「孫子」と言えば、最も、有名な兵法書。
そして、この「孫子」を書いたと言われるのが「孫武」という人物。
この孫武を主人公にした漫画と、「孫子」が、どのような内容の本なのかを解説したのが、この本です。
この「孫武」という人物。
あまり、詳しいことが分からない人物のようですね。
出身は「斉」の国で、「呉」の国に仕えて、活躍をしたと言われているよう。
この漫画は、孫武が呉の国に行き、伍子胥という人物に見いだされ、呉王に仕えることになる。
そして、呉の軍勢を率いて「楚」の国と戦い、大きな成果を挙げたそう。
そして、「孫子」の兵法書を完成させ、呉の国を去るまでの物語。
さて、「孫子」について。
言わずと知れた、兵法書の最高峰。
この「孫子」は、今、多くの権力者が読むべき本だろうと思うところ。
この「孫子」を読めば、「戦争は、するべきではない」ということが、よく分かる。
そもそも「戦争」を始めた時点で、権力者としては、失敗だということ。
「百戦百勝は、最も、良い結果であるとは言えない。戦わずして勝つというのが、最も、優れた結果だ」
と、「孫子」に書いてある。
しかし、「戦争」は、絶対的に避けられるというものではない。
ならば、その「戦争」を、どう戦えば良いのか。
この「孫子」には、あらゆる面から、「いかにして、敵に勝つか」という方法が書かれています。
まずは、「自分を知り、敵を知る」こと。
「自分のことをよく知り、敵のことをよく知れば、百回戦っても、負けることはない」
と、「孫子」には書かれている。
逆に言えば、「自分を知らず、敵のことを知らなければ、その戦争には、絶対に勝てない」ということになる。
つまり、戦争にとって、最も、重要なのは、「正しい情報」を得て、それを「正しく分析する」ということなのでしょう。
これが出来なければ、戦争には勝てない。
そして、戦争が始まると、重要になるのは「主導権」を握ること。
言い換えれば「自分は自由に動き、相手には自由な行動をさせない」ということになる。
「情報の分析」を正しく行い、「主導権」を握ることが出来れば、敵の弱いところを叩き、敵の強いところを避け、戦場で、敵を破ることが出来る。
この「主導権」を握るためには、どうすれば良いのか。
それは「孫子」の中に、様々な方法が記されている。
この「孫子」が書かれたのは古代中国の「春秋時代」と言われています。
この春秋時代は、「戦争」というものの様相が、大きく変化をしていた変革期にあったようです。
春秋戦国という時代は、中国の北部「中原」と呼ばれる地域では、広い平原で、馬に引かせた戦車によって戦うというのが、戦争の一般的な方法だったそうですね。
孫武の出身地と言われる斉の国もまた、この中原に近く、当時の中国の中心地ということになる。
しかし、この孫武が活躍をしたと言われる呉の国があるのは「江南」と言われ、当時の中国では、辺境地域と認識されていたようですね。
そして、この江南地域には、戦車で戦えるような平原は少なく、戦争は「歩兵」によって行われていた。
実は、これは「孫子」の兵法を語る上で非常に、重要なこと。
この「孫子」の兵法は、当時、中国の中心である「中原」で行われていた「戦車」による戦争ではなく、辺境地域だった「江南」での「歩兵」による戦争が語られている。
そして、「戦車」による戦争が、訓練をされた「プロ」の戦いに対して、「歩兵」による戦いは、動員をされた「素人」の戦いということになる。
そして、その後の歴史は、まさに動員された「素人」たちの「歩兵」による戦いが、どこの国でも、一般的になって行く。
ここに、「孫子」の兵法が、時代を越えて、普遍的なものになった理由がある。
また、この「孫子」の特徴は、要点だけが、とても短く、端的に、抽象的に書かれているということ。
つまり、この「孫子」に書かれている内容を、どう解釈し、応用するのかは、それを読む人の裁量に、大きくゆだねられている。
そのため、いつの時代、どの地域の人が、この「孫子」を読んでも、理解をし、応用することが可能だということ。
それが、今でも、この「孫子」が、兵法書の最高峰として、読まれ続けている理由がある。
そして、この「孫子」の内容は非常に、合理的、理論的であるということも、今でも、「孫子」の内容が古びない原因の一つなのでしょう。
つまり、今の人が読んでも、違和感なく、受け入れることが出来る。
今から、2500年ほども前に書かれたものが、すでに「占いや、人の感情に頼っていては、戦争に勝てない」と喝破している。
日本の戦国時代でも、まだ、戦争は、「軍配者」と呼ばれる「陰陽道」の系譜を受け継ぐ人の「占い」によって行われていたようですし、太平洋戦争では、日本軍は「精神論」と「感情」によって戦争を行い、大敗を喫したのは、記憶に新しいでしょう。
さて、この「孫子」に関する本は、数知れず、出版をされていますよね。
その中で、最も、シンプルなのが、岩波文庫の「孫子」でしょう。
今、一般的に広まっている「孫子」は「三国志」の曹操が編纂をしたものだというのは、有名な話。
確か、この岩波文庫の「孫子」もまた、「魏武注」と言って、曹操が編纂をしたものではなかったですかね。
もっとも、詳しく「孫子」を知りたいという人には、物足りないということになるのでしょう。
そういう人には、とても、多くの「孫子」の本があるので、そちらを。