約30年ぶりに、西村京太郎さんの本を読みました。

それが「午後の脅迫者」という短編集。

昔、読んでいてのは、文庫本一冊の長編ものばかりで、西村さんの短編小説を読むのは、これが初めてです。

 

 

やはり、読みやすく、面白いですね。

次の展開が気になり、どんどんと読めてしまう。

西村京太郎さんが、大人気ベストセラー作家になったのも、当然でしょう。

 

昔、毎年、高額納税者の番付が公表されていた時、作家部門では、いつも、一位が、赤川次郎さんで、二位が、西村京太郎さんだった記憶があります。

今、もし、この長者番付が発表されていたら、やはり、一位は、東野圭吾さんということになるのでしょうかね。

二位は、誰でしょう。

作品が、次々と映像化をされている人気作家と言えば、池井戸潤さん、湊かなえさんといった辺りでしょうかね。

村上春樹さんなど、どのくらいの順位になるのでしょうね。

 

さて、この「午後の脅迫者」の中に収録されている短編小説の中で、個人的に、最も、関心を持ったのが「美談崩れ」というタイトルの短編。

これは、いわゆる「推理小説」というものではない。

刑事や、探偵が、犯人を捜して、トリックを暴くとか、意外な展開を楽しむという内容の小説では、ありません。

 

主人公は、新聞社の地方局に勤める記者。

彼は、何とか、東京に戻るために、特ダネを手にして、記事にしたいと思っている。

しかし、自分の勤める地方では、そのような大きな、話題になるような事件が起きる訳ではない。

 

ある日、交通事故で、男の子が亡くなったという情報が入る。

そして、男の子を助けようとして、女性が怪我をして、入院をしたという情報も。

一応、これは「美談」ということになるのだが、それほど、大した記事になる訳ではない。

 

しかし、ある事をきっかけにして、この交通事故に関する意外な事実が分かることに。

果たして、その女性は、本当に、その男の子を助けようとしたのだろうか。

記者は、何とか、面白い記事にならないかと、取材を続けることにするのだが…。

 

この「美談崩れ」に書かれているテーマは、書きようによっては、文学作品に出来るのではないかと思ったところ。

そして、もしかすると、面白い映画にでも出来るのではないかと思ったりして。

 

そして、最後に収録されていた短編「マルチ商法」は、とても短く、ショート・ショート風で、ラストのオチも効いていて、面白かったです。

西村さんが、このような小説も書いていたというのは、意外なところ。