西村京太郎さんの長編「ゼロ計画を阻止せよ」を読了。

この作品は、西村さんの初期の頃の長編だということだったので、読んでみました。

主人公は、探偵の左文字進。

十津川警部と並び、西村さんの作品の中では、有名なキャラクターなのではないでしょうか。

 

物語の最初のうちは、どうも、間延びをした印象で、もしかすると、つまらない作品かも、と、思って読んでいたのですが、やはり、途中からは、次の展開が気になり、どんどんと先を読み進めてしまいました。

 

さて、物語。

左文字と、妻の史子が、夫婦喧嘩をし、妻が、マンションの部屋を出て行く。

すると、公衆電話ボックスの近くで、誰かに刺され、瀕死の若い男に出くわす。

「ゼロ計画を、阻止してくれ」

と、その男は言い残し、亡くなってしまう。

 

男の言う「ゼロ計画」とは、何なのか。

何か、重大な事件に違いないと推理をした左文字は、僅かな手がかりから推理をし、警察と共に、捜査に乗り出す。

しかし、左文字の推理と捜査も虚しく、「ゼロ計画」は、実行されてしまう。

それは、現役の総理大臣の誘拐と、身代金の要求だった。

総理大臣の命と引き換えに、20億円を要求する犯人たち。

事態は、政界の大物たちを巻き込んで、重大事件に発展。

しかし、途中から、左文字は、この「ゼロ計画」に、大きな違和感を持ち、独自の捜査を始めることに。

そして、この「ゼロ計画」は、意外な方向に進んで行く。

 

 

さて、この小説が書かれたのは、1970年代の半ばのようですね。

作品の内容には、やはり、時代を感じさせるものが多い。

 

まずは、左文字進が、アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれた「ハーフ」であるということ。

まだ、日本の社会の中に、ハーフの人が、珍しかった時代で、左文字も、珍しく見られる様子が描かれている場面がある。

 

また、ネタバレにも繋がりますが、この「ゼロ計画」には、「左翼」の活動家、そして、日本国内での「テロ」が、大きな意味を持って、関わって来る。

確か、浅間山荘の事件とか、よど号のハイジャックとか、日本赤軍の過激な活動などが社会の大きな問題になったのは、1970年くらいまでではなかったですかね。

 

また、戦争中に、零戦を操縦したことがあるという人物も、少しだけ、登場。

まだ、そういう人たちが、現役で活躍をしていた時代ということですよね。