宙では「粒子」と「反粒子」は、一緒に生成されます。

これは「対生成」と呼ばれるもの。

そして、この「粒子」と「反粒子」が一緒になると、「対消滅」が起こる。

つまり、「粒子」も「反粒子」も、消えて無くなってしまうということ。

 

ならば、なぜ、今の宇宙には、「粒子」だけが存在し、「反粒子」は存在をしないのか。

それは、この「PC対称性の破れ」によって、「反粒子」よりも「粒子」の方が、極々、わずかに多く、生成された結果だと考えられているよう。

しかし、小林博士、益川博士の理論では、まだ、宇宙の物質を生み出すだけの粒子は生成しないようで、別の「PC対称性の破れ」が存在しないか、今、研究が続けられているということ。

 

そして、この「対称性の破れ」には、もう一つ、別の「破れ」があります。

それは、何らかのきっかけによって、それまで存在していた「対称性」が「破れ」るというもの。

これを「対称性の自発的破れ」というそうです。

 

この宇宙、自然界には、四つの力が存在しています。

それは、「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の四つです。

「重力」「電磁気力」については、一般でも、広く知られている力。

「強い力」とは、クォークを結びつけ、陽子や中性子を作る力。

「弱い力」とは、先に説明をしたベータ崩壊を起こす力。

この「四つの力」は、元々、一つの力で、「対称性の自発的破れ」によって、四つの性質に分離したと考えられているそうです。

 

この「対称性の自発的破れ」が、素粒子の世界でも起こることを理論的に証明したのが、南部陽一郎博士です。

南部博士もまた、小林博士、益川博士と共に、2008年のノーベル物理学賞を受賞している。

この南部博士は、素粒子物理学の第一人者だった人のようで、今、量子論の最先端である「超ひも理論」の元になる「素粒子は、『ひも』のような状態で、その振動によって性質が異なる」という発想を生み出した人のようです。

 

実は、自然界には、これまで知られていない「対称性」、つまり「超対称性」というものもあるのではないかと考えられているそうです。

実は、今、宇宙を構成するエネルギーの95パーセントが「謎」だそうです。

つまり、人類は、まだ、宇宙の5パーセントのことしか知らないということ。

この「謎」のエネルギーは「ダークエネルギー」「ダークマター」と呼ばれています。

そして、この「ダークエネルギー」「ダークマター」は、粒子には、まだ知られていない「超対称粒子」が存在していることが理由なのではないかと考えられているそう。

これが「超対称性理論」です。

 

さて、「ダークエネルギー」「ダークマター」の存在は、証明をされるのかどうか。