プロ野球、セリーグは阪神タイガースが、18年ぶりの「アレ」を勝ち取ったということで、ファンは盛り上がっているようですね。

僕は、もう、随分と前から、プロ野球には関心を失っているので、今、どのような選手が人気で、どのような活躍をしているのかということは、ほぼ、分からない。

しかし、かつては、プロ野球が大好きで、よくテレビで見ていました。

僕が、プロ野球に熱中していたのは、1980年代後半から、2000年代初頭くらいまで。

ちょうど、桑田、清原の「KKコンビ」が、活躍をしていた時代と重なるのではないでしょうかね。

 

当時、個人的に、注目をしていた投手の一人が、ロッテのエースだった伊良部秀輝投手。

150キロを超える球を投げる投手が、ほとんど居なかった当時のプロ野球の投手の中で、150キロを軽く超える球を投げ続けることが出来る、ナンバー1の、剛速球投手だった。

 

伊良部投手は、尽誠高校のエースだった時から、その剛速球で注目され、ロッテに入団したのですが、最初の数年は、なかなか、勝てなかったんですよね。

なぜ、球界ナンバー1の剛速球投手が、勝てないのか。

僕が、伊良部投手に興味を持ったのは、その頃です。

 

そして、ある年から、突然、勝ち星を重ねるようになり、「エース」と呼ばれる投手になる。

これが、また、不思議だったんですよね。

伊良部秀輝とは、どういう人なのか。

ずっと興味を持って見ていたのですが、2011年、42歳という若さで亡くなってしまった。

この報道を聞いた時には、ショックでした。

 

 

この本は、伊良部さんがメジャーリーグに移籍をする時に代理人を務めた団野村さんが書いたもの。

それから、団野村さんと伊良部さんの交流は続き、伊良部さんのプライベートをよく知る団野村さんが、伊良部秀輝とは、どのような人物だったのかということを、この本で書いています。

 

恐らく、一般の人が「伊良部秀輝」と聞いて思い浮かぶのは、その「強面」な容姿と、「不愛想」な雰囲気。

そして、マスコミ対応の悪さで、「悪童」とも呼ばれ、あまり、良いイメージは無いのではないでしょうかね。

 

しかし、団野村さんによれば、マスコミ対応の悪さは、マスコミへの「不信感」から来るもの。

そして、「不愛想」な雰囲気は、伊良部さんの「人見知り」によるものだということ。

しかし、一度、親しくなると、伊良部さんは、とても、相手に気を遣うそうで、伊良部さんを知っている人で、彼を悪く言う人は、一人も居ないと書かれていました。

 

また、伊良部さんは、本当に「野球」が大好きな人で、野球の話を始めると、話が止まらなったそうです。

 

さて、伊良部さんは、ロッテから、メジャーリーグのヤンキースに移籍をしますが、この時に、相当に揉めたのは、当時の報道を覚えている人ならわかるでしょう。

なぜ、伊良部さんのメジャーへの移籍が、あれほどの大騒動になったのか。

この本によれば、やはり、ロッテ球団との確執が大きかったそうですね。

野茂英雄さんがメジャーに移籍をした後、団野村さんは、伊良部さんをメジャーに移籍させたいと接触をしていたそうですが、当初、伊良部さんにそのつもりは無かったということ。

しかし、伊良部さんは、当時、ロッテ球団との間に問題を抱えていて、ついに、球団に愛想をつかし、メジャーに行くことにしたという経緯のよう。

しかし、この移籍の交渉も、ロッテ球団が、伊良部さんの意思を無視して進めたために、あれほど、大きな騒動になってしまったそうです。

 

しかし、伊良部さんのメジャーでの活躍は、短かったですよね。

それは、やはり、怪我のため、と、言うことのよう。

そして、伊良部投手は、プロ野球、阪神タイガースに復帰し、星野監督の元で、優勝に貢献。

それが、18年前、と、言うことになる。

 

さて、伊良部投手の「ピッチング」について。

 

なぜ、剛速球投手が、なかなか、勝てなかったのか。

そして、なぜ、突然、勝ち星を重ねるようになったのか。

 

それには、牛島投手の影響があったそうですね。

 

確か、落合選手とのトレードで、中日からロッテに移籍をして来た牛島投手。

伊良部さんは、その牛島投手のピッチングを見て、「なぜ、牛島さんの130キロの球は、打たれないのに、僕の150キロの球は、打たれるのでしょう」と質問をしたそうです。

そこから、牛島さんによる「ピッチング」に関するアドバイスが始まったそうです。

身体の使い方を始め、どうすれば打たれないのかという「ピッチング」に関する理論を、一から、牛島さんに教えてもらったそうです。

それから、伊良部投手は、順調に勝ち星を重ね、「エース」と呼ばれる投手に成長をした。

 

ちなみに、確か、牛島さんが、当時、オリックスのエースだった星野伸之投手のピッチングことを「理想的な投球術」とテレビで言っていたのを見た記憶があります。

この星野投手もまた、僕の大好きな投手だった。

 

 

この本も、なかなか、面白かったです。

星野さん自身が、自分のプロ野球生活や、ピッチングのことを書いている。

 

星野さんは、伊良部さんとは対照的な投手でしたよね。

プロ野球の投手でありながら、ストレートが130キロに届かない。

しかも、球種は、ストレートとカーブとフォークだけ。

そのような投手が、プロ野球で「エース」と呼ばれ、通算176勝、2041奪三振という素晴らしい成績を残している。

 

まさに、素晴らしい「投球術」の結果、と、言うことになるのでしょう。

 

星野投手の遅い球を、なぜ、プロのバッターが打てないのか。

面白いですよね。

もう、この星野さんのような投手は、出て来ないのではないでしょうかね。

 

さて、少し、余談。

 

伊良部さんが活躍をしていた頃、プロ野球でも150キロを超える球を投げる投手は、ほぼ、居なかった。

しかし、今では、150キロ程度の球を投げる投手は、たくさん居るようですね。

 

これは、なぜ、なのでしょう。

 

一つは、やはり、トレーニング方法の違いですかね。

今では、多くの科学的理論が積み重なり、速い球を投げるためには、どのようなトレーニングが必要なのか。

十分な環境が整っているのでしょう。

そのために、多くの投手が、150キロを超える球を投げることが出来るようになり、中には、160キロを超える投手も出て来ているのかも。

 

そして、もう一つは、ネットの中などの話で、今と昔では「球速を測る場所が違う」という話も。

ネットの情報では、昔は、バッターに近いところの球速を測っていたということ。

そして、今は、ピッチャーに近い場所で球速を測っているので、今の方が、球速が速く出るという話。

 

これは、事実でしょうかね。

 

しかし、「球が速い」というだけでは、プロの世界では勝てないし、また、「球が遅い」と言っても、勝てない訳ではないというのは、伊良部さん、星野さんを見ていると、よく分かります。