細川貂々さんの漫画「ツレがうつになりまして」。

この本は、当時、随分と話題になり、テレビドラマにもなり、映画にもなりましたよね。

テレビドラマで主演をしたのは、原田泰造さんと、藤原紀香さん。

映画で主演をしたのは、堺雅人さん、宮崎あおいさんだったと記憶しています。

 

 

 

この本は、売れない漫画家だった細川貂々さんの夫、通称「ツレ」さんが、うつ病になった時の、体験、日常を描いたエッセイ漫画です。

この本が、ベストセラーになったことで、「うつ病」についての世間の認知度も、かなり、広がったのではないかと思うところ。

 

貂々さんの夫、ツレさんは、フランスで暮らした経験のある帰国子女で、外資系企業で働いていた時に、うつ病になってしまう。

夫の症状が、次第に悪化して行くのを見て「とにかく、仕事を辞めろ」とツレに仕事を辞めさせたものの、生活費を稼がなければならない。

そこで、貂々さんは、出版社を回り「ツレがうつになりまして」と、何とか、仕事をさせて欲しいと頼み込む。

うつ病になった人が、どうなるのか。

詳細に、そして、コミカルに、描かれています。

 

さて、この「うつ病」を含む「心の病」というもの。

 

当事者の苦しさ、辛さは、他人には、理解をすることが難しい。

そのため、うつ病に社会の理解が無い頃は、うつ病の人は「怠けている」「甘えている」という偏見の目で見られ、辛い思いをしたのではないでしょうかね。

また、うつ病になるような人は「心が弱い」という誤解もある。

うつ病は、誰にでも、なる可能性のある病気です。

 

この「心の病」の厄介なところは、自分自身の努力では、どうにもならないということ。

本人が、いくら「健康になろう」「よくなろう」「そのために努力をしよう」と思っても、それが出来ない。

むしろ、そうやって頑張ることが逆効果になり、更に、症状を悪化させてしまうこともある。

今では、うつ病の人に「頑張れ」と声を掛けることは、絶対にしてはならないということは、常識として言われている。

なぜなら、その励ましが、本人を、ますます追い詰め、症状を悪くさせることに繋がるから。

 

そして、うつ病の人には、自殺をしてしまうリスクもある。

本の中でも、ツレさんが、自殺を図る場面があります。

 

今、大人の「引きこもり」が、大きな問題になっていますが、その中には、診断されていない、または、病気とは診断されない「心の病」を抱える人も、多く居るのではないかと思います。

なぜなら、僕もまた、当事者の一人だったから。

以下、少し、個人的な話をします。

 

中学に進学をして間もなく、僕は、自分が「普通ではない」ということに気がつきました。

周囲の人たちへの、大きな違和感。

自分の「心」は、周囲の人たちの「心」と、何か、違うのではないか。

そう思い始めた頃から、僕は、周囲の人たちと良い関係を築くことが出来なくなってしまった。

中学三年生の時には、ついに、その「心」の違和感が原因になったのか、身体的にも異常が発生し、ますます、周囲の人たちと同じ行動が出来なくなってしまった。

その、自分の「心」の異常、そして、それに伴うかも知れない身体的異常に悩まされながらも、何とか、高校、大学までは卒業したのですが、とても、就職は出来なかった。

今で言うところの「引きこもり」でしょう。

当然、両親は、僕の異常に気がつき、当時、まだ、心療内科というものは存在していなかったので、大きな病院の精神科だか、神経科だかに、通うことに。

しかし、一年ほど通っても、何の進展もなく、医者から、見放されるような言葉を言われたので、僕は「専門家でも、僕の『心』を理解することが出来ないのだな」と悟り、病院に通うのは止めました。

専門家の医者も、もっとも身近に居る親も、僕の「心」を、ちゃんと理解をすることは出来なかった。

それだけ、他人の「心」の「苦しさ」「辛さ」を、理解することは難しい。

 

そして、何とか、自分の「心」に折り合いをつけ、仕事が出来るようになったのは、三十歳の頃。

それでも、普通に、高校、大学を卒業した人がするような仕事は出来ないし、人を相手にするような仕事は、したくない。

当然、選ぶことが出来るのは、誰でも出来るような、給料の安い仕事だけ。

 

と、まあ、こんなところで、色々と愚痴を言ってみたところで仕方ないのですが、今では、取りあえず、仕事をして、何とか、普通の生活が出来ていることに感謝。

と、言ったところでしょうかね。