テレビ時代劇、市川崑劇場「木枯らし紋次郎」。

初めて見た時には、衝撃でした。

まるで、映画を見ているような演出に、美しい映像。

リアルな生活風景に、泥臭い殺陣。

何より、紋次郎を演じる中村敦夫さんが、はまり役でしたよね。

「あっしには、関わりのないことで」

と言いながら、事件に巻き込まれて行く。

 

原作小説を書いたのは、笹沢左保さん。

原作小説の「木枯らし紋次郎」は、当時、全巻を読んだはず。

 

 

さて、この「木枯らし紋次郎」は「股旅もの」の一つ。

この「股旅」とは、「博徒、芸人などが、諸国を股にかけて歩くこと」だそうです。

主人公の紋次郎は、「博徒」ということになるのでしょう。

 

そして、物語の中で、紋次郎は「無宿渡世人」と呼ばれますよね。

 

この「無宿」とは、「宗門人別改帳」に登録をされていない人のこと。

この「人別帳」は、江戸時代の戸籍のようなものです。

土地に定住している人は、その土地にある寺にある「人別帳」に登録され、それが、身分の証明になる。

しかし、何らかの理由で土地を離れ、定住の場所を持てない人は、「無宿」となり、この「無宿人」は、それだけで、罪に問われる可能性があったよう。

 

そして「渡世人」とは、「普通の商売に従事することなく、生活を送る人」のことだそう。

つまり「博徒」や「侠客」など。

 

さて、この「無宿渡世」の人は、いわば、当時の社会からはみ出した人たち。

各地を回り、博奕を打って、生計を立てる者が多かった。

また、土地の「親分」と呼ばれる人たちは、この「無宿渡世」の人たちを保護する義務もあったようですね。

しかし、いわゆる「一宿一飯」の恩義に縛られ、渡世人には、逆に、不自由なことも多かったよう。

そのため、紋次郎は、出来るだけ、「親分」の世話にならない生き方を選んでいる。

それが「あっしには、関わりのないこと」というセリフに繋がることになる。

 

ネットで調べてみると、この「親分」を中心とした「○○一家」と呼ばれた組織が、今の暴力団に繋がっているケースも多いようですね。

かつては、こういった組織も、社会に必要だったのでしょうが、今となっては、どうでしょう。

 

江戸時代、有名な博徒としては、やはり「国定忠治」でしょうかね。

様々な物語で語られた人気者。

そして、「清水次郎長」もまた、様々な物語で、有名ですよね。

今で言えば、ヤクザ映画を見るような感覚で、昔の人は、国定忠治や清水次郎長を主人公にした演劇などを見ていたのでしょう。

 

また。「日本一の大親分」と呼ばれたのが、「大前田栄五郎」です。

この大前田栄五郎もまた、物語の主人公として庶民に親しまれたよう。

また「木枯らし紋次郎」の中にも、この大前田栄五郎が登場する場面があったような記憶が。

 

ちなみに、江戸の「新門辰五郎」は、「町火消」ですが、この「火消」もまた、「侠客」の一つ。

その娘は、徳川慶喜の側室となり、勝海舟とも親しく交際をしていたよう。

 

僕は、「ヤクザ」は嫌いなので、「ヤクザ」を主人公にした映画やドラマは、基本的には、見ないことにしている。

やはり、「ヤクザ」が「素人」に迷惑をかけては駄目ですよね。

 

ドラマのラストに流れる、芥川隆行さんのナレーションは印象的。

 

「木枯らし紋次郎。上州新田郡三日月村の貧しい農家に生まれたと言う。十歳の時に故郷を捨て、その後、一家は離散したと伝えられる。天涯孤独な紋次郎が、どのようにして渡世の道に入ったのかは、定かでない」

 

でしたかね。