あだち充さんのまんが「スローステップ」。

個人的に、大好きな漫画の一つ。

 

 

 

主人公は、中里美夏。

高校生で、ソフトボール部に所属。

マンションに家族と住み、ある日、マンションのエレベーターの中で、一人の高校生と一緒になる。

「好きです」

「え?」

「一目会ったその日から…」

ブツブツと、独り言をつぶやきながら、去って行く相手に、

「変な奴」

と、美夏は、言うが、その高校生は、同じマンションで一人暮らしをしている門松直人だった。

 

門松直人は、向かうところ敵なし、無敵の高校生ボクサーだった。

直人は、ある事情があり、自分の恋人になる女性を探していた。

が、なかなか、理想の女性に出会えない。

 

美夏は、ある時、ある事情があって、変装をして外出する。

マンションを出たところで、直人とすれ違うが、美夏の変装を見抜けないで、すれ違う。

が、次の日、美夏は、直人に「好きな人を見つけた」と話す。

それは、誰なのかと聞いてみると、直人は、変装をした美夏の似顔絵を取り出して、美夏に見せた。

驚いた美夏だが、「まあ、放っとけばいいか」と、気にしない。

 

美夏の同級生、秋葉習。

習は、美夏のことが好き。

軽くて、いい加減な性格。そして、ボクシング部に所属をしているが、真面目に練習をしている訳ではない。

ある時、門松直人との試合が決まるが、習は、そもそも、直人と試合をするつもりはない。

美夏は、習を発奮させるため「門松直人に勝ったら、付き合ってやる」と言う。

猛烈に練習を始めた習。でも「直人には勝てないだろう」と、美夏は、たかをくくっていたのだが、直人に会うと、「あの人が、見つからない」と、憔悴をしきっていた。

「試合は、どうするの」と美夏が聞くと、「そんなの、どうでも良い」と直人は答える。

これは、まずいと思った美夏は、「あの人、知っているから、会わせててあげる」と直人に言う。

 

美夏は、変装をして、直人と喫茶店で会うことに。

しかし、直人は、それが美夏だと気がつかない。

「名前は、何ですか」と聞かれた美夏は、壁に張られたオーストラリアの絵を見て、「おー、須藤麻里亜」と答える。

 

ここから、中里美夏=須藤麻里亜と、門松直人、秋葉習の、奇妙な関係が始まる。

 

さて、この「スローステップ」には、もう一人、魅力的なキャラクターが。

 

それは、美夏の所属をするソフトボール部の監督、山桜監悟。

 

山桜もまた、美夏に好意を持っている。

もっとも、それは、教師と生徒という関係上、直人や習との関係とは、また、少し、違うもの。

山桜が、美夏に好意を持っているということは、周囲の生徒たちも知っていること。

しかし、それもまた、周囲に、どうこう言われるような悪い関係ではない。

 

個人的には、この山桜監悟というキャラクターが好きなんですよね。

 

元々は、将来有望なプロボクサーだった。

しかし、姉が亡くなり、その一人娘を引き取って育てることになったことで、ボクサーとしての夢を諦め、教師になった。

 

中里美夏=須藤麻里亜と、門松直人、秋葉習の関係の間に、山桜監悟が加わることになる。

ネタバレになるのですが、最終的に、美夏は、山桜を選ぶんですよね。

 

さて、この「スローステップ」の面白さは、コミカルな要素が、内容に、たくさん含まれていること。

しかし、それが、物語の雰囲気を壊すことなく、とても、センスの良いところ。

 

「本格、ソフトボール漫画」と言いながら、ソフトボールのシーンは、敢えて、あまり多くない。

 

また、作者が、自分自身をパロディにしているシーンもあって、ソフトボール部の沢村亜矢子が、試合の時間に来ない時に、部のメンバーが、

「まさか、交通事故とか」

と、言うと、

「でも、この作者、一度、その手は、使っているわよ」

と、別のメンバーが、言う。

みんなが、ホッとしたところ、

「でも、この作者、ワンパターンで有名なのよ」

と、また、別のメンバーが言い、心配に陥るところが面白い。

 

ウィキペディアを読むと、この「スローステップ」は、作中では一年の物語を、雑誌「ちゃお」で、四年半もかけて連載をされていたそうですね。

また、この「スローステップ」の第五巻で、史上初、同一作者によるコミックス総発行部数一億部と達成したということ。

 

あだち充さんは、「スポーツ漫画」から、いわゆる「スポ根」を排除し、そこに「恋愛」を持ち込んだ、最初の漫画家だと、以前、どこかで読んだ記憶があります。

僕が、初めて、あだち充さんの作品を見たのは、中学生の時、漫画では「ナイン」で、アニメでは「タッチ」だったと思いますが、どちらも、とても面白かった。

 

 

ちなみに、「750ライダー」を描いた、石井いさみさんが亡くなった時に、色々と、ネットの記事を見ていると、あだち充さんは、この石井いさみさんのアシスタントをしていたそうで、終わりの方は、「750ライダー」を、ほとんど、あだち充さんに描かせていたと石井さんは、言っていたと書いたものがありました。

「750ライダー」は、当初は、ハードボイルドな雰囲気のバイク漫画だったようですが、何時の頃からか、ほのぼのとした学園漫画に内容が変わって行ったようで、僕が、昔、好きで読んでいた「750ライダー」は、この、ほのぼのとした学園ものの頃。

そういえば、あだち充さんの漫画と、雰囲気が似ている気がしますね。